韓国で脱北者急減、北朝鮮経済研究が「データの崖」…最新動向の把握困難に
このニュースをシェア
【09月03日 KOREA WAVE】韓国への脱北者の入国が新型コロナウイルス流行後に急減し、脱北者へのアンケートをもとに北朝鮮内部の経済変化を追ってきた研究が「データの崖」に直面しているとの分析が、韓国の政府系研究機関から示された。
北朝鮮は経済規模や物価、失業率など信頼できる公式統計をほとんど公表しておらず、住民の経済活動で大きな割合を占める市場部門も大半が非公式領域にある。このため、北朝鮮経済を定量的に分析するのは難しい。
韓国開発研究院(KDI)が発刊した「KDI北朝鮮経済レビュー2026年8月号」によると、韓国銀行経済研究院のチョ・ヨンシン副研究委員は、脱北者へのアンケート調査に関する報告書で、既存調査の元データの公開範囲を広げ、機関ごとのデータを連携させる必要性を指摘した。
北朝鮮での生活を経験した脱北者へのアンケートは、市場経済の動向や仕組み、その影響などを把握する重要な資料として活用されてきた。過去にソウル大学経済学部の調査を活用した研究では、非公式経済から得た所得が回答者の世帯所得全体の78%を占め、70%以上が非公式な経済活動に参加した経験があることが分かった。
別の研究では、調査対象者227人のうち112人が賄賂を渡した経験があると回答し、賄賂への支出は全支出の約15.3%を占めた。こうした研究によって、非公式経済の規模だけでなく、市場化が公式の労働や国家統制、住民の格差認識などに与える影響も分析できたという。
しかし、新型コロナを機に新たな脱北者が大幅に減り、北朝鮮の最近の変化を反映する新しい調査データの確保が難しくなった。韓国統一省の公式統計によると、年間の韓国入国者数は2020年の229人から2021年に63人、2022年に67人まで減少した。2023年は196人、2024年は236人に回復したものの、依然として過去を下回る水準だ。
これに伴い、ソウル大学統一平和研究院が2009年から毎年、前年に北朝鮮を離れた脱北者を対象に実施していた調査も2020年を最後に中断した。2024年に再開されたものの、従来の抽出基準は適用できず、韓国に定着した脱北者全体を対象とする単発調査に変わった。
報告書は「北朝鮮現地の状況変化を新たに反映した時系列データの蓄積は、当面期待するのが難しい」と評価した。
脱北者へのアンケート自体が、北朝鮮住民全体を代表しにくいという限界もある。2026年6月末時点で韓国に定着した脱北者3万4536人のうち、女性が72.2%を占め、中朝国境地域の両江道と咸鏡北道の出身者は76.2%に達した。
また、2018~2020年のソウル大学の調査では、脱北した理由として北朝鮮政権への不満・政治的弾圧が31.5%、自由な体制への憧れが18.8%で、政治的理由が計50.3%を占めた。経済的困難は16.4%だった。
報告書は、特定の理由で北朝鮮を離れた人々への調査結果を北朝鮮住民全体の特徴として捉えることは難しいとし、標本選択の偏りを最も根本的で、完全な解消が難しい問題に挙げた。
一方、新たな標本の確保が難しい状況でも、既存データの価値は依然として高いと評価した。脱北者へのアンケートは、1990年代半ばの「苦難の行軍」以降、北朝鮮社会が計画経済から市場経済へと変化してきた過程を示す、事実上唯一の定量的な記録だとしている。
報告書は、新たな標本の確保が限られる現状では、これまで蓄積したデータをより精密に再分析し、異なる機関のデータを相互に連携して活用する重要性が高まっていると指摘。韓国統一省やソウル大学統一平和研究院などが保有する元データの公開範囲拡大を検討すべきだと提言した。
(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News