【9月6日 東方新報】黄海と渤海に面する山東省(Shandong)煙台市(Yantai)蓬莱区の丹崖山。その山頂には、古い趣を残す蓬莱閣が海を望むように立っている。この夏、アニメ映画『八仙!(英題:All Wishes Come True!)』がヒットして以来、多くの観光客が映画の半券を手にこの地を訪れ、伝説に登場する八仙の足跡をたどっている。八仙とは、中国で古くから親しまれてきた8人の仙人の総称だ。その伝説の歴史は古く、初期の人物にまつわる逸話は『太平広記』などの古典にも記されている。その後、民間で語り継がれ、歴代の文人による脚色を経て、現在知られる物語へと形づくられていった。

明代には呉元泰(Wu Yuantai)が小説『八仙出処東遊記』を著し、鉄拐李(Tieguai Li)、漢鍾離(Han Zhongli)、張果老(Zhang Guolao)、呂洞賓(Lv Dongbin)、何仙姑(He Xiangu)、藍采和(Lan Caihe)、韓湘子(Han Xiangzi)、曹国舅(Cao Guojiu)という8人の顔ぶれが定着した。年齢や身分、境遇はそれぞれ異なり、独自の法具と不思議な能力を持つとされている。

伝説では、八仙は各地を巡って人びとを助け、数多くの物語を残した。中でも有名なのが『八仙過海、各顕神通』だ。「八仙が海を渡り、それぞれの能力を発揮する」という物語で、それぞれが得意な力を発揮することを表す言葉としても中国で広く知られている。

八仙は蓬莱閣で酒を酌み交わした後、船を使わず、それぞれの法具を使って海を渡ることにしたという。その途中で東海の竜宮と争いになるが、観音菩薩の仲裁によって和解したと伝えられている。2008年には「八仙伝説」が中国の国家級無形文化遺産代表的プロジェクトリストに登録された。

煙台市蓬莱歴史文化研究会の元副会長兼秘書長、蔡玉臻(Cai Yuzhen)氏によると、かつて中国各地には蓬莱閣を模した建物が造られたが、その多くは失われた。山東省の蓬莱は、蜃気楼が見られることで知られるほか、海上シルクロードの要衝という地理的条件にも恵まれていた。さらに蘇軾(Su Shi)をはじめとする歴代の文人がこの地を詩文に詠んだことで、「地上の仙境」として知られるようになった。

蔡氏は「こうした自由でのびやかな土地が八仙を引きつけ、ここに立ち寄ったという伝説が生まれた。やがて仙山、仙島、仙境、仙閣、仙人へとつながる文化が形成され、蓬莱は国内外で中国の仙人伝説を象徴する地として知られるようになった」と説明する。八仙文化は中国国外にも伝わっている。マレーシアのゲンティンハイランドに造られた中国風の景観「蓬莱仙境」は、その広がりを示す一例だ。

長く語り継がれてきた八仙の物語は、時代とともに映像作品にも姿を変えてきた。1980年代には香港のテレビドラマ『八仙過海』が蓬莱でロケを行い、香港ドラマが中国本土で撮影する先駆けとなった。1998年には中国とシンガポールが共同制作したテレビドラマ『東遊記』が放送され、再び八仙への関心が高まった。

現在はアニメ映画『八仙!』が中国で人気を集めている。8月中旬からは「All Wishes Come True」のタイトルで、オーストラリア、ニュージーランド、米国、英国などでも公開され、古くから伝わる中国の物語が海外にも広がっている。

映画の人気を受け、煙台・蓬莱では作品ゆかりの場所を訪ねる観光も盛り上がっている。江蘇省(Jiangsu)から訪れた余思雨(Yu Siyu)さんは「幼い頃から祖母に『八仙過海、各顕神通』の物語を聞いて育ちました。今、丹崖山に立つ古い蓬莱閣のれんがに触れていると、あの伝説そのものに触れているような気がします」と話した。

蓬莱閣景勝地で文化財部門の責任者を務める温麗艶(Wen Liyan)氏によると、同景勝地では豊富な八仙関連の文化資源を生かし、映画の人気を長期的な観光ブランドにつなげようとしている。八仙に扮した演者との交流や、食事とショーを組み合わせたイベント、物語の場面を再現する演出などを導入し、観光客が八仙の世界をより身近に体験できるよう工夫している。

蔡氏は、八仙伝説について、仙人世界の幻想的な雰囲気と庶民の人情を融合させた、広く親しまれてきた山と海の物語だと説明する。年齢も身分も個性も異なる8人が、それぞれの違いを保ちながら共に行動する姿には、中国文化に根付く「和して同ぜず」の考え方、つまり違いを認めながら調和する知恵が表れているという。

こうした奥深い文化的背景を持つ八仙伝説は、長い年月を経てもさまざまな文芸作品に創作のヒントを与え、時代に合わせた新しい表現で受け継がれている。千年にわたって語り継がれてきた山と海の伝説から、現代の映像コンテンツへ――。八仙伝説は新たな表現を取り入れながら世代を超えて受け継がれ、中国の伝統文化とそこに込められた知恵を世界へ伝え続けている。(c)東方新報/AFPBB News