【9月3日 CNS】「自宅のすぐ近くに、世界の名門大学がある!」

海南自由貿易港で全島封関運用が始まってから半年余り。海南省(Hainan)の人びとはすでに国際教育の恩恵を実感している。現在、海南陵水黎安国際教育イノベーション試験区には中国国内外の大学30校が進出し、24の中外共同教育機関・プログラムが認可され、60以上の質の高い専攻が設けられている。

こうした恩恵は海南だけにとどまらない。今年5月、中国教育部は中国・海外共同教育機関・プログラム219件を一括で認可した。過去20年近くで最大規模の拡大となり、前年同期の約2倍に達したとの分析もある。

その内容を詳しく見ると、いくつかの変化が浮かび上がる。まず、専攻分野が変わっている。理工系、農学、医学が中外共同教育全体の71%を占め、これまで中心だった商学・経営分野に代わって存在感を高めている。新設機関には「インテリジェンス」「データ」、さらには「未来技術」を名称に掲げるところもある。

参加大学の顔ぶれも変化している。今回認可された133の中国・海外大学の共同教育プログラムのうち15件には、中国政府が世界水準の大学育成を目指して重点的に支援してきた「985工程」の対象大学が参加している。新設された86機関のうち6機関も「985工程」対象大学が設立に加わっている。海外の提携先にも有力校が並び、リーズ大学(University of Leeds)、リバプール大学(University of Liverpool)、ロンドン大学クイーン・メアリー校(Queen Mary University of London)など、QS世界大学ランキング(QS World University Rankings)150位以内の大学が名を連ねている。

地域的な広がりも見られる。ハンガリーなど中東欧諸国の参加が増え、ウズベキスタンやカザフスタンなど中央アジア諸国も初めて加わった。「一帯一路(Belt and Road)」共同建設国の存在感が高まっている。

こうした動きが示すものは明確だ。中国・海外共同教育はもはや、中国の学生が海外へ学びに行くための選択肢にとどまらず、海外の教育資源を中国に呼び込むための戦略的なルートとなっている。

データからもこの傾向がうかがえる。現在、中国教育部が認可した学部以上の中国・海外共同教育機関・プログラムは1700件を超え、海外の大学1100校以上が関わっている。さらに注目されるのが、人の流れの変化だ。中国教育部国際合作・交流司によると、2024~2025学年度には191の国・地域から38万人を超える留学生が中国国内の1100以上の大学、研究機関、その他の教育機関で学習や研修、訓練を受けた。前年度から15%増加している。

こうした数字の背景には、実際に中国を留学先として選ぶ学生の増加がある。例えば昆山デューク大学(Kunshan Duke University)の2025年学部入試には、世界144カ国から約1万2000件の出願があり、このうち海外からの出願は5882件で、約半数を米国からの出願が占めた。

中山大学(Sun Yat-sen University)嶺南学院も今年、初となる全授業英語の国際学部プログラムを開始した。「逆2+2」方式を採用し、学生は最初の2年間を海外で学び、後半の2年間を中山大学で学ぶ。同じ「2+2」でも、人の流れは逆になった。かつては中国の学生が海外へ出ていったが、今度は外国人学生が中国へやって来る。方向が変わり、受け入れる側と送り出す側が入れ替わりつつある。さらに大きな視点で見ると、世界の高等教育の重心が急速にアジアへ移りつつある。

英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education)」の2026年世界大学ランキングでは、アジアから過去最多となる929校がランクインした。中国本土からは97校が入り、清華大学(Tsinghua University)が12位、北京大学(Peking University)が13位と、アジアの大学を長年にわたってリードしている。

中国の大学の順位上昇を支えているのは、中国の経済力と科学技術力の継続的な向上だ。胡潤百富(Hurun Report)の会長兼首席調査責任者、胡潤(Hu Run)氏は三里河の取材に対し、中国の大学は世界ランキングで順位を上げ続けており、新エネルギー、先端設備、デジタル技術、先進材料など複数の先端産業がすでに世界トップレベルに達していると指摘した。

胡氏は、中国・海外共同教育が国際的な視野を持つ高度人材を中国が育成するうえで、重要な役割を担っているとみている。こうした動きは偶然ではない。中国政府もすでに政策面で方向性を示している。「第15次5か年計画」綱要では、海外の高水準な理工系大学による中国での共同教育を奨励。「教育強国建設計画綱要(2024~2035年)」では、世界的な影響力を持つ重要な教育拠点の構築を掲げている。

中国が教育分野の対外開放を進める一方、海外の大学は厳しい経営環境に直面している。英国の学生局(OfS)はこのほど、国内の高等教育機関が財政面で重大な課題に直面していると警告した。対策を講じなければ、2025~2026学年度には124大学が赤字に陥る可能性があり、全体の45%を占めるという。

ハーバード大学(Harvard University)も例外ではない。2025会計年度には1億1300万ドル(約179億6926万円)の赤字となり、2011年以来最大の年間赤字を計上した。中国人留学生の減少も、その背景の一つとされる。米国の国際教育研究所(IIE)が発表した留学生統計「オープン・ドアーズ(Open Doors)」報告によると、2024~2025学年度に中国本土から米国へ留学した学生は26万5900人で、5年連続で減少した。ピーク時と比べると28.6%減っている。

ただ、資金不足への対応は目先の事情にすぎない。海外の大学が積極的に中国へ進出する背景には、中国の科学技術、教育、産業の将来性を見据えた、より長期的な戦略もある。

中国側による教育分野の対外開放と、海外大学による中国市場への期待。この二つの動きが重なり、今回の中国・海外共同教育の大幅な拡大につながっている。これは、中国が質の高い教育の対外開放を進めるための積極的な取り組みであると同時に、世界の高等教育を取り巻く構図が変化していることを示す一例でもある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News