【9月2日 CNS】北京市で8月22日から26日まで開催された第2回世界人型ロボット運動会の開会式で、テニスができる人型ロボット「銀河星仔」が、中国の元女子テニス選手・鄭潔(Zheng Jie)氏と完全自律型の「人間対ロボット」の対戦を行った。高速で飛んでくるボールに対し、「銀河星仔」は素早く姿勢を調整し、機敏に移動してリターン。混合ダブルスでも何度もボールを拾った。一連の動作は人間に近く、人による遠隔操作も行われていない。鄭氏は「人型ロボットの動きは想像以上だった」と驚きを語った。

このロボットを開発したのは、中国のテクノロジー企業「銀河通用ロボット(Galbot)」だ。同社は今年3月、テニスの対戦を想定した人型ロボット向け全身リアルタイム知能制御アルゴリズム「AstraBrain Latent」を発表した。この技術により、人型ロボットは広い範囲を動きながらテニスをする能力を備え、ラケットの振り方やフットワークも人間の選手に近づいた。関連動画はSNSで大きな注目を集め、米実業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏も驚きを示した。

短距離走や走り高跳びなどと異なり、テニスでは高速で状況を認識し、リアルタイムで判断するとともに、全身を動的に制御し、相手との駆け引きやパートナーとの連携にも対応する必要がある。これは10年前、世界的な話題となったAI囲碁ロボット「アルファ碁(AlphaGo)」と人間の棋士による囲碁対局を思い起こさせる。

業界関係者によると、アルファ碁が向き合ったのは19×19の碁盤にある361の決まった交点で、人間が一手打つたびに、次の手を考えるため数十秒から数分の時間があった。一方、テニスロボットが受けるボールは、回転や風、コートの摩擦などによって落下地点が変わり、一球ごとに物理的な条件も異なる。そのため、わずか数百ミリ秒の間に認識、予測、判断、全身の協調動作を完了しなければならない。

銀河通用の担当者によると、「銀河星仔」に搭載された具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)の大規模モデル「銀河星脳」は、「脳」が担うタスクの理解や戦術判断と、「小脳」が担う高度な全身運動制御を一つのモデルに統合した。従来のロボットは、「考える」ことはできても柔軟に「動く」ことができない、あるいはあらかじめ設定された動作しかできないといった課題があった。「銀河星脳」の特徴は、「どうすれば勝てるかを考える能力」と「それを実際の身体で実行する能力」を同時に持たせた点にあるという。

ロボットが考え、自在に動くためには、人間の運動データから学ぶことも欠かせない。今回の大会では、中国のテクノロジー企業「青瞳視覚」が独自開発した光学式モーションキャプチャー装置を使って人間の選手の動作データを収集し、ロボットの訓練に活用している。同時に、ロボットの動きを記録、分析、評価することで、運動能力の向上にも役立てている。

モーションキャプチャーとは、動く物体の主要な部位を追跡して動作の軌跡を記録し、デジタルデータに変換する技術だ。映画やアニメ、ゲームなどですでに幅広く利用されているが、中国企業は現在、この技術をロボットの訓練にも導入している。青瞳視覚の張海威(Zhang Haiwei)董事長は、人型ロボットが将来、幅広い産業や分野に進出するには、さまざまな実環境に適応する必要があり、その過程でモーションキャプチャー技術が基盤的な役割を果たすとの見方を示した。ロボットの訓練には大量かつ高品質なデータが必要だが、現状ではマルチモーダルデータが依然として不足しているという。

一方、人型ロボットが競技場を飛び出し、幅広い産業や生活の現場で活躍するには、なお解決すべき課題がある。ロボット企業「宇樹科技(Unitree Robotics)」の創業者、王興興(Wang Xingxing)氏は最近、固定された環境では、十分なデータを収集して訓練したAIモデルの作業成功率は100%近くまで高められるものの、扱う物や環境が変わると成功率が大幅に低下すると指摘した。

銀河通用の担当者は、「ロボットがテニスをできるようになった」ことは、中国のAIが「デジタル知能」から「物理知能」へと領域を広げたことを示すものだとしている。こうした能力が競技場から家庭、工場、病院などの実社会へ広がれば、具身型AIが変えるのは一つの試合だけではなく、人と機械が協働する未来そのものになる。(c)CNS/JCM/AFPBB News