【9月1日 CNS】長白山(Changbai Mountain)と聞けば、多くの人が知っている。しかし「白山」と言われると、どこにあるのか分からない人も少なくない。多くの観光客は長白山の天池を目当てに訪れ、白山市には立ち寄るだけで、そのまま通り過ぎてしまう。

吉林省(Jilin)白山市(Baishan)は、中国東北部でも比較的知名度の低い都市の一つだ。広大な森林に囲まれ、かつては資源型の小都市というイメージが強かった。しかし、2026年に入ってからの経済指標を見ると、長白山の山間部に位置し、常住人口わずか80万人余りのこの都市が、新たな成長を見せ始めている。

2026年第1四半期の白山市の域内総生産(GDP)は120億8600万元(約2858億610万円)に達した。名目成長率は7.6%で吉林省内トップ、実質成長率は5.1%で省内2位となった。

中国東北部の振興という大きな流れの中で、この数字は注目に値する。白山はかつて木材や石炭を中心に発展してきた。しかし、従来型の資源産業が次第に縮小する中、経済成長を維持することは容易ではなかった。現在、成長をけん引しているのは従来の鉱物資源ではなく、豊かな山林を生かした新たな産業だ。

つまり白山では、かつてのように木を伐採し、石炭を掘って山の資源を消費するのではなく、山を守りながら、その自然資源を産業に生かす方向へと転換している。

白山には、世界的にも有力な二つの資源がある。一つが高麗人参だ。中国有数の高麗人参産地である吉林省の中でも、白山市の撫松県は「中国人参の里」と呼ばれる。中国国内で流通する高麗人参の約8割が、この地域で生産されているという。

長年、現地では高麗人参を乾燥させ、原料として販売するケースが多く、大きな利益は加工・販売を担う下流産業に流れていた。現在は単なる特産品として販売するのではなく、医薬品や健康関連商品、化粧品、バイオ製品などへと事業領域を広げ、830種類以上の商品を開発している。2025年には、白山市の高麗人参関連産業全体の生産額が263億2000万元(約6224億746万円)に達した。

もう一つがミネラルウォーターだ。長白山は世界有数の良質な水源地の一つとされ、飲料大手の農夫山泉(Nongfu Spring)や泉陽泉(Quanyangquan)など、多くの企業が事業を展開している。

白山では、単にミネラルウォーターをボトルに詰めて販売するだけでなく、高品質なミネラルウォーターを中心に、特色ある農産物などを組み合わせた産業体系の構築を進めている。長白山の豊かな自然から生まれる商品を全国に展開し、水資源の付加価値をさらに高めようとしている。

新たな産業の育成では、珪藻土や玄武岩を活用した新素材分野にも力を入れている。白山は「珪藻土の都」として知られ、確認埋蔵量は3億7000万トンと、中国全体の半分以上を占める。品質も国内最高水準とされる。玄武岩の埋蔵量も2億8400万トンに達する。現在、年間1000トン規模の実証設備や年間1万トン規模の玄武岩繊維生産ラインの整備を加速し、中国国内の玄武岩繊維産業で先行することを目指している。

観光産業も高速鉄道の開通によって大きく変わり始めた。その転機となったのが瀋陽―白山高速鉄道だ。昨年9月の開通により、北京市から白山市までは約4時間、瀋陽市(Shengyang)からは約1時間となり、これまでの交通の不便さが大幅に改善された。高速鉄道開通後初となった国慶節連休には、白山市を訪れた観光客が184万6700人に達し、前年同期比で約40%増加した。

白山は、増加した観光客を単に通過させるのではなく、市内に滞在してもらい、地域消費につなげる取り組みを進めている。また、瀋陽市、撫順市(Fushun)、通化市(Tonghua)、延辺朝鮮族自治州(Yanbian Korean Autonomous Prefecture)、長白山保護開発区などとの連携を強化し、吉林省内外の観光関連企業とともに、高速鉄道沿線都市による観光連携を進めている。

今年、白山市は工業経済の高品質発展を促す3か年計画を開始した。石炭、林業、鉄鋼などの従来産業の高度化を進める一方、文化・観光、医薬・ヘルスケア、食品、クリーンエネルギー、新素材などの強みを持つ産業の成長を加速させる。

資源によって発展してきた白山は今、経済成長の原動力を切り替え、資源を採掘して販売する産業構造から、自然資源を生かして付加価値の高い産業を育てる方向へと転換している。

もちろん、産業転換に近道はない。白山は急速な開発を追い求めるのではなく、自然環境の保全を前提としている。豊かな自然そのものが地域の財産であり、今後の発展を支える基盤でもあるからだ。企業誘致や新規プロジェクトを進めると同時に、ビジネス環境の改善にも取り組み、企業が進出しやすく、長く事業を続けられる環境づくりを進めている。

中国東北部には、白山と同じような課題を抱える資源型都市が少なくない。豊かな資源を持ちながら、従来の産業構造から抜け出せずにいる地域だ。白山の取り組みは、自然環境を生かして特色ある産業を育て、地域資源の付加価値を高め、観光客の増加を地域経済の成長につなげるという、一つの方向性を示している。

長白山そのものは変わらない。しかし、その麓にある白山市は変わり始めている。かつては山の資源を採取して発展してきた都市が、現在は自然環境を守りながら観光や製造業を育てる都市へと転換しつつある。豊かな自然を経済的な価値につなげることで、小さな都市にも新たな成長の可能性が生まれている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News