【8月31日 東方新報】中国・広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)欽州市(Qinzhou)で作られる「坭興陶(でいこうとう)」の急須。釉薬を使わないにもかかわらず、窯で焼くことで翡翠のような緑や赤紫色など、複雑な色合いが生まれる。こうした中国南部の伝統的な「窯変」の技法が今、海外にも広がり、かつては年配の華僑・華人が故郷を懐かしむ品として親しんできた坭興陶が、海外の若者にも人気を集めるようになっている。

夏の観光シーズンを迎え、欽州市の坭興陶体験センターには多くの観光客が訪れている。ベトナムやマレーシア、インドネシアなどからの研修旅行や観光ツアーの参加者も多く、中国国内外の若者が実際に土に触れ、職人から伝統的な陶器作りを学んでいる。

坭興陶は中国を代表する「四大名陶」の一つで、1000年以上の歴史を持つ。欽州坭興陶の焼成技術は、中国の国家級無形文化遺産に登録されている。坭興陶体験センターの店長、温柔香(Wen Rouxiang)氏は、「以前は年配の華僑・華人が購入するケースが多かったが、最近では若者が坭興陶を目当てに訪れることが増えている」と話す。海外の若者は陶器作りを体験するだけでなく、坭興陶特有の「窯変」にも強い関心を示すという。

温氏は、「窯から出してみるまで一つ一つの作品がどんな色になるか分からない。その『何が出るか分からない』楽しさが若者に受けている」と説明する。マレーシア出身の若手教師、鍾青芯さんは広西で長年暮らし、坭興陶を愛用している。「窯に入れる時は同じ色でも、焼き上がるとさまざまな色彩に変化する」ため、一つとして同じものができないところに魅力を感じているという。

鍾さんは坭興陶の写真をSNSに投稿しており、それを見たマレーシアの友人や親族からも関心が寄せられている。「このカップの模様はどうやってできるのか、なぜ一つ一つ違うのかと聞かれる」と話す。

広西の工芸美術家、劉倹(Li Jian)氏は近年、失われつつあった「填泥」と呼ばれる技法の復活に取り組むとともに、現代の感覚に合わせた改良も進めている。劉氏は、「以前は伝統的な花瓶や急須が中心だったが、現在は海外市場のニーズに合わせ、コースターや香炉、インテリア小物なども開発している」と話す。これらの商品は越境ECや海外の展示会を通じて東南アジアや欧米などで販売されている。シンプルなデザインを取り入れることで、文化的背景が異なる消費者にも受け入れられやすくしているという。

海外では、坭興陶の茶器と広西特産の「六堡茶」を組み合わせて楽しむスタイルも、東南アジアの茶愛好家から支持を集めている。マレーシアで茶葉店を経営する徐文(Xu Wen)氏は「坭興陶の急須で六堡茶をいれると、味わいがよりまろやかになり、一晩置いても風味が変わりにくい。お茶に詳しい人なら飲めば分かる」と話した。

徐氏は毎週ライブ配信を行い、マレーシアやシンガポール、ブルネイ、タイなどの若い茶愛好家に、坭興陶の製作工程や窯変による色彩の変化を紹介している。徐氏によると、マレーシアでは坭興陶の購入者が従来の年配の茶愛好家から徐々に若い世代へと広がっている。若者には小型の急須や茶杯、窯変を生かしたインテリア小物などが特に人気だという。この2年間で、同店における坭興陶商品の月間販売数は当初の20点未満から数百点に増えた。中でも、シンプルな形で窯変による色の変化がはっきりと表れた商品が人気を集めている。

欽州市坭興陶業界協会の秘書長、夏芸(Xia Yun)氏は、「商品を販売するだけでなく、坭興陶がどのように作られているのか、その背景も伝えていく必要がある」と話す。同協会は近年、中国-ASEAN博覧会(CAEXPO)や海外で開催される文化イベントなどへの企業の出展を積極的に支援しているほか、デジタル技術やAIを活用したデザインを通じ、若い世代への発信にも力を入れている。

夏氏は、「本物の技術は言葉の壁を越えて伝わる。海外の若者が『窯変』に込められた職人の技を理解すれば、手にする器も単なるカップではなくなる」と語った。(c)東方新報/AFPBB News