【8月31日 CNS】中国で大型投資の重点分野が変わりつつある。

「新型電力システム建設第15次5か年計画」がこのほど発表された。中国が整備を進める「6つのネットワーク」の重要な柱の一つである新型電力網について、より具体的な整備方針が示された。

計画では、2030年までに発電量に占める非化石エネルギーの割合を50%とし、28億キロワット以上の新エネルギー電源を安定的に電力網へ受け入れられる体制を整えるほか、新型電力システムを支える重要技術や設備で大きな進展を目指す。今後5年間の中国の電力システム転換の方向性を示すとともに、大規模な投資につながる内容となっている。

新型電力システムの構築が重視される背景の一つに、エネルギー安全保障がある。今年上半期には、地政学的な対立が国際的な石油・天然ガスのサプライチェーンに影響を与え、世界のエネルギー市場が大きく変動した。一部の国ではエネルギー不足や価格高騰も起きたが、中国では電力供給への大きな影響はみられなかった。

その背景には、大規模なエネルギー供給体制がある。供給面では、石炭など従来型エネルギーが安定供給を支える一方、再生可能エネルギーも電力供給における存在感を高めている。

中国は世界最大規模の高効率・低排出型石炭火力発電設備を整備するとともに、世界最大規模かつ急速に拡大する再生可能エネルギー供給体制を構築している。社会全体の電力消費量のうち、10キロワット時当たり約4キロワット時を再生可能エネルギー由来の電力が占める。

今年上半期には、電力分野で二つの節目を迎えた。石炭火力の発電量に占める割合が初めて50%を下回り、再生可能エネルギーの割合が初めて40%を超えた。電源構成の多様化と低炭素化が、エネルギー安全保障を支える要素となっている。

一方、今後は需要の急増への対応がより大きな課題となる。第15次5か年計画(2026~2030年)期間中、中国の年間電力消費量は平均で約6000億キロワット時ずつ増加すると予測されている。これは毎年、中規模の国一つ分に相当する電力需要が新たに加わる規模だという。

中でも目立つのが、コンピューティング分野の電力需要だ。同期間中、コンピューティング関連の電力消費量は年間平均1000億キロワット時以上増加し、2030年には8000億キロワット時に達する見通しだ。社会全体の電力消費量に占める割合も、現在の1.6%から約6%に上昇すると予測されている。

AIの普及によってコンピューティング能力への需要が拡大し、それに伴って必要な電力量も急増している。国家発展改革委員会政策研究室主任兼報道官の蒋毅(Jiang Yi)氏はこのほど記者会見で、第15次5か年計画期間中、新型電力網に5兆元(約118兆2385億円)を超える投資を計画していると明らかにした。電力網の構造や送電・蓄電技術、電力供給サービスなどを高度化し、増加する電力需要や再生可能エネルギーの導入に対応するとともに、自然災害への対応力や復旧能力を高めるとしている。

今回発表された計画では、その具体的な整備方針も示された。従来の電力網が発電所から需要地へ電力を届けることを主な役割としていたのに対し、新型電力網には、多様な電源を受け入れ、必要な地域へ効率的に送り、再生可能エネルギーを有効活用する役割が求められる。

例えば、発電した電力を需要地へ送る能力については、2030年までに中国西部から東部への送電能力を4億2000万キロワット以上に拡大する。また、砂漠やゴビ、荒漠地域などに整備した再生可能エネルギー電源から、電力を外部地域へ送る送電プロジェクトの実証も進める。ただ、電力を送るだけでは十分ではない。太陽光発電や風力発電は天候によって発電量が変動するため、発電した電力を柔軟に調整・利用できる仕組みが必要となる。

計画では、蓄電設備や需要側との連携についても整備目標を設定した。2030年までに新型蓄電設備の設備容量を3億キロワットとし、複数の分散型電源や蓄電設備などをまとめて制御する「仮想発電所(VPP)」の最大調整能力を5000万キロワット以上に引き上げる。こうした取り組みを通じ、再生可能エネルギー由来の電力を家庭や幅広い産業で利用しやすくするとともに、電力網全体で需給に応じて柔軟に調整できる体制を整える。

新型電力網への投資拡大は、関連産業にも波及する見通しだ。超高圧送電設備の製造から蓄電池、電力設備の建設まで、幅広い産業で新たな需要が生まれる。また、電力需給をまとめて管理する業務や電力供給の信頼性を管理する業務など、新たな職種も増えている。新型電力網に関連するインフラ投資によって、100万人を超える雇用が直接生み出されるとの見方もある。

中国は新型電力網の整備を、電力システムの高度化だけでなく、関連産業への投資や雇用を生み出し、今後の経済成長を支える基盤として位置付けている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News