韓国「釜山回し蹴り事件」被害者が守ろうとしたもの [韓国記者コラム]
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【08月27日 KOREA WAVE】「この方々が出席してくださった意義を考えて、どうか寛大な処分をお願いしたい」――。韓国の野党「国民の力」の倫理委員会で、ある女性が提出した嘆願書の言葉である。
女性は、2022年に帰宅途中に見知らぬ男から背後から蹴り倒されるなどの暴行を受けた「釜山回し蹴り事件」の被害者だ。当初、警察の捜査は重傷の傷害にとどまっていた。しかし、検察による「補完捜査(検察が独自に実施する追加捜査)」によって殺人未遂やDNA再鑑定による強姦未遂の事実が暴かれ、厳罰へとつながった経緯がある。
だからこそ彼女は、捜査機関の一次判断だけに被害者が委ねられる「補完捜査権の廃止」に危機感を抱き、政界を巻き込んで声を上げ続けてきた。与野党や派閥を問わず、問題に関心を持つ場があればどこへでも足を運んだ。
その熱意に泥を塗ったのが、先日開かれた懇談会での議員らの軽率な失言だ。出席した議員同士が「回し蹴りでも一発どうだ」「私は足より手が得意でして」と軽口を交わしたのである。被害者の不在時とはいえ、事件の重みを考えれば弁解の余地はない。議員らは即座に非を認め、女性に直接謝罪した。女性もまた、謝罪に来た議員に事件当時の防犯カメラ映像を直視させ、再発防止の支援制度づくりを約束させた上で、大人の対応として「処分を求めない」嘆願書を出したのだった。
ところが、党の倫理委員会が下した決定は重い党員資格停止処分だった。むろん、被害者が許したからといって党の規律処分が免除されるわけではない。だが、疑問が残るのはその「基準」である。
同じ党内では、別の主流派議員が光州事件(5・18民主化運動)を「騒乱事態」と表現するフォーラムを強行し、多くの党員や被害者団体から処分を求められたものの、倫理委員会は手続きすら開かず不問に付した。一方は被害者が寛大な対応を求めたにもかかわらず重罰を下し、もう一方は被害当事者が訴えても黙殺する。処分の違いが「党内主流派か非主流派か」という派閥の力学に基づいていると疑われても仕方がない。
被害者の女性は、補完捜査権が失われればこれからの被害者は「運任せ(当たり外れ)」になってしまうと警鐘を鳴らした。彼女が必死に守ろうとしたのは、議員個人ではなく、制度改革の議論そのものだったはずだ。一人の市民が命を削る思いで掲げた切実な大義を、内輪の権力闘争や派閥の計算の「薪」にくべてはならない。【news1 パク・ギヒョン記者】
(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News