【9月4日 東方新報】現地時間8月7日夜、カナダで、中国の絵本画家、蔡皋(Cai Gao)氏(76)が壇上に上がり、2026年国際アンデルセン賞(Hans Christian Andersen Award)の画家賞のトロフィーを受け取った。同賞に画家賞が設けられてから60年、中国人が受賞するのは初めてとなった。

蔡氏が手がけた絵本には、長沙のわらべ歌に登場する月や、湖南省(Hunan)の農村に広がる桃源郷の風景が描かれている。そして世界の各地では、漢学者たちがこうした「中国の子ども時代」を読み解き、翻訳し、それぞれの文化に伝わる形に組み立て直して、さまざまな国の子どもたちに届けている。

一冊の児童書が、海外の子どもにとって初めて「中国と出会う」きっかけになることもある。英国の児童文学翻訳家で漢学者の汪海嵐(Helen Wang)氏と中国の児童書との縁は、自分の子どもたちから始まった。夫が中国を訪れるたびに中国語の児童書を買ってきてもらい、物語を通じて子どもたちが中国語に触れ、言葉に親しみ続けられるようにした。子どもたちが中国語を理解できないときは、中国語で読みながら英語に訳し、家庭で「物語を読むお母さん」になった。2人の子どものうち、特に息子は『黒猫警長』が大好きだったという。

後に汪氏は、この寝かしつけの経験が、その後の児童書翻訳の「予行演習」のようなものだったと振り返っている。子どもがどんな文章を好み、どのようなリズムなら注意を引きつけられるのかが、次第に分かるようになった。

その後、汪氏は曹文軒(Cao Wenxuan)氏の『青銅とひまわり』に出会った。中国の児童文学作家である曹氏は2016年、国際アンデルセン賞の作家賞を受賞し、中国人として初の受賞者となった。『青銅とひまわり』は、血のつながりのない2人の子どもが、厳しい暮らしの中で寄り添いながら成長していく物語だ。

曹氏の作品に登場する動植物を翻訳するため、汪氏は写真を探し、ラテン語の学名を調べ、そこから英語名を確認するなど、地道な作業を重ねた。汪氏は、こうした一見ささいな細部こそ、子どもが未知の文化を理解する入り口になると考えている。物語を通じて、より多くの国の子どもたちに、中国の人びとの日常生活や心の世界に触れてほしいという。

2016年、汪氏はスウェーデンの漢学者・翻訳家の陳安娜(Anna Gustafsson Chen)氏、児童図書館の専門家である陳敏捷(Chen Minjie)氏とともに、英語サイト「Chinese Books for Young Readers」を立ち上げた。中国児童文学の作家やイラストレーター、新刊、書評などを海外の若い読者に紹介するサイトだ。

イランの漢学者、エフサン・ドゥーストモハンマディ(Ehsan Doustmohammadi)氏が注目する中国の児童書は、さらに多彩だ。曹文軒氏は子どもの成長を描き、沈石渓(Shen Shixi)氏や黒鶴(Hei He)氏は人間と動物の関係を描く。湯湯(Tang Tang)氏は想像力あふれるファンタジー童話を手がけている。ドゥーストモハンマディ氏は、これらの作品にはそれぞれ異なる中国での経験が反映されている一方、成長や想像力、人生における価値観という普遍的なテーマが描かれているため、国を超えて子どもたちの共感を呼ぶことができるとみている。

ただ、海外の子どもたちが実際に何を好むかは、大人の想像とは必ずしも一致しない。英国の中国文学研究者、蔚芳淑(Frances Weightman)氏は、中国児童文学が英語圏でどのように紹介され、受け入れられているかを長年研究してきた。その研究によると、子どもが中国の児童書を手に取るかどうかは、まず「目に触れる機会があるか」に大きく左右される。表紙や挿絵に魅力があるか、学校や図書館に置かれているか、教師や保護者から勧められるかといった要素だ。また、実際に読んでみると、大人が「子どもには理解しにくいのでは」と心配する見慣れない表現が、かえって子どもの興味を引くこともある。

こうしたことから、汪氏はもう一つの問いについて考え続けている。海外の子どもたちは、児童書を通じてどのような中国を見ているのか、という問いだ。

現実の中国については、近代的な都市やテクノロジーに囲まれた暮らしを目にすることがある。一方、児童書の中で出会う中国が、いつまでも遠い農村や古い時代を思わせるイメージばかりであってはならない。汪氏は、海外の子どもたちに、中国各地のさまざまな時代の物語を読んでもらうと同時に、現代の中国の子どもたちが感じている喜びや悩み、そしてその創造力にも触れてほしいと願っている。

海外の子どもが中国を知るきっかけは、必ずしも古典文学とは限らない。中国のわらべ歌や、児童文学に登場する子どもたち、親しみやすいキャラクターとの出会いを通じて、中国の文化や暮らしに触れることもある。(c)東方新報/AFPBB News