【8月28日 CNS】中国各地で、県レベルへの本格的な権限移譲が進んでいる。

湖南省(Hunan)発展改革委員会はこのほど、「湖南省『県への権限移譲』実施方案」を発表した。法令に基づいて県レベルに権限や資源を移し、行政の重点や人員、支援をより現場に近い県レベルへと移すことで、県政府が地域の経済・社会発展を主体的に計画し、意思決定できる力を高めるとしている。

県への権限移譲を進めているのは湖南省だけではない。四川省(Sichuan)も先ごろ、権限拡大・機能強化の試行対象となる29の県・県級市に対し、省レベルの第1弾支援リストを公表した。地方債務問題への対応、都市再開発、公共サービス、文化・観光の融合、農村振興、開発区の機能強化、国有企業の資金調達支援など、266項目に及ぶ。

広東省(Guangdong)も第15次5か年計画(2026~2030年)期間中、県への権限移譲と県の機能強化、県・鎮の行政管理体制改革をさらに進める方針を示している。河南省(Henan)は2022年、県・県級市に第2弾となる86項目の経済・社会管理権限を付与した。同年には湖北省(Hubei)も79の県・県級市・区に、省・市レベルが持つ126項目の権限を移譲した。

複数の省が相次いで県への権限移譲に動いている背景には、どのような狙いがあるのか。今回の改革が過去の取り組みと大きく異なるのは、単に行政権限を移すだけではなく、権限とともに資源や資金、技術も県レベルへ移すことを重視している点だ。

県政府は地域経済の発展や住民サービスを担う最前線にある。一方、一部の地域では長年、許認可権限が上級政府に集中し、県政府が担う責任と実際に行使できる権限が釣り合わないという問題を抱えてきた。こうした状況は現場職員の意欲をそぐだけでなく、県域経済の発展を妨げる一因にもなってきた。

湖南省の実施方案では、地域の実情に応じた権限付与、移譲可能な権限の積極的な移譲、権限と責任の一致、十分な支援、移譲後の管理という5つの原則を掲げている。経済規模の大きい県には、法令に基づき省や市と同等の管理権限を付与するほか、法令で禁止されておらず、県レベルで適切に処理できる業務については、可能な限り移譲する。

四川省も、各県の特徴に応じて権限や支援内容を決めている。266項目を一律に適用するのではなく、それぞれの地域資源や発展方針に合わせて設定した。観光資源が豊富な県では地域の特色を生かした文化・観光事業を支援し、農業が盛んな県では新たな仕組みを導入して農村振興の重点事業を進める。

従来の一律的な権限移譲から、各県が必要とする権限や支援を重点的に与える方式へと考え方が変わりつつある。経済力のある県は自主権の拡大によって一段の成長が期待できる一方、経済基盤の弱い県では、利用できる権限や資源が限られ、地域間の格差がさらに広がる可能性もある。

では、なぜ今、県への権限移譲が進められているのか。中国経済における県域の重要性は高まっている。2024年末時点で、県域経済の規模は54兆元(約1276兆9758億円)に達し、中国の国内総生産(GDP)の約40%を占めた。中国政府はすでに県城(県政府所在地の市街地)の都市化について5つの発展類型を示し、地域の特色を生かした県域経済の育成を求めている。

各地で進む今回の権限移譲には、制度面の制約を減らし、県域経済が独自に発展しやすい環境を整える狙いがある。ただし、権限を移せばそれで終わりというわけではない。湖南省では、高度な専門知識を必要とする移譲業務について最長6カ月の移行期間を設け、県側が適切に業務を引き継げるようにする。広東省では、権限移譲の決定公表から30営業日以内に引き継ぎを完了するよう求めている。河南省も、移譲に際して恣意的な条件を付けたり、名目上だけ権限を移して実際には移譲しなかったり、一度移した権限を勝手に取り戻したりすることを禁じている。

こうした制度設計からも、権限移譲はあくまで第一歩であり、県側がその権限を適切に引き継ぎ、有効に活用できるかが重要だと認識されていることが分かる。

専門家からは、県への権限移譲には地域の経済力に応じた対応が必要だとの指摘もある。中国東部沿海の先進地域では、もともと県域経済が強いため権限拡大の効果を得やすい。一方、中西部で一律に権限を拡大すれば、経済活動がさらに分散し、県単位では十分な事業規模を確保できなくなる可能性があるという。

今後は県域間の差がさらに広がる可能性もある。経済力のある県は権限と支援の拡大によって成長を加速させる一方、人口の少ない県では行政組織をスリム化するなど、異なる方向の改革が進むことも考えられる。

長期的に見れば、県への権限移譲は、中国経済の次の成長を支える制度基盤づくりでもある。地域の実情に近い県レベルの裁量を広げ、その活力を引き出せるかどうかが、中国経済の持続的な成長力を左右する重要な要素となりそうだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News