【三里河中国経済観察】新薬開発の加速で「実験用サル」不足が深刻化
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【8月28日 CNS】「『サル』の側に立つべきで、サルのようにただ立っているだけではいけない」。資本市場では、さまざまな材料が投資テーマになる。
最近、中国の医薬品開発支援企業「昭衍新薬(Joinn Laboratories China)」の業績が大幅に伸びた。背景には実験用サルの市場価格上昇があり、同社が保有する実験用サルの資産価値も大きく上昇した。これを受け、関連企業の株価も相次いで上昇。さらに、サルから連想して「バナナ関連銘柄」にまで注目する動きが現れ、ネット上では「ここまで深く関連銘柄が掘り起こされたのは初めてではないか」と冗談交じりの声も上がった。
なぜ1匹のサルが資本市場を動かすほどの存在になっているのか。その理由は、新薬開発のプロセスにある。新薬を上市するまでには臨床試験に入る前の「非臨床試験」が必要となる。その重要な工程の一つが非臨床安全性評価で、動物実験などを通じて薬の安全性を確認する。実験動物にはサルやマウス、ウサギ、イヌなどが使われている。
実験用サルには主にカニクイザルとアカゲザルの2種類があり、それぞれ用途が異なる。非臨床試験で最も多く使われているのはカニクイザルだ。現在、大分子医薬品(バイオ医薬品)の大半では、非臨床試験にサルが必要とされている。低分子医薬品でも、約20~30%でサルが使われているという。
業界関係者は、革新的な新薬の研究開発における実験用サルを、AI開発における「計算資源」に例える。実験用サルを確保できなければ、どれほど有望な新薬候補があっても臨床試験の段階まで進めない場合があるためだ。
現在、その需要が急速に拡大している。抗体薬物複合体(ADC)や放射性医薬品、核酸医薬品などの開発が進み、こうした複雑な医薬品の毒性試験では実験用サルが必要となるケースが多い。
中国国家薬品監督管理局(NMPA)の医薬品審査センターによると、2026年上半期に中国で登録された新薬の臨床試験は1296件で、前年同期比36%増加した。新薬の非臨床研究が増えるほど、それに伴って実験用サルの需要も増加する。
浙商証券のリポートでは、2026~2028年の中国における実験用サルの供給不足は、少なくとも1万5000~2万匹に達すると予測している。中国は世界有数の実験用サルの飼育国で、2024年の国内飼育数は約22万匹、年間の供給数は約3万匹で推移している。しかし、それでも国内需要を十分に満たせていない。中国は実験用サルの原産地ではなく、繁殖用の個体を輸入に頼っているうえ、繁殖に時間がかかるため、短期間で供給量を大幅に増やすことは難しい。
こうした需給の逼迫を背景に、実験用サルの価格は上昇を続けている。2025年5月には1匹10万元(約234万1910円)未満だったが、現在では20万元(約468万3820円)を超えている。
資金があっても、必ずしも購入できるとは限らない。中国メディアによると、広東省(Guangdong)や広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)、四川省(Sichuan)などの実験用サル飼育企業では、今年供給できるカニクイザルがすでに取引先から予約済みになっているという。
実験用サルの不足は中国だけの問題ではない。米国でも近年、供給不足が続いている。2023年には米国市場で1匹当たり5万5000~6万ドル(約869万8800〜948万9600円)まで価格が上昇した。当時から、実験用サルの不足が先端的ながん治療やその他の医薬品開発に影響を及ぼす可能性が指摘されていた。
こうした状況を受け、実験用サルに依存しない研究手法を模索する動きも進んでいる。サルの価格上昇によって試験コストが膨らんでいることに加え、動物実験そのものを減らすべきだという声も強まっているためだ。
2025年11月、米疾病対策センター(CDC)は、施設内で行うヒト以外の霊長類を使った研究を段階的に終了すると発表した。米食品医薬品局(FDA)も2025年、動物実験の削減に向けたロードマップを発表し、AIを活用した毒性予測モデルや細胞株、オルガノイド、臓器チップなどの「新たな試験手法」を重要な選択肢として位置付けた。
現在の実験用サルをめぐる需給逼迫は、表面的には新薬開発の活発化によって需要と供給のバランスが崩れた結果だ。しかし、その背景では世界のバイオ医薬品産業そのものが大きな転換期を迎えている。
今後、実験用サルへの依存をどこまで減らせるのか。新たな試験技術の開発と普及は、新薬開発の安定性や将来の成長を左右する重要な課題となっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News