【8月27日 CNS】中国の都市間でAIの計算資源をめぐる競争が進む中、浙江省(Zhejiang)温州市(Wenzhou)が存在感を高めている。

温州市で「東南Token(トークン)運営センター」が稼働を開始した。浙江省南部、福建省(Fujian)北部、江西省(Jiangxi)東部を対象とする計算資源とAIトークンのサービス拠点で、リソースの集約や効率的な配分、運営サービスを通じ、中小企業がAIを利用しやすい環境を整える。

温州市当局が同日公表したデータによると、今年第1四半期の製造業におけるトークン消費量は前四半期比2261%増加した。ECライブ配信分野では1110%、OPC(1人会社)分野では706%増となった。

こうした動きからは、これまでとは異なる温州の姿が見えてくる。中国の民営経済を代表する都市の一つである温州は、改革開放後に急速な経済成長を遂げた。しかし2004年ごろから、伝統産業の低迷や地域的な金融問題などを背景に、長期にわたる調整期に入った。その過程で、資本投機への傾斜や実体経済への投資不足、伝統産業への依存といったイメージを持たれることもあった。

しかし現在、状況は変わりつつある。計算資源の拠点整備やAIを活用した産業改革は、現在の温州では珍しい取り組みではなくなっている。長く「伝統産業の街」という印象を持たれてきた温州は、先端技術をいかに早く取り入れるかに力を注いでいる。

温州はこの10年余り、科学技術イノベーションへの投資を強化し、都市経済の構造転換を進めてきた。特に第14次5か年計画(2021~2025年)以降は、「新質生産力」と呼ばれる新たな成長力を個別分野で育てるだけでなく、産業全体の構造改革につなげる取り組みを進めている。

その変化は数字にも表れている。過去5年間、温州市の研究開発(R&D)費は年平均14.2%増加し、その伸び率は中国の一部の主要都市を上回った。スタートアップなどを育成するインキュベーション施設の整備では、杭州を参考に大規模なインキュベーター群の形成を進めてきた。その面積は2021年の84万平方メートルから、現在では1200万平方メートルを超えている。

都市の科学技術イノベーション競争力ランキングでも、かつて全国30位圏外だった温州は、現在26位まで順位を上げている。民間企業を中心とした成長からイノベーション主導の発展へと移行する中、温州は主に三つの取り組みを進めてきた。

一つ目は、都市の競争力を支える考え方の転換だ。温州では5年連続で、新年最初の重要会議のテーマにイノベーション発展を掲げ、昨年には中国初となる市レベルの「人工知能局」を設置した。「起業そのものが革新」という従来の発想から、「革新によって新たな事業を生み出す」という方向への転換を進めている。

二つ目は、新たな成長産業の育成だ。2022年に発足した温州海洋経済発展示範区では、洋上風力発電設備、商業宇宙関連設備、海洋・航空向けスマート設備、海洋・航空向け新素材の4分野を重点産業としている。同区はGDPと一定規模以上の工業企業の付加価値額の伸び率で2年連続市内トップとなり、ここ2年間は一定規模以上の企業数が毎年50%以上増えている。

三つ目は、新技術を実際の製造業に取り入れる仕組みづくりだ。製造業が盛んな温州では、AI分野で「安全基盤、データ基盤、業界特化型モデル、活用環境」からなる体系を整備している。靴やアパレルなど複数の業界向け基盤モデルを開発するとともに、230のAIアプリケーションやAIエージェントを導入し、製造現場の具体的な需要への対応を進めている。

こうした取り組みは、温州経済の成長にもつながっている。今年上半期の温州市の域内総生産(GDP)は5148億2000万元(約12兆687億円)で、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同期比6.0%増加した。2023年第2四半期以降、GDP成長率は13四半期連続で6%以上を維持している。

長期的には、経済や産業の変化に対応する力を高めていることも重要だ。都市間競争が単純な経済規模だけでなく、産業構造や成長モデルを競う段階に移る中、変化に応じて産業を更新していく力が都市の持続的な成長を左右する。景気変動に対応した改革や長期的な投資、地域の特徴を生かした新たな産業の育成によって、温州は新たな成長の余地を広げてきた。

一方、現在の成長を長期的な質の高い発展につなげるには、課題も残る。都市全体のイノベーションの効率をさらに高め、産業クラスターの競争力を強化する必要がある。また、地域間の壁を取り払い、温州都市圏におけるサービスや産業チェーンの連携を強化することも、産業転換の成果を定着させ、景気変動の影響を受けにくい経済構造をつくるうえで重要となる。

温州は2025年にGDPが1兆元(約23兆4427億円)を突破した後、新たな成長段階に入る方針を打ち出した。第15次5か年計画(2026~2030年)では、産業を都市発展の基盤とする政策や製造業の強化、イノベーションによる成長力の転換などで大きな進展を目指している。

伝統産業の街として発展してきた温州は現在、AIや先端技術を取り込みながら産業構造の転換を進めている。今後、その取り組みを持続的な成長につなげられるかが注目される。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News