【8月21日 東方新報】中国・黒竜江省(Heilongjiang)チチハル市(Qiqihar)富裕県七家子村で8月2日、キルギス族の「東遷節」が開かれた。約300年前、キルギス族の人びとが現在の黒竜江省へ移住した歴史を伝える祭りで、会場では伝統的な祭祀や民族叙事詩の披露などが行われた。

史料によると、1733年、276人のキルギス族の祖先が、現在の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)周辺にあるテス川流域を出発した。モンゴル草原を越えて約3か月かけて黒竜江まで移動し、国境地域の防衛に従事しながら、この地に定住したとされる。

この歴史をより多くの人に知ってもらおうと、現地を走るK980列車では、車内の一部を民族文化の展示スペースとして活用している。キルギス族が黒竜江へ移住した経路をパネルで紹介するほか、キルギス族に伝わる英雄叙事詩『マナス』の資料や伝統衣装などを展示。新疆の代表的なパン「新疆ナン」も提供し、食文化を含めてキルギス族の歴史や暮らしを紹介している。

今年の東遷節では、地域の祭りと列車を連携させた企画も行われた。無形文化遺産に関連する手工芸品や民族文化を取り入れた商品を車内で展示したほか、伝統技術の継承者が乗車し、実演を行った。

こうした取り組みは、子どもたちの学習の場としても利用されている。今年の夏季輸送期間には、K980列車の利用者数が前年同期比25%増加。これまでに6団体、計208人の児童・生徒らが学習目的で利用した。列車での移動を通じて、地域の民族の歴史や文化に触れられる仕組みとなっている。

黒竜江省では、別の列車でも地域文化を紹介する取り組みが進められている。三江平原を走る4136列車は、中国北東部に暮らす少数民族・ホジェン族が多く住む同江市(Tongjiang)を始発とする普通列車だ。車内では乗務員が案内役となり、魚の皮を加工して衣服や工芸品を作るホジェン族の伝統技術を乗客に紹介している。この技術は中国の国家級無形文化遺産に登録されている。

同技術の代表的な継承者、尤文鳳(You Wenfeng)さんは、「以前は魚皮を使った絵や衣服を作っても地元でしか販売できず、収入も多くなかった。今では鉄道を通じて販路が広がり、収入も増えている」と話す。

鉄道を利用したこうした取り組みは、少数民族の文化を観光客らに紹介すると同時に、伝統工芸品の販路拡大にもつながっている。列車を単なる移動手段としてだけでなく、地域の歴史や無形文化遺産を紹介する場として活用する試みが続いている。(c)東方新報/AFPBB News