【三里河中国経済観察】消費分野の国家計画が描く「豊かな暮らし」の未来
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【8月20日 CNS】年金の引き上げ、医療保険補助の拡充、有給休暇制度の着実な実施――。
中国政府は7月、「第15次5か年計画期間における消費拡大計画」を正式に発表した。消費分野に特化した国家レベルの計画としては初めてとなる。この計画の意義を理解するには、これまでの流れを振り返る必要がある。
従来の5か年計画では、消費に関する施策は補完的・段階的な位置付けにとどまっていた。しかし、第15次5か年計画では、「内需拡大を国家戦略の基盤」と位置付け、「消費の力強い拡大」を重要課題として掲げている。
国家発展改革委員会産業経済・技術経済研究所サービス業研究室の洪群聯(Hong Qunlian)主任は、「消費拡大がマクロ経済を支える戦略的な柱へと格上げされたことを意味する」と指摘する。その背景には確かな実績がある。「第14次5か年計画」期間中、中国の社会消費財小売総額は40兆元(約922兆9680億円)、45兆元(約1038兆3390億円)、50兆元(約1153兆7100億円)の大台を次々と突破し、最終消費支出の経済成長への平均寄与率は58.8%に達した。
国家統計局によると、2026年上半期の消費財・サービス小売総額は前年同期比2.7%増となり、消費拡大の流れは続いている。一方で課題もある。社会消費財小売総額の伸び率は5月に前年同月比マイナス0.6%となり、消費者の間には「使いたいが将来が不安で使えない」という慎重姿勢もみられる。
洪氏は、今回の計画は短期的な景気刺激策ではなく、消費拡大を支える長期的な制度づくりが目的だと説明する。安定した政策への期待を示すことで、企業による中長期投資を促し、消費の質と量の向上につなげる狙いがある。
世界銀行のデータによると、2024年の最終消費支出のGDP比率は、中国が56.7%だったのに対し、米国は81.5%、日本は73.2%、インドでも67.2%だった。この差は今後の成長余地を示している。計画では、2030年までに社会消費財小売総額を約60兆元(約1,384兆4520億円)へ引き上げる目標を掲げた。今後5年間で10兆元(約230兆7420億円)の増加、年平均約3.7%の成長を見込んでいる。
では、その成長をどこで生み出すのか。洪氏は、大型耐久消費財、デジタル消費、サービス消費の三つを柱に挙げる。なかでも今後の成長をけん引するのはサービス消費で、新たな消費拡大分の6割以上を占めるとみられている。
中国の1人当たりGDPは2025年に1万3953ドル(約217万9180円)となり、1万5000ドル(約234万2700円)前後でサービス消費が本格化するという国際的な傾向に近づいている。こうした流れを踏まえ、計画では高齢者介護、育児、文化・観光、医療・健康、スポーツなどのサービス産業を重点分野として位置付けた。洪氏は、サービス消費を拡大するためには四つの条件が重要だと指摘する。
第一は所得だ。計画では賃金決定・支払い制度の改善や最低賃金の段階的引き上げ、都市・農村住民の財産所得の拡大などを盛り込み、「使えるお金」を増やす環境づくりを進める。
第二は時間の確保である。計画では有給休暇制度の見直しや制度運用の徹底、柔軟な休暇取得の推進などを打ち出し、「時間があるから消費できる」環境づくりを目指す。
第三は質の高いサービスの供給だ。地域の飲食ブランドやホテル・民宿ブランドの育成、介護サービスネットワークの整備、普及型保育サービスの拡充など、供給力の強化を進める。
第四は安心して消費できる環境の整備である。公共駐車場や充電設備、5Gネットワークなどのインフラ整備を進めるとともに、不合理な規制の見直しや、自動車行政を「購入管理」から「利用管理」へ転換するほか、プラットフォーム企業に対する独占禁止政策を強化し、公平で開かれた市場環境の整備を図る。
突き詰めれば、この計画が目指すのは、「国民が安心してお金を使え、自由に時間を使え、消費する場所があり、不安なく消費できる社会」を実現することだ。消費拡大に向けた道筋は示された。今後は、この国家レベルの設計を、具体的な施策として着実に実行していくことが求められる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News