【08月07日 KOREA WAVE】
2026年7月30日、韓国・ソウル市鍾路区の西村にある建物。作家ハン・ガンさんの書店「チェクパンオヌル」が入っていた場所は空室になっている(c)MONEYTODAY
2026年7月30日、韓国・ソウル市鍾路区の西村にある建物。作家ハン・ガンさんの書店「チェクパンオヌル」が入っていた場所は空室になっている(c)MONEYTODAY

「裁判所から書留が届いたと言って、建物の所有者の連絡先を尋ねてきました」

ソウル市鍾路区の西村で11年間飲食店を営む店主のもとには最近、見知らぬ訪問者が相次いでいる。「信号機の工事が必要だ」「水道設備を交換する」と説明し、建物所有者の連絡先を聞き出そうとする人たちだ。しかし、本当の目的は工事ではなく、建物の買収だった。

西村では不動産の取得競争が過熱し、商店主や住民が不安を募らせている。一部の仲介業者は裁判所や公共機関を名乗って所有者の連絡先を入手し、執拗に売却を勧めているという。建物が売却された後には、退去要求や家賃の引き上げが続き、10年以上営業してきた店舗や文化施設が相次いで姿を消している。

店主は「断っても別の人が訪ねてくる。後で聞くと、所有者に『家賃を倍にしてあげる』と言い、入居者を追い出すよう勧めていた。来年の今ごろには店がなくなっているかもしれない」と語った。

西村で20年間働く不動産仲介業者によると、仲介会社が裁判所や韓国電力を名乗って所有者の連絡先を聞き出し、「高く売却する」と持ちかける例がある。売却後、新たな所有者が入居者を退去させ、家賃を数倍に引き上げる場合もあるという。月額1500万ウォン(約150万円)だった家賃が3000万ウォン(約300万円)に上がり、閉鎖したギャラリーもあった。

別の仲介業者は「2~3年前から江南地区の仲介会社が西村に現れ、2025年からさらに激しくなった」と説明。「一日に何度も電話をかけ、自宅まで訪ねてくるため、驚いた所有者が相談に来ることも少なくない」と話した。

住民も被害を訴えている。西村の韓屋で30年間暮らす70代の住民は「数カ月にわたり、スーツ姿の若い男性が毎日のように訪ねてきて、韓屋を売るよう迫った。断っても訪問を続け、郵便物も数十通送ってきたため、脅されているように感じた」と語った。

西村を代表してきた文化施設も相次いで消えている。ノーベル文学賞を受賞した作家ハン・ガン(韓江)さんの書店「チェクパンオヌル」は、建物を購入した企業から退去を求められ、2026年7月に閉店した。

詩人パク・ノヘさんが設立した非営利団体「ナヌム文化」が14年間運営してきた「ラ・カフェ・ギャラリー」も、家賃の上昇に耐えられず、2026年3月に営業を終えた。

商店主は「ハン・ガンの書店は地域の誇りだった。ノーベル文学賞受賞後は、飲食店にも多くの人が訪れた。西村の書院やギャラリー、書店に慰められながら耐えてきたが、そうした場所が消えている」と嘆いた。

大衆文化評論家のキム・ソンス氏は「芸術家が築いた文化施設によって地域の価値が高まると、不動産資本が流入し、従来の住民や商店主が追い出される現象が繰り返される」と指摘した。

そのうえで「ハン・ガンの書店のように世界中の読者が訪れる場所が、資本の論理で消えることは、地域の文化的な競争力を失うことと変わらない。歴史と文化を持つ空間を守るため、政策面での検討が必要だ」と強調した。

(c)MONEYTODAY/KOREA WAVE/AFPBB News