【三里河中国経済観察】海南、2030年にガソリン車販売禁止へ
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【8月19日 CNS】中国・海南省(Hainan)が、中国で初めてガソリン車の販売を禁止する省となる見通しだ。
海南省政府はこのほど、「第15次5か年計画期間における海南国家生態文明試験区計画(『美しい海南』建設計画)」を発表し、2030年までにガソリン車の販売禁止を着実に進める方針を明らかにした。これは、ガソリン車の段階的な退出が、産業界での議論から行政による本格的な政策実施の段階へ移行したことを意味する。
実は、この構想は以前から進められてきた。海南省は2018年に、2030年までに島内で使用される車両を新エネルギー車へ切り替える目標を初めて打ち出した。さらに2019年に公表した「海南省クリーンエネルギー自動車発展計画」では、2030年までに省内でのガソリン車販売を全面的に禁止する方針を明確にしている。その後、新エネルギー車の普及は着実に進み、2026年1月時点で保有台数は54万4600台に達し、全自動車保有台数の約24%を占めている。
中国には数多くの省がある中で、なぜ海南省が最初にこの一歩を踏み出すことができたのだろうか。その理由の一つは、海南省の自然条件にある。電気自動車(EV)は冬場の低温による航続距離の低下が課題とされるが、海南省は一年を通じて温暖で冬がほとんどなく、気温によるバッテリー性能への影響が小さい。また、島を一周する高速道路は約600キロメートルと、現在の主流EVの航続距離に収まるうえ、住民の日常的な移動距離も短く、長距離移動への不安が少ない。
もう一つの要因はコストだ。海南省はガソリン価格が全国でも高い水準にある一方、日照条件や洋上風力発電に恵まれ、再生可能エネルギーによる電力コストが低い。こうした環境により、電気自動車の利用コストの優位性が大きく高まっている。
環境面も重要な理由だ。国際観光島である海南省にとって、美しい自然環境は最大の資産であり、自動車の排気ガスは都市部の大気汚染の主要な原因の一つとなっている。ガソリン車販売の禁止は、豊かな自然環境を守るための選択でもある。
さらに、海南省には伝統的な自動車産業への依存が少ないという特徴もある。自動車製造が地域経済の中核ではないため、産業構造転換に伴う負担が比較的小さく、新エネルギーへの移行を進めやすい環境にある。
もっとも、海南省の狙いは島内だけにとどまらない。中国最大の自由貿易港である海南自由貿易港は、中国の巨大市場を背後に持つ一方、東南アジアという新たな自動車市場にも面している。国内外市場の連結やデータの越境流通、自動車貿易などの分野で独自の政策的・地理的優位性を備えており、新たな政策を先行して試行する役割も担っている。
そのため、海南省によるガソリン車販売禁止は、グリーン発展の地域モデルであるだけでなく、中国全体、さらには世界の新エネルギー車への転換に向けた再現可能なモデルケースとしても位置付けられている。
こうした政策を実現できる背景には、中国の新エネルギー車産業チェーンの成熟がある。電池やモーター、電子制御システムから充電設備、スマートコネクテッド技術まで、産業基盤が整ったことで、「ガソリン車販売禁止」は構想から現実へと近づいた。
現在、業界では「海南省に続く地域はどこになるのか」という議論も広がっている。工業・情報化部はこれまで、「一律の規制は行わない」との方針を示しており、地域の実情に応じて市場と産業の自然な移行を促すことを基本姿勢としている。
今回の海南省の制度設計を見ても、単なる「販売禁止令」ではないことが分かる。例えば、2030年までに車両と充電設備の比率を2.5対1以下に維持することを目標とするとともに、「販売禁止」は「走行禁止」を意味しないことも明確にした。新規販売のみを対象とし、既存のガソリン車は引き続き使用できるため、転換の方向性を示しつつ、既存ユーザーの権利にも配慮した段階的な制度設計となっている。このようなアプローチは、他地域にとっても参考となる可能性がある。
業界関係者の間では、海南省に続き、珠江デルタ、長江デルタ、京津冀地域など、新エネルギー車の普及率が高く、充電インフラが整備され、環境規制が厳しい地域が今後追随する可能性があるとの見方も出ている。
市場の観点から見れば、新エネルギー車が徐々にガソリン車に取って代わるのは、最終的には消費者の選択による結果でもある。各地が行政命令を待つというより、市場の流れに沿って産業の転換が進んでいく可能性が高い。
確かなことは、自動車産業の新エネルギー化はすでに大きな流れとなっていることだ。グリーン電力が支える新たなモビリティ時代は、この海南島から、さらに広い世界へと広がろうとしている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News