【三里河中国経済観察】スイカは消費者にも、農家にも甘くあってほしい
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【8月12日 CNS】中国で流通するスイカの5個に1個は河南省(Henan)産だ。今年の夏、中国最大のスイカ産地である河南省の相場は、多くの人に複雑な思いを抱かせている。
「河南省ではスイカが1斤(500グラム)数銭で売られている」といった動画がSNSで話題となる一方、消費者の身近なスーパーでは依然として1斤数元で販売されている。この大きな価格差を前に、「農家はこれほど安く売っているのに、なぜ消費者は安く買えないのか」と疑問を抱く人も少なくない。
では、実際の状況はどうなのだろうか。河南省でスイカが「1斤数銭」で取引されているケースは確かに存在する。ただし、それは一般的な相場ではない。
現地の農家によると、その多くは「尾瓜」と呼ばれる収穫終盤のスイカだ。畑で最後に熟したもので、見た目や大きさ、食味はいずれもやや劣り、収穫を終えれば畑も片付ける段階に入る。
とはいえ、今年のスイカの買い取り価格が例年より安いことは間違いない。河南省の農家によれば、例年でも最低価格は1斤当たり0.3元(約7円)程度だったが、今年のような安値は長年見られなかったという。現在、市場で流通する一般的なスイカの買い取り価格は1斤当たり約0.1元(約2円)、高品質なスイカでも約0.2元(約4円)と、いずれも前年を下回っている。
産地でこれほど安いのであれば、なぜ消費者の手元では依然として1斤数元で販売されているのだろうか。実際には、河南省の畑で収穫されたスイカが全国の都市の店頭に並ぶまでには、長い流通過程を経る。大量収穫の過程では傷や破損が避けられず、品質の劣るものは流通の各段階で選別・廃棄される。こうした自然なロスも最終的にはコストに反映される。
さらに、長距離輸送の燃料費や人件費、保管費が加わり、流通の各段階でコストが積み重なる。スーパーに到着した後も再び厳しい選別が行われ、店舗運営費や光熱費、人件費なども価格に上乗せされる。こうした一つ一つの経費が販売価格を押し上げている。
スイカが畑から食卓へ届くまでには、各段階でコストが積み重なるサプライチェーンが存在する。そのため、店頭価格と産地での買い取り価格の間には大きな開きが生じるのである。
価格の変動を振り返ると、「豊作なのに価格が下落し、農家が苦しむ」という状況は数年おきに繰り返されてきた。こうした状況になると、各方面から支援の手が差し伸べられる。最近では、地元企業や商工団体などが売れ残ったスイカを大量に買い取り、従業員向けの福利厚生や慰問活動に活用している。また、観光地でも地元産スイカを購入し、来園者へ無料で提供する取り組みが広がっている。
行政も販路拡大に乗り出している。河南省では15の地級市と鄭州航空港区にある県級以上の都市部で計1086か所の臨時スイカ販売所を設置したほか、「スイカマップ」を公開し、販売を後押ししている。
こうした支援は、足元の販売不振を和らげる効果を上げている。しかし、本来、豊作は喜ばしいことであるはずだ。それが「豊作なのに収入が増えない」状況になれば、最も苦しむのは懸命に働く農家である。
「豊作貧乏」を根本的になくすためには、より充実した産業システムと、より合理的な市場メカニズムの構築が欠かせない。多くの農家は過去の経験をもとに作付けを決める。前年に価格が高ければ翌年は一斉に栽培面積を拡大し、その結果、収穫時期が集中して供給過剰となり、価格が下落しやすい。今年は全国の主要産地で作付面積、収穫量ともに増加し、スイカの販路確保が一段と難しくなった。
課題解決の鍵は、情報の壁を取り払い、「横並び」の栽培を防ぐことにある。ビッグデータを活用して市場動向を事前に予測し、農家が適切な作付規模を判断できるよう支援することで、供給過剰を未然に防ぐ必要がある。
さらに重要なのは、農産物の産業チェーンを延ばし、生鮮販売だけに依存しない仕組みを築くことだ。適度に加工産業を発展させて余剰生産を吸収するとともに、地域ブランドを育成し、品質による付加価値を高めることで、価格競争から脱却することが求められる。
甘いスイカ一玉の裏側には、数多くの農家の暮らしがあり、現代農業が抱える大きな課題がある。農業が相場任せではなく、豊作になっても「救済」を必要とせず、農家が適正な価格で販売でき、消費者も手頃な価格で良質なスイカを購入できる――。畑から食卓まで続くこの産業チェーンが真の意味で多くの関係者に利益をもたらすには、そのような仕組みづくりが不可欠である。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News