【8月10日 CNS】「景徳鎮手工陶磁器産業遺跡」がこのほど、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産委員会により正式に「世界遺産リスト」に登録された。これは中国で61件目の世界遺産であり、「陶磁器」をテーマとする世界初の世界文化遺産でもある。江西省(Jiangxi)景徳鎮市(Jingdezhen)に根を下ろして活動する職人たちにとっては、千年にわたり受け継がれてきた窯の火が世界最高水準の文化的評価を得たことを意味する。一方、古い陶磁器工場を再生した文化・クリエーティブエリア「陶渓川」で、週末のマーケットに出店する若いクリエーターたちにとっては、大きな注目と新たなチャンスが訪れることを意味する。

景徳鎮は「磁都」として知られる。公式な説明によると、「景徳鎮手工陶磁器産業遺跡」は10世紀から19世紀にかけての景徳鎮の手工業による製陶産業システムを代表する遺跡群であり、中国の手工製陶技術や陶磁器芸術、製陶産業の発展と革新の歩みを示している。一方、中国の若者の間では、この歴史ある文化遺産は、より親しみを込めて「捏泥巴(泥遊び)」と呼ばれている。

一連のデータからも、中国の若者が「泥遊び」をはじめとする伝統手工芸を愛していることがうかがえる。過去10年間で景徳鎮の新たな人口は13万6000人増加し、その約8割が若者だった。「景漂」と呼ばれる景徳鎮へ移住して夢を追う人は6万人に達し、最盛期には5000人を超える外国人の「洋景漂」がここで定住し、住宅を購入した。「陶渓川」は、当初55人のクリエーターからスタートしたが、現在では毎週末1200以上の屋台が並び、それでも出店枠は不足するほどの人気となっている。これまでに2万8600人の職人がここで出店し、その平均年齢はわずか28歳である。

景徳鎮の事例は決して特別なものではない。国民の文化的自信が高まる中、伝統工芸品は「博物館に並ぶ古い展示品」から「国潮(中国トレンド)の人気商品」へと姿を変え、中国の若者の間でブームを巻き起こしている。2025年、中国の無形文化遺産関連市場の規模は1兆1000億元(約円)を突破し、成長率は20%を超えた。このうち、「90後(1990年代生まれ)」「00後(2000年代生まれ)」が消費全体の60%以上を占めた。

無形文化遺産の要素を取り入れた服を着たり、無形文化遺産グルメを味わったり、無形文化遺産を活用した文化クリエーティブ商品を購入したりすることは、中国の若者の新たなライフスタイルとなっている。今年5月、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の訪中に同行したイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、6歳の息子の手を引いて北京市の人民大会堂を訪れた。子どもが身に着けていた中国伝統の盤扣(チャイナボタン)付きベストと愛らしい虎頭バッグは、たちまちSNSで話題となった。中国のネットユーザーがECサイトで虎頭バッグの販売元を突き止めると、338元(約円)で販売されていたこのバッグは一夜にして完売。同ブランドの虎頭帽子や醒獅ヘルメットなど、ほかの国潮クリエーティブ商品にも注文が相次いだ。

河北省(Hebei)蔚県の切り絵、雲南省(Yunnan)のイ族刺しゅう、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)チワン族の織物「壮錦」、寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region%)の麻編みなど、国際サッカー連盟(FIFA)の公式ライセンスを受け、今年の2026年サッカーW杯北中米大会(2026 World Cup)では中華圏向けに「無形文化遺産とW杯」をテーマとした特別プロジェクトが展開され、中国の伝統技術を融合させた一連の文化クリエーティブ商品が人気を集めている。約100年に及ぶワールドカップの歴史の中で、中国の伝統手工芸が大規模に公式ライセンス商品へ取り入れられたのは今回が初めてである。その背景には、中国の若い消費者層に対する新たな認識がある。

データによると、中国版ティックトック(TikTok)の抖音(Douyin)では、過去1年間に「00後」が無形文化遺産関連商品の注文全体の21.3%を占め、「90後」はさらに高い38.9%を占めた。彼らにとって、無形文化遺産は「古臭いもの」ではなく、「とてもクールなライフスタイル」である。無形文化遺産を体験し、関連商品を購入することは、新世代にとっての新たな交流スタイルであると同時に、中華伝統文化を再発見し、その価値を再認識する行動でもある。

無形文化遺産の発展を支えているのは、若く高学歴な新しい職人たちでもある。淘宝(タオバオ、Taobao)が発表した「2025年無形文化遺産・伝統手工芸発展報告」によると、「90後」「00後」の無形文化遺産・伝統手工芸関連事業者の割合は33%に達した。また、調査対象となった淘宝の職人のうち、大学卒以上の学歴を持つ人は6割を占めた。

実際、中国における無形文化遺産の隆盛は、本質的には「双方向の歩み寄り」である。一方では、若い消費者が財布で支持を示し、文化への自信を実際の注文へと変えている。他方では、若く高学歴の職人たちが参入し、洗練された美意識や創造的なデザイン、市場への洞察力によって古くからの技術に新たな命を吹き込んでいる。広西チワン族自治区桂林市(Guilin)の山奥で刺しゅう職人が手掛ける虎頭バッグから、景徳鎮で燃え続ける窯の火が生み出す青花磁器まで、中国の若者は自らの方法で世界に伝えている。無形文化遺産は埃をかぶった標本ではなく、人びとの日常に溶け込む生活文化そのものなのである。(c)CNS/JCM/AFPBB News