【8月6日 CNS】最近、二つの出来事を並べてみると、皮肉な対比が浮かび上がる。

一つは、米国で人工知能(AI)の制御不能な事態が発生し、オーブンAI(OpenAI)のモデルが「ジェイルブレイク(制限回避)」によって世界最大級のAIオープンソースコミュニティ「ハギングフェイス(Hugging Face)」への攻撃に利用されたことだ。この問題への対応では、中国製AIツールが活用された。

もう一つは、中国のAI企業「月之暗面(Moonshot AI)」が、パラメータ数2兆8000億の大規模言語モデル「Kimi K3」を発表したことだ。その性能について、米メディアは「中国は米国のAIにおける優位性を縮めた」と報じた。一方で米国はその後、「Kimi K3」がAI技術を蒸留(ディスティレーション)によって米企業から不正に取得した疑いがあるとして、同社を貿易ブラックリストに追加し、制裁対象とする可能性を示した。

こうした指摘に対し、月之暗面の企業向け事業責任者・黄震昕(Huang Zhenxin)氏は、「Kimi K3の性能向上は独自の基盤アーキテクチャーによるものであり、既存モデルを蒸留・複製したものではない」と説明した。中国外交部も23日、「中国は科学技術や経済・貿易問題を政治化・道具化することに一貫して反対しており、そのような行為は世界のAI発展を妨げ、いずれの国の利益にもならない」との見解を示した。

記事では、米国の対応について「競争で優位に立てなくなると、中国企業への批判や制裁に踏み切る姿勢は理解し難い」と指摘する。問題は、月之暗面が越えてはならない一線を越えたことではなく、中国製AIが米国との技術格差を着実に縮めていることにあるとの見方だ。

プログラミング能力を競う評価ランキングでは、Kimi K3が1679ポイントで首位となった。昨年の「「DeepSeek(深度求索)ショック」に続き、「Kimiショック」も市場に大きな反響を呼び、テスラ(Tesla)創業者イーロン・マスク(Elon Musk)氏も「非常に印象的だ」と評価した。

DeepSeekからKimiへと続く中国AIの進展は、科学技術分野での自立・自強を進めてきた成果であるとともに、「共に協議し、共に建設し、共に成果を共有する」という理念の下で発展してきた結果でもあるとしている。

その勢いは数字にも表れている。AIモデルのランキングサイト「OpenRouter」では、利用数上位10モデルのうち6つを中国の技術が占めており、中国発のオープンソース大規模言語モデルの累計ダウンロード数は100億回を突破した。

一方で記事は、米国がこうした動向を認めず、「蒸留」という概念を持ち出して中国AIの技術力を過小評価しようとしていると主張する。さらに、封じ込めや制裁による対応はAI産業の発展という世界的な流れに逆行するものだと指摘する。

知的財産権の保護は重要だが、それをゼロサムゲームの手段として利用すべきではなく、安全保障を理由に国際的な技術交流を妨げるべきでもないという。短期的には制裁によって中国AI産業のコストが増える可能性はあるものの、長期的には半導体や基盤技術、安全アルゴリズムなどの自立化を一層促すことになるとの見方も示した。

また、AIがもたらすリスクは一国だけで解決できる問題ではない。アルゴリズムの暴走やサイバー攻撃、データ漏えいなどは国境を越えた課題であり、各国が技術や経験を共有し、協力してこそ、信頼できる世界共通のAI安全保障体制を構築できるとしている。

記事は最後に、「中国AIの発展を警戒して包囲しながら、一方では技術的な危機に直面すると中国製AIの支援を必要とするという現状は、制裁や封じ込めでは技術革新の流れを止められないことを物語っている」と結んでいる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News