【7月30日 CNS】日本の著名なミステリー作家、東野圭吾(Keigo Higashino)さんの死去が中国にも伝わり、多くのネットユーザーや著名作家から追悼の声が寄せられている。

講談社(Kodansha)が7月27日に訃報を発表すると、「東野圭吾さん死去」は中国のSNSで瞬く間にトレンド入りし、『白夜行』『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』などの作品名が相次いで話題となった。中国のネットユーザーからは、「東野圭吾の小説は、多くの人にとって初めて買った文学作品だった」「青春時代を共に過ごした作品だった」「彼の本は教室中を机の下で回し読みされた」「青春時代に夢中で読んだ推理小説は、永遠にあのページで止まってしまった」といった声が上がった。

「中国版・東野圭吾」とも称される作家の紫金陳(Zi Jinchen)氏は、「私が推理小説を書くきっかけとなった人物だった。2012年に『容疑者Xの献身』を読み、初めて推理小説に触れ、その後、この道を歩み始めた。『黒笑小説』『毒笑小説』なども読み、東野作品に流れるブラックユーモアや、自分たちの本質に通じる感性に深く共感した。こんなに突然の訃報とは思わず、本当に残念だ」とSNSに投稿した。

中国の著名作家で文化研究者の易中天(Yi Zhongtian)氏も、「自分も孫娘も東野圭吾のファンだ」と投稿。「どれほど大きなプレッシャーを感じていても、東野圭吾の作品を読めば心が落ち着く。それが私にとっての特別な存在だった」とその思いをつづった。

東野さんは生前、中国を公式に訪問したことはなかったが、その作品は国境を越えて広く読まれてきた。中国には多くの読者を抱え、一部の書店では東野作品専用のコーナーが設けられている。2017年から3年連続で、中国の「外国人作家長者番付」の首位に選ばれ、2018年の印税収入は4200万元(約10億1540万円)、2019年も約3000万元(約7億2528万円)に達した。

中国の出版社「新経典(Thinkingdom)」によると、2022年時点で同社が刊行した東野作品52タイトルの累計発行部数は2300万部を超えた。こうした高い販売実績は、中国において推理小説が一部の愛好家だけのジャンルではなく、大衆文学として広く受け入れられていることを示している。

東野作品は中国で数多く翻訳・出版され、安定した著作権契約のもとで映像作品にも数多く翻案されている。『容疑者Xの献身』は映画やミュージカルとなり、『ゲームの名は誘拐』は中国ドラマ『十日遊戯』として映像化された。こうした作品を通じて東野圭吾を知った読者も多く、中国での知名度はさらに高まった。

作品の売れ行きの良さから、中国のSNSでは一時、「ベストセラーの帝王」とも呼ばれた。『白夜行』の考察や『悪意』の議論、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の読後感などがインターネット上に数多く投稿され、作品中の名言が流行語となることもあった。「読むスピードが、新刊が出るスピードに追いつかない」と冗談交じりに語る読者も少なくなかった。

中国で東野作品が支持される理由は、読みやすさと濃密な人間ドラマにある。物語としての面白さに加え、文学作品としての価値も高く評価されている。作品には学校や受験、会社など身近な舞台が繰り返し登場し、ごく普通の人びとが直面する道徳的葛藤が描かれる。舞台は日本であっても、高度な都市化の中で中日両国に共通する受験競争や家族関係の変化、階層上昇への不安といった東アジア社会の課題を映し出しており、中国の読者の共感を呼んできた。

また、多くの中国の読者は東野作品をきっかけに日本の本格ミステリーに興味を持ち、松本清張(Seicho Matsumoto)、島田荘司(Soji Shimada)、綾辻行人(Yukito Ayatsuji)、宮部みゆき(Miyuki Miyabe)らの作品へと読書の幅を広げていった。

東野圭吾さんはベストセラー作家であるだけでなく、中日文学交流をつなぐ重要な架け橋でもあった。(c)CNS/JCM/AFPBB News