【8月4日 CNS】「それは不思議な『天路』。人びとのぬくもりを辺境へ届ける道。山はもはや高くなく、道はもはや遠くない――」

青海省(Qinghai)西寧市(Xining)からチベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lhasa)へ向かう列車内では、青蔵鉄道の開通をテーマにした歌曲『天路』が流れていた。2026年7月1日、青蔵鉄道は全線開通から20周年を迎えた。この歌は今も多くの人びとに愛されているが、その背景には交通網の整備にとどまらず、高原地域の発展を支えてきた20年の歩みがある。

鉄道開通以前、チベットへの交通手段は主に道路に限られ、長距離移動や厳しい高原気候の影響で、人や物資の往来は容易ではなかった。こうした状況を打開するため、中国の技術者たちは永久凍土、高寒・低酸素、脆弱な生態系という世界的な難題を克服し、2006年7月1日に青蔵鉄道を全線開通させた。鉄道は交通インフラの整備にとどまらず、チベットと中国国内市場を結ぶ重要な物流・交流ルートとなり、地域間格差の縮小や地域の協調的な発展を後押ししてきた。

開通後は大量輸送による物流コストや輸送ロスが大幅に減少し、20年間で輸送能力や駅、路線網も拡充された。2026年4月までに、チベットを発着する貨物輸送量は累計1億トンを突破し、列車の牽引能力も4000トンまで向上している。

20年前に築かれたのは一本の鉄路だったが、20年後には産業や市場、そして地域が自ら成長する力が育まれた。まず恩恵を受けたのが産業分野だ。低コストで大量輸送が可能な鉄道によって、高原地域の豊かな資源開発が進み、大型エネルギー設備の搬入も可能となった。太陽光発電や水力発電など、再生可能エネルギー産業の集積も加速している。

観光産業も大きく発展した。2005年には年間180万人に満たなかったチベットへの観光客数は、2025年には7000万人へと増加した。観光業の発展は産業構造の高度化を促し、農牧民の雇用や所得向上にもつながり、地域経済を支える重要産業となっている。

経済規模も着実に拡大した。チベット自治区のGDPは2005年の251億2100万元(約6050億3677万円)から、2025年には3000億元(約7兆2254億円)を突破した。鉄道開通の恩恵は、人びとの暮らしにも表れている。農牧民1人当たりの可処分所得は、2005年の2078元(約5万円)から2025年には2万3100元(約55万6361円)を超え、20年間で10倍以上に増加した。

鉄道は産業の発展だけでなく、医療や教育へのアクセスも改善した。かつては通院や進学に多くの時間と費用を要し、悪天候で移動できないことも少なくなかったが、鉄道の開通によって生活圏は大きく広がった。20年間で青蔵鉄道を利用した旅客数は累計4100万人を超えている。

さらに、人材や技術の交流も活発になった。多くの若者が高原を離れて進学・就職し、一方で医療設備や教育施設などの公共サービスも鉄道網を通じて各地へ整備され、地域住民の生活環境は着実に改善してきた。

鉄道の開通は、「チベットブランド」の全国展開も後押しした。かつては生活物資を運び込む役割が中心だった鉄道貨物は、現在ではヤク肉やハダカムギ製品などの特産品を全国へ運ぶ重要な物流手段となっている。チベット発着の貨物輸送量は2006年の36万1000トンから、2025年には831万3000トンへと大幅に増加した。

青蔵鉄道がこの20年間で示したのは、中国の発展を支える力は困難な環境に鉄道を建設する技術力だけでなく、発展から取り残されがちだった地域を全国の発展と歩調を合わせて成長させる力にもあるということだ。

「天路」の歩みはまだ終わらない。青蔵鉄道は今後も、高原地域が全国とともに歩む新たな発展を支える重要な役割を担っていくと期待されている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News