ミナさんが働いていた釜山のあるメイドカフェ。メイドたちが客と同じテーブルに座って会話している=本人提供(c)news1
ミナさんが働いていた釜山のあるメイドカフェ。メイドたちが客と同じテーブルに座って会話している=本人提供(c)news1

【07月28日 KOREA WAVE】10代後半から20代前半の若い女性たちがメイド服を着て客を迎えるメイドカフェ。「萌え萌えキュン」のかわいらしく明るいイメージで人気を集めてきたが、その裏側はどうなっているのだろうか。客はメイドに売春を持ちかけ、未成年者が客の隣に座って酒を注ぐ。客は商品を購入しながら身体的接触を求め、オンラインコミュニティではメイドに対する性的嫌がらせがレビューのように並べられる。疑似的な風俗店へと変質したメイドカフェ、そしてその中でセクハラや売春に無防備にさらされる若い女性たち。その実態を追った。

◇「セックツ」

「なんでお前は稼げないか分かるか? 『セックツ』をやってないからだ」

2025年、釜山・西面のあるメイドカフェ。メイド服姿で接客していたミナさん(仮名・20)は、客のその一言に思わず言葉を失った。接客中、「思っていたほど稼げない」と何気なく悩みを打ち明けると、客は当然のことのように言った。

「セックツをやらなきゃ稼げないよ。大口顧客にまずDMを送ってみな」

ミナさんも「セックツ」という言葉を聞いたことがないわけではなかった。セックツとは――メイドカフェ業界で、メイドと客が性的関係を持つことを指す隠語だ。語源は日本語の「つながり」で、アイドルやコンカフェ業界などでキャストと客が私的・性的な関係を持つことを意味する「つながる」という隠語に由来するとされる。韓国ではこれが転じて「セックツ」と呼ばれ、さらに略して「ツ」と呼ばれることもある。

「メイドカフェで性行為?」と疑問に思うかもしれない。しかし、メイドカフェに頻繁に通う客やメイドたちにとって、「セックツ」はごく馴染みのある言葉だった。客が利用するインターネットコミュニティで「ツ」を検索すると、「ツしたい」という投稿だけでなく、特定のメイドの名前を挙げた性的嫌がらせの投稿が数多く見つかった。

ミナさん自身も働く中で、客から何度も遠回しに「セックツ」を持ちかけられたが、そのたびに断っていた。学生時代から日本のサブカルチャーが好きで応募した仕事であり、性を売る仕事をするつもりはなかったからだ。しかし「性行為をしなければたくさん稼げない」「君みたいな働き方をしているメイドはいない」と客に言われ、頭を殴られたような衝撃を受けた。

固まったミナさんに、客は場を和ませようとこう付け加えた。

「じゃあ露出の多い服を着てみな。この世界で生き残るには露出が必要なんだ。君はいい武器を持っているのに、なんで使わないの?」

あまりにも当然のように言われ、戸惑ったミナさんは笑うことしかできなかった。

ChatGPTを活用したAIイメージ(c)news1
ChatGPTを活用したAIイメージ(c)news1

10代後半から20代前半の女性が多く働くメイドカフェでは、客が性行為、いわゆる「セックツ」を望むケースが非常に多い。性行為でなくても恋愛関係を求めるなど、私的な関係を望む客が、若く社会経験の少ないメイドたちを精神的に追い詰めることもある。

メイド服を着た女性が接客する「メイドカフェ」は、2023年からソウル・麻浦区の弘大入口や釜山・釜山鎮区の西面など都市部に広がり始めた。日本のコスプレ、アニメ、漫画、ファッションなどのサブカルチャーを好む若い女性が主にメイドとして働いている。

当初はメディアでよく知られているように、料理に向かって「おいしくなれ」と呪文を唱える程度の接客だったが、風俗店のような営業形態へと変質する店舗が次々と増えていった。

「セックツ」は、こうした地下化したメイドカフェの実態を象徴する問題だ。基本的に「セックツ」は金銭的な見返りを前提としている。ただし、性行為の直後に金銭を支払う従来型の売春とは異なり、メイドカフェで金を使うこと自体が暗黙の対価となる。つまり、客は「常連になる」と約束する見返りとして性行為を求めるのである。

この業界で「セックツ」が蔓延している背景には、メイドカフェが単なる飲食店のアルバイトとは違い、常連を作り、指名を受けなければ大きく稼げない仕組みがある。大口顧客がチェキ撮影(インスタントカメラでメイドと撮影し、写真を持ち帰るサービス)やライブなどを購入して初めて、メイドにインセンティブが支払われる。

ミナさんは「性行為そのものの対価を受け取るというより、性行為をした客がその後も店に来てチェキをたくさん買ってくれることを前提に『セックツ』をする。珍しいことではない」と話した。

メイドが客の誘いを断ると、「変な店員」扱いされたり、物理的な脅迫や迷惑行為、ストーカー被害を受けたりすることもある。メイドの身体を同意なく触ったり、「どうせ金を払えば一回ぐらいやってくれる子たちなんだろ」と露骨に性行為を求める客もいる。

釜山のメイドカフェで働いていた別のメイド、ハン・ジュヨンさん(仮名・19歳)は2025年、客から「いくら払うから一回しよう」と言われたという。

ジュヨンさんは「風俗店に来たかのように私の身体を触ろうとする客もいたし、嫌だと言っているのに何度も会おうと言ってくる人もいた。“どうせお前たちは金を払えばやる子たちなんだろ”という言葉も聞いた」と話した。

「性行為を望んでいる客はどれくらいいると思うか」。友人と約1年間メイドカフェに通っていたソ・ジウンさん(仮名・21歳)に記者が尋ねてみた。すると、ソ・ジウンさんは「10人中9人は望んでいると思う。メイドカフェに通う常連は、基本的にみんなメイドとの性行為を望んでいる。機会があるかないかの違いだけだ」と語った。

◇「性行為を断りにくい10代の弱さを利用」

さらに大きな問題は、メイドカフェで働く人の多くが10代の未成年者であることだ。実際、ミナさんが働いていたAメイドカフェでは、雇われていたメイドの約半数が未成年だった。ソウルや釜山など主要なメイドカフェのSNSには、あどけない顔立ちの未成年メイドが露出の多い衣装を着た写真が数多く掲載されている。

しかし経営者たちは、客の誘いによって未成年や20代前半のメイドが性行為をしていることを知りながら、黙認している雰囲気だという。

ミナさんは「こうした問題を知らない経営者なんていません。むしろ『あの店はメイドが“セックツ”してくれる店だ』という評判が立てば客が増えるので、歓迎しているような感じです」と説明した。

このような状況では、まだ若く社会経験の少ない女性メイドたちは、成人男性から求められる性的関係を断ることが容易ではない。

さらに、メイドカフェで働くメイドの中には、家庭環境が良くなかったり、経済的・心理的な困難を抱えたりしている人も少なくない。つまり、成人からの性的な誘いから守ってくれる保護者が十分にいないということでもある。

青少年への性暴力防止専門機関「タクティン・ネイル」のイ・ヒョンスク代表は「経済的に弱い立場の青少年は働ける場所も限られており、客からの性行為の要求を断ること自体が難しい。そのうえ、店側が暗黙のうちに性行為を勧める可能性もあり、さらに弱い立場に置かれる。未成年を雇用できるメイドカフェで、酒を注いだり客と会話したりすること自体が労働の一部になっている現状は有害だ」と指摘した。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News