【三里河中国経済観察】「草」から天然ゴムへ 新疆で量産化へ前進
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【7月31日 CNS】中国で最も面積の広い新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)から、新たな成果が伝えられた。6月下旬、ゴムタンポポ(橡膠草)から天然ゴムを抽出するパイロットプラントが本格稼働し、ゴムタンポポの根から規格を満たす天然ゴムの量産抽出に初めて成功した。
今回、研究チームは約20ムー(約1.3ヘクタール)のゴムタンポポを収穫し、乾燥した根約1トンを確保した。加工・抽出を経て、およそ40キロの天然ゴムを生産できる見込みだ。
生産量自体は大きくないが、その意義は小さくない。研究チームにとっても、「草」から「ゴム」への実用化に向けた初めての本格的な成果となった。研究チームは「三里河中国経済観察」の取材に対し、「今回の成果は、研究室から市場へ向かう技術実証であり、新疆で進めてきた研究が机上の理論ではなく、実際に事業化可能な技術であることを証明した」と語った。
なぜ、この成果が注目されるのか。天然ゴムはタイヤや電線、靴底、おもちゃなど、身近な製品に欠かせない素材だ。しかし、中国では天然ゴムは長年、供給の制約を受ける戦略物資の一つとなっている。
現在、世界で商業利用されている天然ゴムの約99%は、ブラジル原産のゴムノキから生産されている。熱帯雨林に生育する樹木であるため、気候や気温、病害虫の影響を受けやすく、感染症や異常気象が発生すれば世界の供給網に影響を及ぼす可能性がある。中国では天然ゴム消費量の80%以上を輸入に依存しており、航空機用タイヤなど高性能製品向けの天然ゴムは、ほぼ全面的に輸入に頼っている。
この問題は、科学技術だけでなく国家戦略にも関わる課題となっている。中国科学院遺伝・発生生物学研究所の范秀麗(Fan Xiuli)氏は、航空宇宙、鉄道交通、海洋設備、防衛産業などの分野では、航空機用タイヤや重要なシール材、防振部品などに天然ゴムが不可欠な材料であり、代替が難しいと指摘している。
このため、研究者たちは天然ゴムの「第二の供給源」の開発を進めてきた。天然ゴムを合成できる植物は世界に2000種以上存在するが、工業利用できるのはブラジルゴムノキ、グアユール(銀膠菊)、そしてゴムタンポポの3種類に限られる。
「草からゴムができるのか」と驚く人も少なくない。実際には可能であり、生産能力も向上している。中国科学院遺伝・発生生物学研究所と崖州湾国家実験室の李家洋院士の研究チームは、ある重要な遺伝子の発現を抑制することで、ゴムタンポポの天然ゴム含有率を約30%まで高め、野生種の4倍以上に引き上げることに成功した。1株当たりのゴム生産量は国際的な先進水準に達しているという。
ゴムタンポポの産業利用は大きく前進している。その理由は三つある。第一に、生育が早いことだ。植え付けた年に収穫・天然ゴムの抽出まで行うことができ、高密度栽培や機械化にも適している。ゴムノキのように収穫まで6~8年待つ必要はない。
第二に、品質が高いことだ。根に含まれる天然ゴムは3~12%で、その化学構造はブラジルゴムノキ由来の天然ゴムと同じであり、高い弾性や耐摩耗性、耐衝撃性を備え、工業用途にも利用できる。
第三に、環境への適応力が高いことだ。耐寒性、耐乾燥性、耐塩害性、耐やせ地性に優れ、温帯や冷温帯の塩害地などでも栽培できる。「草」から「ゴム」への転換は、天然ゴム生産が熱帯地域に限定されるという従来の制約を打ち破りつつある。
新疆の研究チームは、研究室での成果を実証段階へと進めた。今回稼働したパイロットプラントは、新疆ウイグル自治区農業科学院作物研究所のゴムタンポポ研究チームが、北京化工大学(Beijing University of Chemical Technology)、石河子職業技術大学(Shihezi Engineering Technical College)と共同で整備したものだ。
新疆が選ばれた理由について、研究チームは「新疆はゴムタンポポの原産地であり、塩害地が広く、日照や気候、土壌条件にも恵まれ、産業化の可能性が大きい」と説明している。
さらに、長年の研究の蓄積もある。自治区農業科学院初代院長の涂治氏はゴムタンポポに関する専門書を著し、新中国成立後には第一世代の研究者が新疆に試験研究拠点を設立した。現在は若手・中堅・ベテラン研究者による博士チームが技術開発を進め、新たな技術体系を構築している。
今回の成果により、遺伝資源の収集から品種改良、大規模栽培、天然ゴムの抽出、副産物の利用まで、一連の産業チェーンが初めて構築された。生産された天然ゴムは近く実用化される予定で、雪道用タイヤや医療用保護用品、食品用ゴム製品などへの利用が見込まれている。
もっとも、研究室から産業化までには、なお課題も残る。研究チームは、高収量品種の育成や栽培技術の確立、天然ゴム抽出コストの低減など、引き続き技術開発を進める方針だ。
一株の草から始まる挑戦の先にあるのは、戦略物資の安定供給という課題である。戦略物資の自立性、安全性、自主性を高めることが、科学技術の主導権を自ら握ることにつながるとしている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News