【三里河中国経済観察】「3つの圏」が示す中国のイノベーション力
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【7月30日 CNS】この夏、中国は米国から一つの称号を奪還した。中国のスーパーコンピューター「霊晟(Ling Sheng)」が、スーパーコンピューター性能ランキング「TOP500」で世界首位となった。
これは、中国のイノベーション力がさらに高まっていることを示す最新の事例だ。近年、中国のイノベーションが勢いを増しているとの声は少なくない。その継続的な技術革新を支える原動力はどこにあるのだろうか。
その答えは、李強(Li Qiang)首相が2026年夏季ダボス会議で紹介した「3つの圏」にあるのかもしれない。それは「長江デルタ電子情報1時間イノベーション圏」「重慶(Chongqing)バイク1時間産業圏」「深セン(Shenzhen)ロボットバレー30分サプライチェーン圏」の3つだ。
一見すると単なる地域産業圏のようだが、この3つの圏からは数多くのユニコーン企業が誕生している。中国国家発展改革委員会・国家情報センターの魏琪嘉(Wei Qijia)研究員は、「三里河中国経済観察」の取材に対し、「3つの産業圏は地域も産業も異なるが、階層ごとに役割を分担しながら相互に補完し合う産業発展の体系を形成しており、中国の産業クラスターが専門化・差別化・特色化を進めてきたことを象徴している」と語った。
その構造を見ると、3つの圏はそれぞれ異なる役割を担いながら相互に支え合い、中国の産業イノベーションの循環を形成している。まず、長江デルタ電子情報1時間イノベーション圏は、中国の産業高度化を支える「頭脳」といえる。基礎研究から技術開発、成果の事業化までを一体化し、「ゼロからイチ」を生み出す役割を担う。
この地域には一流大学や研究機関、研究開発チーム、先端テクノロジー企業が集積している。優れた立地条件と産学連携の仕組みにより、基礎研究から技術開発、実用化までをシームレスにつなぎ、試行錯誤にかかる時間やコストを大幅に削減している。ここで生まれた技術は全国の先端産業へと供給されている。
次に、重慶バイク1時間産業圏は、中国のものづくりを支える「胴体」に当たり、「イチから多数」への量産化を担う。その代表例が、新興バイクメーカー「張雪機車(ZXMOTO)」の躍進だ。創業間もない企業が世界トップレベルのバイクレースで存在感を示せた背景には、重慶の成熟した産業エコシステムがある。
「バイクの都」として知られる重慶市には、完成車メーカーや部品メーカーが数百社集積している。エンジン制御や精密ギア、フレーム、サスペンションなどの主要部品から、外装、車両セッティングまで、必要なリソースを1時間圏内で調達できる。設計、試作、性能試験、量産までの全工程を地域内で完結できる体制が整っている。
最後に、深センロボットバレー30分サプライチェーン圏は、中国の産業競争力を支える「末端神経」として、圧倒的なスピードで産業を支えている。この地域では、サプライチェーンの企業が近接して集まり、研究開発から試作、試験、量産までを切れ目なく進めることで、高速な製品開発サイクルを実現している。
こうした高密度で効率的な産業エコシステムは、先端技術の迅速な実用化と改良、アップグレードを可能にし、他国には再現が難しい「中国製造」の強みを築いている。これが中国の先端製造業が競争力を維持する重要な要因となっている。
こうした産業圏は3つに限らない。例えば、長江デルタには「新エネルギー車4時間産業圏」も形成されている。これらの産業圏を理解することは、中国の産業イノベーションの全体像を理解することにつながる。魏氏は、長江デルタ電子情報1時間イノベーション圏は技術開発や成果の実用化を担う先端イノベーションの拠点であり、重慶バイク1時間産業圏は産業集積を生かして製造業の競争力を高め、深センロボットバレー30分サプライチェーン圏は高効率な供給体制によって新興産業の急速な発展を支えていると説明する。
では、この3つの圏は中国にとってどのような意味を持つのか。魏氏は、これらの産業圏が研究開発、生産、サプライチェーンを一体化し、新たな市場主体を育成するとともに、新たな質の生産力を生み出し、産業チェーンとサプライチェーンの強靱性と競争力を高めていると指摘する。
3つの産業圏は、中国の産業の質の高い発展を支える重要な基盤となっている。多くのハイテク企業や「専精特新(専門化・精密化・特色化・新規性)」の中小企業を生み出し、世界中のイノベーション資源を中国へ引き寄せている。
では、世界にとってはどのような意味を持つのだろうか。こうした産業エコシステムによって、中国は世界のイノベーション実験場となりつつある。現在では、多くの外資系企業が「中国で生産する」から「中国で創造する」へと戦略を転換している。
中国に研究開発センターや地域本部を設立し、中国のイノベーションチェーンや産業チェーンへ深く参画する外資企業は増えている。2025年には、科学技術研究・技術サービス分野で新設された外資企業は1万4000社となり、前年より27.2%増加した。
メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)のオラ・ケレニウス(Ola Kallenius)会長は「三里河中国経済観察」の取材に対し、「従来の『中国で、中国のために』という研究開発戦略は、『中国で、世界のために』へと進化した。中国の研究開発チームはドイツや世界各地のチームと緊密に連携し、中国のイノベーション環境と先端テクノロジー企業との協力を通じて、中国市場だけでなく世界市場にも価値を提供している」と述べた。
中国では、外資企業は市場の成長による恩恵だけでなく、イノベーションによる恩恵も享受できる。研究開発から試作、量産までを支えるパートナーを迅速に見つけることができ、イノベーションをより効率的に進められる。
魏氏は、中国独自の産業クラスター発展モデルは、世界の産業協力に成熟したモデルを提供するとともに、安定的かつ高効率な供給能力によって世界のサプライチェーンの安定と世界経済の回復を支え続けていると指摘した。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News