[KWレポート] 日韓ビジネス仕事人(11) ニューヨークの法からアートへ…カルチャーの仕掛け人が語る「スピード感」&「新境地」
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【07月20日 KOREA WAVE】韓国発のカルチャーが世界で存在感を高めるなか、アートやIPビジネスの分野でも新たな動きが加速している。その中心で、日本と韓国、そして世界をつなぐ存在として注目されているのが、ソン・インジ(INJI ALEXIA SONG)さん。グローバルIP・カルチャービジネスを展開する「AAO Korea」と、米ニューヨーク発のグローバル・カルチャーメディア「Complex」の二つの代表を務めるビジネスパーソンだ。
ニューヨークで法学を学び、コンサルタントとして企業の海外進出を支援したのち、2014年にはギャラリスト、アートディレクターに転身。若手アーティストの発掘・育成に取り組みながら、日韓をはじめグローバルにカルチャービジネスを展開している。
ソン・インジさんの独自のキャリアと仕事における哲学、アーティストを見る基準、そして日韓カルチャーの未来について聞いた。【KOREA WAVE編集部 生島マキ】
――現在のお仕事について教えてください。
「『Complex』は、米ニューヨークで始まったカルチャーメディアで、ファッション、アート、音楽、スニーカー、エンターテインメントなど、さまざまな文化を扱うプラットフォームです。メディアにとどまらず、展示、コンベンション、イベントなどを通じて、カルチャーそのものを体験できる場をつくっています。代表的な例が、ファッション、音楽、アート、スニーカー、フードが融合した大型カルチャーフェスティバル『ComplexCon』です。『AAO Korea』は、香港を拠点とするIPホールディング企業ネットワークの一員として、エンターテインメントおよびカルチャービジネス全般を展開しています」
――ニューヨークで法学を学んだ後、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。
「2008年に米国のロースクールを卒業した後、ニューヨークでコンサルティング業務に携わってきました。専攻は金融・企業法務で、主に韓国企業が米国に進出する際の法人設立や金融構造の設計など、ビジネスの基盤づくりを支援していました。もともと米国、特にニューヨークという街に憧れがありました。実際に暮らしてみると、ニューヨークは想像以上に文化的な刺激にあふれた都市でした。ファッション、アート、音楽、フードなど、あらゆるカルチャーが自然に共存し、強いエネルギーを生み出していたんです」
「その環境のなかで、次第に『ビジネスとしてカルチャーに関わってみたい』という思いが大きくなっていきました。もちろんアートやファッションが好きだったこともあります。法律やコンサルティングの仕事を通じて企業の成長を支える楽しさもありましたが、同時に、自分が本当に情熱を注げる分野は何なのかを考えるようになりました。そして、その答えがカルチャーとアートだったんです」
――アートギャラリーの運営や新進アーティストの育成に進まれたきっかけは?
「2014年に韓国へ戻ったとき、ギャラリーを運営していた友人から『経営パートナーとして一緒にやってみない?』と誘われました。法務コンサルティングとはまったく違う世界で、自分のキャリアを大きく変える選択でもあり、簡単な決断ではありませんでした。ただ、もともとファッションやアートへの関心が強く、『今挑戦しなければ後悔するかもしれない』という思いもありました」
「実際に現場に入ってみると、韓国のアート市場の構造がよりはっきりと見えてきました。新進、あるいは無名のアーティストたちが活動できる場が、まだ限られていたんです。当時は、すでに評価が確立された作家や有名アーティストに関心が集中する雰囲気がありました」
「一方で、ニューヨークには新しい才能を発掘し、成長させ、世の中に紹介していくシステムが整っていました。その違いを知っていたからこそ、『韓国でも、まだ誰も十分に挑戦していない領域に挑みたい』と思えたのです。それがGallery STANを設立し、新進アーティストの育成に力を入れるようになりました」
――日本との縁を教えてください。
「日本での活動の多くは、現地の関係者の皆様からのご提案がきっかけで始まりました。『PARCO MUSEUM』での展示、ギャラリー企画、『X-LARGE』との協業、日本のアーティストたちとのプロジェクトなど、さまざまなご縁を通じて多くのプロジェクトが実現しました。日本市場はアートやカルチャーへの理解が深く、作品そのものの価値をとても丁寧に見てくださる印象があります。ただ、アートをビジネスとして発展させる部分では、まだ成長の余地があると感じています」
「実はこの点は、韓国も似ています。一度、日本の若い作家とアート釜山のアートフェアでお会いし、話す機会がありました。その方は、日本で活動することは簡単ではなく、認められる機会も多くないと話していました。その作家は韓国のアートシステムに魅力を感じていて、一緒に何かをやってみたいと提案してくださったんです。日本には、まだ見えない壁があると感じている方も少なくありません。だからまずは韓国から始めて、より多くの人に作品を見せたいとおっしゃっていました。実際にその方の作品はとても素晴らしく、現在も積極的に一緒に活動しています」
――日本と韓国では、アーティスト育成やコンテンツ制作にどのような違いがあると感じていますか。
「アート業界に限って言うと、日本には今も徒弟制度的なシステムや、比較的保守的な育成方法が残っている印象があります。もちろん、それは否定的な意味ではありません。基礎をしっかり積み上げ、長い時間をかけて完成度を高めていく強みがあるからです。一方、韓国はこの10年で環境が大きく変わり、新しいアーティストやクリエイターたちが挑戦しやすい土壌がつくられてきました。トレンドに対する感覚が非常に早く、変化への対応スピードも速いです」
「コンテンツ制作においても、日本は企画から実行、成果が出るまでをじっくり育てていく傾向があります。一方で韓国は、企画から実行、改善までのサイクルが非常に速いです。体感としては、日本より1.5倍以上速いと感じることもあります。どちらが優れているという意味ではありません。それぞれに異なる強みがあると思っています」
――韓国エンターテインメントが世界的に受ける理由は何だと思われますか。
「最大の強みは、伝統と現代、ローカルとグローバルを同時に深く理解している点だと思います。韓国のクリエイターたちは、自国の文化的アイデンティティを大切にしながら、それを世界中の人々が共感できる形に変える力を持っています。ローカルでありながら、同時にグローバルでもある。このバランス感覚が非常に優れています」
「また韓国では、音楽、ファッション、アート、ゲーム、テクノロジーなど、異なる産業が有機的につながっています。ひとつの分野で終わるのではなく、さまざまな領域を行き来しながら新しい価値を生み出しているのです。この構造そのものが、韓国カルチャーの強力な競争力だと思います」
(c)KOREA WAVE/AFPBB News