【三里河中国経済観察】中国のオープンソースAIが算力競争を変える
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日撮影・資料写真(c)CNS/楊鬱然
【7月24日 CNS】上海市・黄浦江のほとりで7月17日、「2026世界人工知能大会(WAIC)および人工知能グローバル・ガバナンス・ハイレベル会議」が開幕した。1100社を超える企業が出展し、300点を超える製品が世界初公開された。大会の規模、世界初公開製品数はいずれも過去最多を更新した。
その同じ日、ニューヨーク・ウォール街では投資家に動揺が広がった。ハイテク株中心のナスダック100指数は前日比1.5%安で取引を終え、約1か月ぶりの週間最大下落率を記録した。フィラデルフィア半導体指数も6月の高値から20.2%下落し、テクニカル上の弱気相場入りとなった。
上海でAI大会が開かれる一方、米国株は下落した。ウォール街のアナリストの間ではさまざまな議論が交わされたが、繰り返し取り上げられたのが「Kimi K3」だった。Kimi K3は、中国AI企業「月之暗面(Moonshot AI)」が大会開幕前日に発表した新世代のオープンソースモデルで、パラメーター数は2兆8000億と世界最大規模を誇る。プログラミング能力を評価するブラインドテストランキングでは1679点を獲得し、首位となった。
中国では、このモデルは技術的ブレークスルーとして受け止められ、利用者が急増したことで計算資源が不足し、7月19日夜には月之暗面が一般ユーザー向けの新規有料サービスの受付停止を発表した。
一方、米国ではこれが市場の不安材料となった。ウォール街ではこれを「Kimiモーメント」と呼び、前年の「DeepSeek(深度求索)モーメント」と対比している。両者に共通するのは、中国のオープンソースAIモデルが極めて低コストで米国の最先端モデルに迫り、あるいは上回る性能を示したことで、これまでウォール街で数兆ドル(約数百兆円)規模の企業価値を支えてきた「AI計算資源競争」の前提が見直され始めたという点だ。
動揺しているのはウォール街だけではない。7月15日、米連邦準備制度理事会(FRB)の ケビン・ウォーシュ(Kevin Maxwell Warsh)議長は就任後初めて議会で証言し、中国のAIを厳しく批判した。同氏は米中のAI競争を「代理戦争」と表現し、中国を「急速に追い上げる競争相手」と位置付けた。
資本市場の変動から政府高官の発言まで、米国は落ち着きを失っている。こうした動揺の背景には、三つの要因があるとみられる。
第一は、技術的優位性の揺らぎだ。現在、中国は世界のAI特許の約60%を保有している。中国工業情報化部の最新データによると、今年上半期には一定規模以上の製造業企業におけるAI技術の導入率が30%を超え、オープンソース大規模モデルの世界累計ダウンロード数は100億回を突破した。
特許件数、産業への浸透率、利用者数など複数の指標は、中国のAI発展がすでに研究段階を超え、実用段階へ進んでいることを示している。このため、米金融会社「サイバート・ファイナンシャル(Siebert Financial)」の最高投資責任者(CIO)マーク・マレク(Mark Malek)氏は、「米中の最先端AIの間にどれほど差があったとしても、その差は現在では大幅に縮まっている」と述べた。
技術格差の縮小は、市場の論理も変えつつある。米企業はAIインフラに数兆ドル規模の投資を行ってきたが、中国製モデルが有力な代替手段となれば、それらの投資価値は改めて問われることになる。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のパートナーで株式部門責任者のリッチ・プリボロツキー(Rich Privorotsky)氏は、「AI計算資源の拡張を追い続ける時代は終わりに近づいている」と警鐘を鳴らした。
さらに根本的な問題は、市場独占の崩壊だ。米国はこれまで、GPU輸出規制やクローズドモデルの運用、アクセス制限など一方的な措置を講じ、市場での優位性を維持しようとしてきた。その結果、多くの発展途上国は「ブラックボックスAI」の受け手にとどまらざるを得なかった。
一方、中国のAIモデルは性能だけでなく、コストパフォーマンスにも優れている。Kimi K3は複数の公開ベンチマークでオープンAI(OpenAI)やアンスロピック(Anthropic)の最先端モデルを上回る一方、運用コストは同クラスの米国製モデルより約40%低いとされる。
市場もその変化を反映している。主要AIモデル統合プラットフォーム「OpenRouter」では、中国製大規模モデルの週間利用回数が11週連続で米国を上回り、世界首位を維持している。中国工業情報化部によると、世界的なAI需要の拡大を背景に、今年上半期の人民元建て集積回路と電子部品の輸出額は前年同期比でそれぞれ88.7%、62.6%増加した。
さらに深い不安は、AIルール形成の主導権を失うことへの懸念である。AIという技術革新を前に、中国と米国は異なるガバナンスの方向性を示している。米国はAIを地政学的競争の手段として位置付け、最先端AIモデルを軍事利用にまで結び付けている。
これに対し、中国は異なる道を歩んでいる。「グローバルAIガバナンス構想」の提唱、「AIグローバル・ガバナンス行動計画」の発表、「AIプラス」国際協力イニシアチブや「AI能力構築普及計画」の実施、さらには世界AI協力機構の設立提案などを通じ、開放と協力を軸としたAI発展を推進している。
中国国家発展改革委員会・イノベーション駆動発展センターの霍福鵬(Huo Fuoeng)主任も取材に対し、「中国は一貫して世界のAIガバナンス協力を推進する確固たる支持者である」と述べた。中国は橋を架け、米国は壁を築く。中国は人間中心を重視し、米国は利益を優先する。中国は開放と共有を掲げ、米国は規制を強化する。中国は新たな機会を提供し、米国は技術覇権を追求している。
米国の不安が強まるほど、中国の進む道が正しかったことを示しているとの見方もある。関連調査によると、米国のAIスタートアップの約80%が、中国のオープンソースAIモデルを推論やファインチューニングに利用しているという。
今回の技術革新は人類の未来を左右するものであり、高い壁で囲い込むだけでは道は開けない。世界が協力を深め、成果を共有することこそが、次の時代を切り開く唯一の道であるとしている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News