【三里河中国経済観察】フードデリバリー「補助金競争」に明確な規制へ
このニュースをシェア
【7月23日 CNS】「0元購入」「18元(約430円)以上で18元引き」「1銭でデリバリー注文」――。通常の販促の範囲を超えた長期間・高額の補助金キャンペーンに対し、中国当局が明確な規制を打ち出そうとしている。
6月17日、中国国家市場監督管理総局は「フードデリバリープラットフォームの補助金行為に関する10項目の規範(意見募集案)」を公表した。「デリバリー10項目」では、プラットフォームによる長期間・高額の補助金で市場秩序を乱すことを禁止したほか、出店事業者に対し補助金キャンペーンへの参加を強制、または実質的に強制することや、資本力を利用した独占や不当競争も禁止するとしている。
近年、中国のフードデリバリー業界では各社が数百億元から1000億元(約2兆3910億円)規模の補助金投入を相次いで発表してきた。しかし、プラットフォームによる「資金投入」と消費者の「格安購入」で盛り上がる一方、その裏ではさまざまな問題が浮き彫りになっている。
中小飲食店は価格決定の自由を失い、利益を圧迫され、一部では赤字注文を受けざるを得ないケースも発生している。また、配達員は注文の急増とアルゴリズムによる厳しい時間管理に追われ、交通違反が常態化するなどの問題も指摘されている。過度な補助金競争は、本来の価格形成メカニズムをゆがめ、市場秩序を混乱させている。
こうした「補助金競争」に歯止めをかける動きはすでに始まっている。2025年以降、当局は淘宝閃購(Taobao Flash Shopping)、美団(Meituan)、京東(JD.com)などの主要プラットフォームをたびたび呼び出して行政指導を実施。2025年12月には国家標準「フードデリバリープラットフォームサービス管理基本要求」が施行され、2026年1月には国務院反独占・反不正競争委員会弁公室が業界の競争状況に関する調査・評価を開始した。
行政指導や調査、制度整備を経て、フードデリバリー業界に対する監督体制は着実に強化されている。これまでの行政指導や注意喚起が中心だった対応に比べ、「デリバリー10項目」は補助金競争の問題点を具体的に示し、より実効性の高いルールを提示した点が特徴だ。
武漢大学(Wuhan University)競争法・競争政策研究センターの孫晋(Sun Jin)主任は、「今回の規範は単に規制を強化するものではない。『低価格至上主義』というビジネスモデルそのものを見直し、健全な市場競争を促す方向へ監督の重点が移ったことを示している」と指摘する。
同氏は、「デリバリー10項目」により価格シグナルのゆがみを是正し、大手企業が資本力や内部補助を利用して価格競争を続ける構図を改めることで、大手・中小プラットフォームがより公平な条件で競争できるようになるとともに、競争のしわ寄せが加盟店や配達員へ一方的に及ぶことも防げるとみている。
業界全体で見ると、プラットフォーム各社が補助金競争に陥る背景には、市場が成熟期に入り、新たな成長の柱を見いだせていないことがある。資金を投じて利用者を獲得する手法は技術革新への投資を圧迫し、業界の質の高い発展を妨げる要因にもなっている。
今回の規範は、「プラットフォーム経済では競争そのものを否定するのではなく、法の枠組みの中で秩序ある競争を行うべきだ」という明確なメッセージでもある。公正な市場秩序や業界の健全な発展を犠牲にして短期的な利用者獲得を目指す競争は、もはや認められない方向へ向かっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News