【7月17日 AFP】フィリピン16日、同国を日米という主人に南シナ海で領有権を主張するよう強制される猿として描く中国国営メディアが投稿したアニメ動画について、人種差別的だと激しく批判した。

国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は、南シナ海での中国の海洋進出をめぐり、中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」について「法的根拠がない」と断定している。それにもかかわらず、中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張し、南シナ海でフィリピン船としばしば衝突している。

中国国営英字紙チャイナ・デーリーがフェイスブックに投稿した1分間の動画では、フィリピンの伝統的なフォーマルシャツ「バロン」を着た臆病な猿が、船上のカラオケステージに押し出される。

猿がフィリピンと日本が5月に台湾東方海域における海洋境界画定交渉の開始で合意したことに関する中国側の立場に同意するかのような歌詞を歌い始めると、「曲が違う!」との声が上がり、「南シナ海仲裁判断」とラベルの貼られた紙が手渡される。

その後、米国と日本の国旗が描かれた腕が猿をカタパルトにセットし、放水銃に向けて飛ばす。放水銃は、中国海警局がフィリピンの海軍艦や漁船との衝突で以前に使用した。

これに対しフィリピン沿岸警備隊のジェイ・タリエラ報道官は16日のX(旧ツイッター)投稿で、この動画を人種差別的だと猛烈に批判。動画から切り出した静止画を共有し、チャイナ・デーリーの「あからさまな人種差別」を非難した。

タリエラ氏は投稿で、「現代において人種差別は許されない。他民族を貶めることを意図した人種差別は糾弾されるべきものだ。フィリピン人は猿ではない!」と述べた。

タリエラ氏は別途AFPの取材に応じ、「フィリピン人を猿として描くために、このAI(人工知能)生成動画を作成したことを正当化できる理由はないと思う」と述べた。

AFPは在フィリピン中国大使館に電話取材を試みたが、回答は得られなかった。

フィリピンは12日、南シナ海に関する比中仲裁判断の10周年に際し、日本、オーストラリア、カナダ、エストニア、ドイツ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ニュージーランド、ルーマニア、スロベニア、英国、米国の13か国との共同声明を公表した。

共同声明は、「10年前の仲裁裁判所による判断は重要なマイルストーンであり、仲裁裁判所が扱った海洋権益及び主張に関して、中国とフィリピンとの間において最終的な、法的に拘束する決定的なものであることを再確認する」「われわれは、『歴史的権利』に基づくものを含む、南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がないという仲裁裁判所の判断を再確認する」としている。

中国政府は、2016年の比中仲裁判断は無効だとの主張を繰り返しており、共同声明を中国を中傷することを目的とした「事実の歪曲(わいきょく)」だと非難した。(c)AFP