香りが暮らしを彩る 中国で「嗅覚経済」が拡大
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【7月21日 CNS】朝はシダーウッドのボディソープで気分を高め、渋滞中は車内のアロマで気持ちを落ち着かせ、夜遅くの仕事中には木の香りのお香で心を整える――。いま、中国では「嗅覚経済」が人びとの暮らしに浸透している。
香水を購入する人も、「人に好印象を与えるため」ではなく、「自分の気持ちを整えるため」に選ぶケースが増えている。中国の調査機関「艾媒諮詢(iiMedia Research)」によると、中国の香水市場規模は2029年に515億元(約1兆2323億円)に達し、世界市場の成長をけん引する存在になると予測されている。
香水愛好家の段婉彤(Duan Wantong)さんは、大学時代から集めた香水が20本を超える。「雪の日は清涼感のある『シルバー マウンテン ウォーター』、雨の日は柔らかな印象の『ミラクル スカイライト』、休日は爽やかな『レイジー・ウィークエンド』を使います。香水はそれぞれ異なる思い出や気持ちを運んでくれる、『別世界への扉を開く鍵』のような存在です」と話す。
人びとの間で心のケアや住環境への関心が高まる中、疲労や不安を和らげる空間用フレグランスも人気を集めている。ディフューザーストーンやアロマキャンドル、ルームスプレー、スマートディフューザーなどが、空間づくりの定番アイテムとなっている。
中国のEVメーカー、小鵬汽車(Xpeng)は、新型「MONA L03」にスマートフレグランス機器を後付けできる機能を採用。車内アシスタント「小P」と連携し、シーンに応じて香りの種類や強さを調整できる。
世界では、高級ホテルやテーマパークが独自の香りでブランドイメージを演出する手法はすでに一般的だ。リッツカールトンホテル(Ritz-Carlton Hotel)やシャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツ(Shangri-La Hotels and Resorts)、ウェスティン・ホテルズ&リゾーツ (Westin Hotels & Resorts) はブランドごとの香りを採用し、ユニバーサル・スタジオ(Universal Studio)やディズニーランド(Disney Land)では、シーンごとに異なる香りを演出して没入感を高めている。
洗剤やシャンプーなどの日用品も、単なる洗浄用品から「香りを楽しむアイテム」へと変化している。アディダス(Adidas)や中国の老舗ブランド「六神」、日用品大手「立白(Liby)」をはじめ、多くのブランドが香りを商品の大きな付加価値として打ち出している。
立白は、フランス・グラース産のバラ精油を使用した「香水レベルの洗濯用洗剤」を発売。ディオール(Dior)の香水「ジャドール」の調香師として知られるフランスの調香師、カリス・ベッカー氏を起用し、手頃な価格で高級香水のような香りを楽しめる商品として注目を集めている。
SNSでは、「香水をつけるよりも、シャンプーや柔軟剤の自然な香りの方が好き」「ラベンダーのシャンプーや桃ミルクの柔軟剤が大学生活の小さな幸せだった」といった声も見られる。「嗅覚経済」は、ヨガや瞑想、SPA、睡眠関連サービスとの融合も進んでいる。昨年、上海で開かれたヨガイベントでは、天然精油を配合したアロマパッチが配布され、参加者は衣服やヨガマットに貼ることで香りを楽しみながらレッスンを受けた。
参加者の一人は、「精油の香りで呼吸に集中しやすくなり、優しく包み込まれるような感覚になった」と感想を語った。
近年は、「嗅覚経済」を支える科学的な研究も進んでいる。2026年中国香料香精科学技術大会では、上海応用技術大学(Shanghai Institute of Technology)の柯勤飛(Ke Qinfei)教授が「香りと健康」を軸とした新たな研究理念を提唱。マルチオミクス解析やAI技術を活用し、香り成分が感情や睡眠、代謝に与える作用の仕組みを解明することで、中国の香料産業を経験重視から科学的根拠に基づく健康志向へ転換する取り組みが進められている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News