【7月22日 東方新報】「実験室」と聞くと、顕微鏡やアルゴリズムが並ぶ理工系の研究施設を思い浮かべる人が多い。しかし、人工知能(AI)の発展に伴い、人文・社会科学でもデータとテクノロジーを活用した新たな研究が進み始めている。浙江省(Zhejiang)では文系実験室の整備を進め、従来の研究の枠組みを大きく変えようとしている。

浙江大学(Zhejiang University)芸術・考古画像データ実験室では、古画を高精細データとして記録し、文化財の保存や研究に活用している。浙江伝媒学院の国際発信インテリジェントコンピューティング実験室では、中国各都市の国際発信力をデータで分析し、その効果を可視化している。浙江音楽学院のオペラ学実験室では、音楽や演劇、美術などを融合させた新たな研究と創作が行われている。

2024年、浙江省教育庁は省内初となる大学文系実験室10施設の整備を決定し、その後、一部を哲学・社会科学の試験実験室に認定した。テクノロジーを人文学に取り入れ、新たな研究モデルを構築することが狙いだ。

浙江大学では1997年から文化財のデジタル化に取り組み、長年の研究を通じて古画のデータ保存や活用技術を確立してきた。一方、浙江音楽学院では、オペラは音楽なのか演劇なのかという学問的課題を創作と研究の両面から探究。浙江伝媒学院では、国際発信の成果や課題をデータに基づいて分析している。

こうした取り組みに共通するのは、テクノロジーを使って研究対象をより精密かつ客観的に捉えることだ。また、文系と理工系の学生が共同研究を行うなど、学問分野を超えた連携も進んでいる。重要なのは異なる分野を寄せ集めることではなく、共通の課題を軸に新たな知見を生み出すことである。

その成果は社会にも広がりつつある。浙江伝媒学院は中国都市の国際発信力に関する報告書を継続的に公表し、浙江省内の大学ではAIやデジタル技術を活用した人文・社会科学研究が活発化している。学生にとっても、専門分野を越えて研究に参加できる環境が整いつつある。

一方で、学際研究に適した評価制度の整備や、人文学研究に必要な時間と急速に進歩するテクノロジーとのバランスなど、課題も残されている。それでも浙江省の取り組みは、文系を理系へ近づけることではなく、人文学にデジタル技術を取り入れながら、人間だからこそ向き合える本質的な問いを追究する新しい研究のあり方を示している。(c)東方新報/AFPBB News