1日、現代自動車・起亜の南陽研究所で公開された高性能ドライビングシミュレーター(c)news1
1日、現代自動車・起亜の南陽研究所で公開された高性能ドライビングシミュレーター(c)news1

【07月08日 KOREA WAVE】高さ5メートル、画角240度に達する巨大な曲面スクリーンの前に、ジェネシスの準大型セダン「G80」の前席内部を再現したコックピットが床のレールにつながり、空中に浮かんでいた。スクリーンには南陽研究所の走行試験場が広がった。

走行評価が始まると、画面内の道路が流れ始める。研究員がステアリングホイールを左右に切ると、コックピット全体が左右に動いた。速度抑制帯を越える際には上下に揺れ、アスファルト道路を外れて粗いセメント路面に入ると、タイヤの摩擦音や路面の細かな振動までそのまま伝わった。

韓国京畿道華城にある現代自動車・起亜の南陽研究所で1日公開された高性能ドライビングシミュレーター。約1年間の試験運用を経て、2月に研究所へ導入された。このシミュレーターが報道陣に公開されたのは初めてだ。

走行性能開発チームのチョン・ピリョン責任研究員は「実車製作なしでも新車を開発できる方法を、この10年間悩み続けた成果。道路上の運転状況を仮想環境に再現し、車両の走行性能を評価できる装置」と説明した。

ハードウェアには英国の機器メーカー、アンシブル・モーションの「デルタシリーズ」を導入した。前後、左右、上下の直線運動に加え、ロール、ピッチ、ヨーの回転運動まで、計6種類のコックピットの動きを精密に再現する。270度の曲面スクリーンは、4Kの超高解像度と240ヘルツのリフレッシュレートで鮮明かつ滑らかな映像を提供する。

仮想走行に使われる道路関連ソフトウェアは、南陽研究所が蓄積したデータで高度化した。チョン責任研究員は「数カ月間、欧州、北米、豪州など各地の道路数百キロをライダーで1ミリ単位にスキャンした。他の完成車メーカーの1センチ単位のスキャンでは感じられなかった路面の細かな振動まで再現した」と強調した。

ただ、テラバイト級の道路データを一度に読み込むと通信に過負荷が発生する。南陽研究所はこれを解決するため「地形サーバー」方式を適用した。仮想走行位置周辺のデータだけをリアルタイムでやり取りし、停止や遅延のない自然な駆動を可能にした。

シミュレーターが新車開発に本格活用されれば、開発速度はさらに速まる見通しだ。チョン責任研究員は「実車テストでは実験値を得るため関連部品を交換する必要があるが、シミュレーターではソフトウェア上の設定値を変えればよい。実車テストだけなら1~2カ月かかっていた評価期間が、1~2週間に短縮される」と話した。海外の現代自動車・起亜研究所とデータをリアルタイムで共有し、グローバル共同開発も可能になる。

車両の各種部品を電子的に制御する制御機(ECU)の検証にも仮想空間が使われている。別の研究棟には、車両構造のテストベンチ上に配線、制御機、電装部品をそのまま接続した「ワイヤーカー」が置かれていた。ワイヤーカーは車両全体の電気・電子システムを実物ハードウェアで再現する検証プラットフォームで、南陽研究所は2019年から制御機検証に活用している。

パイロット電装制御開発チームのキム・サンヨン氏は「試験車が製作される前に、ワイヤーカーが車両全体のシステムをつなぎ、機能、通信、診断を検証する」と説明した。

研究員らは、ワイヤーカーで先進運転支援システム(ADAS)関連制御機の検証も実演した。方向指示器を出さずに仮想車線を逸脱しようとすると車線逸脱防止機能が作動し、走行中に仮想車両が突然画面に現れると警告音とともに自動減速する前方衝突防止支援機能が働いた。研究員は「前方衝突防止支援は安全上、実車テストでは繰り返し検証しにくいが、仮想環境で克服した」と話した。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News