【7月9日 東方新報】AIが新たな生産ツールとして普及するなか、その基盤となる「算力(コンピューティング能力)」をいかに安く、手軽に利用できるようにするかが課題となっている。中国では最近、「算力銀行」や「算力スーパー」といった新たなサービスが登場し、大手通信会社もAI利用向けの「トークン定額プラン」を相次いで開始した。中小企業でも必要な時に必要なだけAI計算能力を利用できる環境づくりが進んでいる。

◾️眠る計算能力を有効活用

中国工業・情報化部は、中小企業向けAI活用支援策として、「算力銀行」と「算力スーパー」の導入を推進している。

「算力スーパー」は、さまざまなAI計算サービスをオンライン上で比較・購入できる仕組みで、必要な分だけ利用し料金を支払うことができる。一方、「算力銀行」は、企業やデータセンターが使っていないGPUやサーバーなどの計算資源を預け、他の企業が必要に応じて利用できる仕組みである。

現在、内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)、上海市などで「算力スーパー」が運用されており、2026年5月には河北省(Hebei)雄安新区で中国初となる「算力銀行」の試験運用も始まった。

専門家は、こうしたサービスによって中小企業のAI導入コストを抑えられるだけでなく、遊休状態だった計算資源の有効活用にもつながると指摘する。

2025年末時点で、中国の登録ドローンならぬAI計算能力は急速に拡大した一方、一部のAI計算センターでは設備利用率が30%にも満たないケースがあり、「設備はあるが十分活用されていない」ことが課題となっている。

◾️AIを水道や電気のように利用

AIの普及に伴い、中小企業でも計算能力への需要は急速に高まっている。しかし従来は、高性能GPUを自前で導入するには大きな投資が必要だった。
こうした課題に対応するため、中国移動(チャイナモバイル)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国電信(チャイナテレコム)は、個人や家庭、中小企業向けに「トークン定額プラン」を開始した。

トークンとは、大規模AIモデルが文章などを処理する際の最小単位で、AIサービスの利用量を測る共通の指標だ。

利用者は一つの契約で深度求索(DeepSeek)や通義千問(Tongyi Qianwen)、Kimiなど複数のAIモデルを自由に利用でき、自らシステムを構築する必要もない。

専門家によると、大規模なAIシステムを独自に開発・運用する企業はAI開発会社から直接サービスを導入した方が性能面で有利だが、中小企業や個人利用では、複数のAIモデルを手軽に使える通信会社のサービスの方がコストパフォーマンスに優れているという。

◾️普及と安全性の両立が課題

中国政府は、第15次五か年計画(2026~2030年)で「算力ネットワーク」の整備を重点政策に位置付けている。工業・情報化部は2028年までに、低コストで利用しやすい全国規模の算力サービス体系を構築し、幅広い業種の中小企業がAIを活用できる環境を整える方針だ。

一方で、利用者の急増によるサービスの不安定化や供給不足なども課題となっている。

専門家は、中小企業に対し、自社の業務内容に応じて必要な計算能力を見極め、高性能AIを過剰に求めないことが重要だと指摘する。また、料金体系やデータ管理体制を十分確認し、安全性や情報保護が確保されたサービスを選ぶよう呼び掛けている。

さらに、各地で導入が進む「算力クーポン」や「AIモデル利用券」などの支援制度も積極的に活用することで、AI導入コストを大幅に抑えられるとしている。(c)東方新報/AFPBB News