【7月9日 CNS】6月24日に開幕した世界経済フォーラム(WEF)が主催する「夏季ダボス会議」の会場となった遼寧省(Liaoning)大連市(Dalian)は、多くの参加者でにぎわった。製造業向けクラウドサービスを手掛ける中国企業・上海黒湖科技(Black Lake Technologies)の創業者、周宇翔(Zhou Yuxiang)氏は、「アジア太平洋地域の本部設置を検討しているユニコーン企業が多く、その候補地として中国を考える企業が少なくない」と語った。

ユニコーン企業とは、企業価値が10億ドル以上で、高い成長性と独自の技術や革新的なビジネスモデルを持つ未上場企業を指す。こうした動きは、世界のテクノロジー企業の対中投資戦略が大きく変化していることを示している。中国は「世界の工場」から、世界的なイノベーション拠点へと存在感を高めつつある。

近年は外国企業が中国に研究開発センターや地域本部を相次いで設立し、中国のイノベーション・産業チェーンへ深く組み込まれる動きが進んでいる。投資の目的も「中国で生産する」から「中国で創造する」へと変わりつつある。

統計によると、2025年に中国で新たに設立された外資系企業のうち、科学技術研究・技術サービス分野は約1万4000社となり、前年から27.2%増加した。これらの投資は、技術革新の将来性を見据えた長期投資が中心となっている。

将来への期待も高まっている。中国EU商会が6月上旬に公表した調査では、中国で事業を展開する欧州企業1600社余りを対象に実施した結果、今後2年間の売上成長に楽観的な企業の割合は前年より6ポイント上昇した。

製品販売だけでなく地域本部の設置も進むなか、外資系企業は中国市場への投資を加速させている。今回の夏季ダボス会議には90以上の国・地域から1700人を超える代表が参加し、中国政府が認定する「専精特新『小巨人』企業(高い専門性や独自技術を持つ成長企業)」やユニコーン企業の参加数は前年より40%増加した。

「中国のイノベーションに投資する」という考え方は、多くの海外企業の共通認識となりつつある。なぜ中国なのか。その答えは、今回の会議テーマである「大規模イノベーション」にある。

世界経済フォーラムのマネージングディレクター、梁錦慧(Gim Huay Neo)氏は、「大規模なイノベーションを成功させるには、システム全体の変革が不可欠だ」と指摘した。中国では、その変革を支えているのが、技術革新、市場規模、イノベーション環境という三つの要素である。

まず技術面では、夏季ダボス会議で公表された「2026年注目の新興技術10選」に、直接リチウム抽出技術、ワールドモデル、放射冷却材料などが選ばれた。このうち直接リチウム抽出技術では、中国企業が実用化を進めており、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)は、中国が2030年までに世界のコバルト・リチウム需要の約50%を担う可能性があると予測している。

AI分野でも、中国の存在感は高まっている。清華大学(Tsinghua University)智能産業研究院の張亞勤(Zhang Yaqin)院長は、「将来、基盤モデルの約80%はオープンソース化される」との見方を示し、深度求索(DeepSeek)や智譜AI(Zhipu AI)など中国企業が開発するオープンソースAIモデルが、中国独自の競争力になっていると述べた。

中国では、技術革新は個々の企業だけでなく、産業クラスター全体で進められている。技術革新が産業高度化を促し、その成果が再び技術革新を加速させる循環が形成されている。

市場規模も大きな強みだ。中国には4億人を超える中間所得層がおり、世界最大規模の消費市場を形成している。ハーバード大学のエレイン・バックバーグ教授は、「中国の消費者は新技術への関心が高く、多くのスタートアップ企業が誕生していることがイノベーションを後押ししている」と分析する。

思わぬ分野にも新たな可能性がある。中国では新エネルギー車(NEV)の保有台数が4000万台を超えており、寧徳時代新能源科技(CATL)の曾毓群(Robin Zhen)会長は、これがAI活用のインフラになるとの見方を示した。

車両に搭載されたセンサーや充電ネットワーク、車両・道路連携システムは膨大なデータを生み出し、AI技術の実証や活用に最適な環境を提供している。巨大市場の価値は、消費規模だけではない。多様な実証フィールドが新技術を育てる「実験場」となり、大規模イノベーションを支えている。

最後に、イノベーション環境も重要な要素だ。遼寧大学(Liaoning University)の余淼傑(Yu Miaojie)学長は、「ゼロから一を生み出すには、大規模な研究開発体制が欠かせない」と指摘する。中国では企業を主体とし、政府や社会も参加する研究開発支援体制が整備され、大型研究施設や基盤インフラも充実している。また、毎年約700万人の理工・農学・医学系大学卒業生を輩出している。

さらに、中国には世界のイノベーションクラスター上位100に入る地域が24か所あり、長江デルタの電子情報産業、重慶市(Chongqing)のオートバイ産業、深セン市(Shenzhen)のロボット産業など、それぞれ特色ある産業集積が形成されている。

「市場ニーズ―技術革新―産業高度化」が循環するイノベーション環境の中で、外資系企業は研究開発から試作、量産までの協力先を中国で迅速に見つけることができ、イノベーションの効率を大きく高めている。周宇翔氏は、「この後、数十社のユニコーン企業の代表を上海市へ案内する予定だ」と話した。

彼らが上海で探しているのは、単なる地域本部のオフィスではない。未来への成長機会そのものなのである。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News