【7月7日 CNS】サッカーW杯北中米大会(2026 World Cup)は熱戦が続いている。中国のSNSでは、「ラブブ(LABUBU)も行った、蒙牛(China Mengniu Dairy)も行った、海信集団(Hisense Group、ハイセンス)も行った、審判も行った。でも中国代表だけは行けなかった」という自虐的なジョークが話題となった。しかし、中国代表が出場できなかったことは、中国のサッカーファンの熱気を冷ますことはなかった。

ただ、20年前のように家族でリビングに集まり、中国中央広播電視総台 (CMG)のスポーツチャンネル「CCTV-5」で試合を観戦するスタイルは大きく変化している。いまでは多くの若者がスマートフォンで試合を楽しみ、観戦の場はリビングから、深夜の布団の中や通勤中の地下鉄、職場の休憩時間へと移りつつある。

上海市・陸家嘴のオフィスビルで働く35歳のプロダクトマネージャー、李書穎(Li Shuying)さんは、昼休みにスポーツ配信サービス「咪咕視頻(Migu Video)」を開き、グループリーグでカーボベルデがスペインと引き分けた試合を見返す。選手視点の映像とAI解析機能を使って、選手一人ひとりの動きまで細かく振り返ることができるという。「家のテレビは何年も使っていません。私にとってW杯はスマホで見るものです」と話す。

今年、CMGはFIFA(国際サッカー連盟)から中国本土での放映権を取得し、生中継や録画放送、見逃し配信などの権利を動画配信サービス「咪咕視頻」とSNS「小紅書(Red)」へ再許諾した。これにより、「テレビ+ストリーミング」という新たな観戦スタイルが形成された。テレビは依然として家庭での観戦手段だが、通勤する会社員や若者にとっては、スマートフォンこそが「自分だけのスタジアム」となっている。CMG公式アプリ「央視頻」、咪咕視頻、小紅書の3つのプラットフォームで、大会全104試合をいつでも視聴できるためだ。

北中米大会は中国との時差が約12時間あるため、多くの試合は中国時間の深夜から午前中に行われる。会社員や学生がテレビの前でリアルタイム観戦するのは難しい。ストリーミング配信では、一時停止や見逃し視聴、倍速再生が可能なため、夜更かしできない人は朝に録画を見たり、昼休みにハイライト映像を楽しんだりするなど、空いた時間に観戦するスタイルが定着しつつある。

こうした変化を後押ししているのが、中国の急速なデジタル化だ。2025年末時点で、中国のスマートフォン利用者は11億2100万人に達し、インターネット利用者全体の99.6%を占める。2026年5月末時点では5G基地局が505万3000か所に増え、移動通信基地局全体の39%を占めている。通信料金も下がり続けており、大学生が学生寮や地下鉄、キャンパスで1080Pや4K画質の試合をスマートフォンで視聴することは、ごく日常的な光景となっている。

さらにAI技術が観戦体験を大きく変えている。配信プラットフォームでは上海語や広東語、東北方言、四川方言によるAI実況を提供するほか、AIチャット機能によるリアルタイム解説や、試合の重要ポイントの要約にも対応。選手の走行データを可視化するレーダーチャートや、お気に入り選手を自動追跡する「スター追跡」「ボール追跡」機能なども導入され、観戦をより楽しめる環境が整っている。

テレビがなくなるわけではない。CCTV-5とCCTV-5+では92試合を放送し、中国国内では約1200か所の映画館でもパブリックビューイングが行われている。しかし、小紅書のようなSNSが全試合の配信権を持ち、ほぼすべてのネット利用者が4K映像を視聴できるスマートフォンを持つ時代となった。深夜3時の試合も「保存して朝見る」という視聴スタイルが一般的となり、中国におけるワールドカップ観戦は大きく様変わりしている。

中国代表は北中米大会への出場を逃した。それでも、中国人にとってのワールドカップは、もはやリビングのテレビだけで楽しむものではなくなっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News