【7月21日 CNS】かつては山や川の中に埋もれ、あまり注目されていなかった小さな町が、今では観光消費の人気目的地となっている。端午節(今年は6月19日)連休中、以前なら地図で探すのにも苦労したような地名が、SNSや友人同士の投稿で次々と話題になった。

広東省(Guangdong)仏山市(Foshan)の畳滘村では、狭い水路沿いに大勢の人が集まり、ドラゴンボートレースの夜間練習でさえ身動きが取れないほどの混雑となった。湖北省黄梅県では、600年の歴史を持つ立ち漕ぎ式ドラゴンボートが10万人以上の観光客を呼び込んだ。貴州省(Guizhou)銅仁市(Tongren)では、ドラゴンボートによる川下りや儺戯(だぎ)などの伝統芸能が人気を集め、ホテル予約数が84%増加した。

旅行予約サイトのデータによると、今年の端午節連休は近郊旅行や伝統文化体験型の旅行が好調だった。特に気温20度前後の涼しい避暑地として知られる地方都市では予約件数が前年同期比40%以上増加し、特色ある古鎮(歴史的な町並み)への検索数も3倍に伸びた。

近年は「逆向き観光」や「小さな町への旅」が大きな流れとなっている。

なぜ地方の小さな町が人気を集めているのだろうか。多くの人はまず「コストパフォーマンスの良さ」を思い浮かべるかもしれない。しかし、それだけが理由ではない。

人びとが何百キロも離れた見知らぬ町へ足を運ぶのは、単に安いからではなく、そこでしか味わえない体験があるからだ。かつて地方都市の観光開発といえば、他地域の成功例を模倣するのが一般的だった。レトロ風の街並み、ガラス張りの展望歩道、SNS映えするドリンク店などをテンプレートのように並べる手法だ。こうした「量産型観光地」は一見効率的だが、すぐに観光客の飽きを招き、競争力を失ってしまう。

似たような観光地が増える中、多くの地方都市や農村はこうした手法から脱却し、自らの文化的なルーツを掘り起こし、新たな魅力の発信に力を入れ始めている。例えば、仏山市の畳滘村で近年話題となっている「ドラゴンボート・ドリフト」が人気を集めるのは、迫力あるレースそのものだけが理由ではない。これは観光向けのショーではなく、地域に根付いた生活文化だからだ。村の男性たちがボートを漕ぎ、老若男女が観戦し、皆で「龍船飯」と呼ばれる食事を囲む。こうしたありのままの地域文化が、本物の体験を求める都市部の人びとを引きつけている。

地域政府もこうした文化の独自性に着目している。2024年には畳滘村がある仏山市南海区が「畳滘ドラゴンボート・ドリフト」ブランド育成計画を策定し、「村主体・民間主導」という文化的な本質を守る方針を打ち出した。継続的な政策支援が、この観光ブランドの成長を後押ししている。

もちろん、観光客を呼び込むだけでは十分ではない。滞在してもらうためには、受け入れ環境や消費を支える仕組みが欠かせない。近年、各地ではインフラ整備や観光サービスの充実にも力を入れている。

山西省(Shanxi)平定県では、山西・河北(Hebei)省境をなす関門娘子関の国家5A級観光地認定を目指し、水道や道路、電力、ガスなどのインフラ整備を進めた。四川省(Sichuan)石棉県は観光振興のための特別予算を設け、観光施設や公共サービス、観光関連事業、無形文化遺産保護に投資している。湖北省(Hubei)利川市(Lichuan)ではAI演算センターの活用により観光サービスを高度化し、観光客の平均滞在日数を1.8日から2.3日に延ばした。

こうした「行政が基盤を整え、文化が魅力を生み、消費へと結びつける」取り組みが、小さな町の観光発展を支えている。「中国県域観光競争力報告2025」によると、中国の観光競争力上位100県では、観光客数と観光収入がともに前年比2桁成長を達成した。観光客数は18.3%、観光収入は15.9%増加し、観光客数の伸び率は全国平均を3.5ポイント上回った。

地方都市や小さな町の潜在力は今、改めて注目され、その価値が引き出されつつある。今年の端午節連休の観光実績は、ひとつのシンプルな事実を改めて示した。質の高い観光・文化コンテンツそのものが、消費を生み出す最大の原動力だということだ。

もはや小さな町は大都市の代替ではない。小さな町自身が、人びとを引きつける魅力的な目的地となっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News