AIが後押しする「一人会社」 中国で新たな起業モデル広がる
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【7月8日 CNS】朝、一人会社(OPC、One Person Company)の起業家である王傑さん(仮名)はパソコンを開き、AIアシスタントに簡単な指示を送る。するとAIは数秒で商品の特徴を分析し、多言語の販促動画を自動生成する。王さんはほとんど指先を動かすだけで、かつてはチームが必要だった越境EC事業を運営している。
近年、AI技術の急速な発展に伴い、中国では「一人会社(OPC)」という新たな起業モデルが広がっている。起業家は少ないコストで迅速に事業を展開し、アイデアを素早く製品やサービスへと形にして、開発から運営までを一人で完結させることが可能になった。
北京市経済技術開発区にあるOPC向けインキュベーションコミュニティで活動する王さんは、当初は企業のSNS運営代行を手掛けていたが、その後、全自動猫用トイレやペット用洗浄機などを扱う越境EC事業へ転向した。
王さんの一日は、AIアシスタントから届く店舗データのレポート確認から始まる。その後、AIが多言語の販促動画を制作し、ティックトック(TikTok)などを通じて海外の消費者へ訴求する。AIカスタマーサポートは24時間対応し、海外倉庫と連携して商品の配送も行う。
王さんは「市場分析から広告コピー作成、動画編集、顧客対応まで、すべてAI社員に任せられる。経験がない分野でもAIが知識やスキル不足を補ってくれる」と話す。この1年間、王さんの店舗の月収は3万元(約71万1840円)前後で安定している。一方、運営コストはオフィス利用料とAIツール利用料を合わせても数千元程度にとどまる。
同コミュニティの創設者である朱冠霖(Zhu Guanlin)氏は、「今やOPC起業とAIは切り離せない。起業を目指す人には、まずAIの基礎知識を身につけてもらう」と語る。コミュニティでは、文章作成やデータ分析、プログラミングなどを担うAIエージェントを提供し、起業家を支援している。「中国OPC発展動向報告(2025~2030年)」によると、2025年6月時点で中国の一人有限責任会社は1600万社を超えた。2025年上半期の新規登録数は286万社で、前年同期比47%増となり、全新設企業の23.8%を占めた。AI技術の進歩によって起業のハードルが大きく下がり、個人の可能性が広がっていることがうかがえる。
広告業界からAI映像監督へ転身した孔徳飛(Kong Defei)さんもその一人だ。わずか1年半でキャリアチェンジを果たし、この半年間で中国三大国際映画祭のAI部門で受賞を重ねた。孔さんは「AIによって創造力を発揮できるようになった。以前なら考えられなかったことだ。新人が何十万、何百万元(約数百万〜数千万円)もの予算を任されることはないが、AIならアイデアさえあれば数日で質の高い作品を作れる」と語る。
業界関係者によると、OPCの急成長はAIがさまざまな産業にもたらす価値を象徴している。教育、医療、防犯、法律など幅広い分野で活用が進み、迅速な意思決定や低コスト、高い柔軟性を生かしてニッチな課題を解決している。
現在、中国では20以上の都市がOPC支援策を打ち出しており、北京市、上海市、深セン市(Shenzhen)、浙江省(Zhejiang)、江蘇省(Jiangsu)などでは地域発展計画にも組み込まれている。オフィス提供や計算資源の支援、人材サービス、資金調達支援、実証環境の提供など、起業を後押しする体制が整いつつある。
朱氏は「OPC最大の意義は、誰もが低コストで起業に挑戦できることだ。失敗しても別の分野に挑戦できる。私たちは起業家に寄り添い、成功するまで支援を続ける」と自信を示した。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News