【6月25日 東方新報】思考で車いすを操作し、ドローンを飛ばし、文字を入力する。かつてSFの世界だった技術が、現実に近づいている。6月16日、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hanghzou)で「世界ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)×医療保険イノベーション応用コンテスト」が開幕し、この最先端技術が改めて注目を集めた。国家戦略から地方の産業育成、医療保険制度、臨床応用まで、BMIは研究室から社会実装へ向けて加速している。

BMIは今年、初めて中国国務院の政府活動報告に盛り込まれ、量子技術、具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)、6Gなどと並ぶ重点未来産業に位置付けられた。浙江省は早くからこの分野に取り組み、2021年に未来産業育成計画へ組み込み、2025年には2030年までの発展行動計画を策定した。

2025年時点で浙江省が保有するBMI関連の有効発明特許は1058件に達し、その9割以上が杭州に集中している。研究開発から実証試験、製品化までの体制も整い、強脳科技、程天科技、佳量医療、諾爾康などの企業が成長している。2025年の関連主要企業の売上高は20億元を超えた。

臨床応用でも成果が出ている。浙江大学(Zhejiang University)ブレイン・マシン知能全国重点実験室や南湖BMI研究院などが研究を進め、侵襲型・非侵襲型の両分野で技術的な突破を実現している。浙江大学系の主要病院では、高位脊髄損傷患者のリハビリや神経調節治療、運動機能補完などで臨床経験を蓄積している。

こうした技術を医療現場へ広げる上で、医療保険制度は重要な役割を担う。国家医療保障局の付超奇(Fu Chaoqi)ビッグデータセンター主任は、BMIの臨床導入が医療サービスの拡大や医療保険基金の効率的活用につながると指摘した。

浙江省はすでに「非侵襲型BMI適用費」を医療保険の給付対象に組み入れている。今後はBMI医療サービス体系や料金制度の整備を進める方針だ。また、電子カルテや治療効果、リハビリ追跡データなどを統合した専用データベースを構築し、企業や大学、医療機関による安全性・有効性の検証を支援する計画も進めている。

今回のコンテストは、BMIと医療の融合を促す実証の場と位置付けられている。競技は主に非侵襲型BMIを対象とし、思考でドローン群を操縦する「脳波ドローン」、障害者の移動を支援する「脳波車いす」、ロボットアームを操作する種目、ロボット犬との連携、ALSや脳卒中患者の意思伝達を支援する「脳波入力」など8部門が設けられた。娯楽分野での活用を想定した仮想タスクも用意されている。

中国科学院の段樹民(Duan Shumin)院士は、非侵襲型BMIは信号解析やノイズ除去に課題を抱えるものの、AIや大規模言語モデルの発展によって突破口が開かれつつあると見る。将来的には患者支援だけでなく、一般の人々にも利用が広がる可能性があるという。

杭州市も産業育成を後押ししている。市は脳型知能産業向け支援策を打ち出し、政府系ファンド体制を整備したほか、初期規模20億元(約474億5600万円)、運用期間20年のファンドを設立してスタートアップを支援している。革新的医療機器の審査対象となった製品や第三類医療機器認証を取得した製品には補助金も用意している。

人材面では、高度人材認定制度を整え、住宅、教育、医療などの支援を提供している。企業向けには専用窓口を設け、行政サービスの効率化も進めている。杭州市の章捷副秘書長は、「価値あるイノベーションが杭州で実証の場を見つけ、資金を得て事業化し、産業へ成長できる環境を整えたい」と語る。

思考による文字入力や車いす操作など、BMIは急速に現実の技術となりつつある。医療保険制度、産業基盤、先端技術が連携することで、この技術はより身近なものとなり、人びとの健康や生活に新たな可能性をもたらそうとしている。(c)東方新報/AFPBB News