【6月24日 東方新報】AIショートドラマ制作会社に入社した姚国力(Yao Guoli)さんは、初日の午後には脚本を渡され、そのままAIショートドラマの監督を任された。実写作品のように俳優や撮影現場を管理する必要はなく、脚本を絵コンテに分解し、AIで映像を生成して編集する仕事だ。

もともと西安市(Xi'an)で実写ショートドラマのプロデューサーをしていた姚さんは、今年の春節(旧正月、Lunar New Year)明けに転職を予定していた。しかし、多くの会社で採用計画が延期され、中には「募集していた部署自体がなくなった」と告げる会社もあった。一方、AIショートドラマ会社だけは積極的に入社を促していたという。

背景には、業界の急激な変化がある。中国ネット視聴覚協会のデータによると、2026年第1四半期に公開されたショートドラマは約12万8000本で、そのうちAI作品は約12万2000本と95%以上を占めた。2025年の公開本数が3万3000本だったことを考えると、わずか3か月で前年の約4倍の作品が投入された計算になる。

AI動画生成技術の進歩によって、AIショートドラマは低コストかつ短期間で制作できるようになった。しかし、制作が容易になった一方で、利益を上げることは難しくなっている。

実写ショートドラマ業界は2025年に市場規模が1000億元(約2兆3728億円)を超える成長を遂げたが、今年に入って大手プラットフォームが制作会社向けの最低保証制度を縮小したことで、多くの制作会社が経営難に陥った。そんな中、AIショートドラマの一種であるAI実写風ドラマが新たな活路として注目を集めた。

代表例が今年1月に公開された「斬仙台 真人AI版」だ。公開6日で再生回数1億回を突破した。同作品は12人のチームが30日かけて制作し、AI演算コストは約10万元(約237万2800円)。制作費は実写ドラマの4分の1程度だったという。

実写からAIへの転換は、制作現場の構造も変えた。監督や編集担当は残る一方、撮影現場の手配を担っていたプロデューサーの役割は大幅に縮小した。実写作品が60万~100万元(約1423万6800~2372万8000円)の制作費と1か月以上の制作期間を要するのに対し、AI作品は8万~10万元(約189万8240~237万2800円)、10~15日程度で完成する。

こうした状況を受け、MCN事業者や研修会社なども参入し、市場競争は急速に激化した。大手プラットフォームはAI実写風ドラマを優遇する収益配分制度を導入し、多くの制作会社がAI分野へシフトした。

しかし、作品数が急増するにつれ、収益性は低下している。業界関係者は「池の魚は増えていないのに、釣り人だけが急増した状態」と表現する。ユーザー数は限られている一方、新作は1日数十本から1000本規模へ増加し、ヒット作が生まれる確率は宝くじ並みになったという。

深セン市(Shenzhen)のデザイン会社経営者は、約20万元(約474万5600円)を投じて11本のAI作品を制作したが、1か月後の収益は数百元(数千円)にとどまった。すでに大量の作品を制作している会社でも収益の低下は避けられず、以前はヒット作1本で数百万元の利益が得られたが、現在は再生回数当たりの収益が大きく落ち込んでいる。

生き残りのため、制作会社はコスト削減を進めている。姚さんの会社では、1作品あたり8万元だった制作費を2万元(約47万4560円)まで圧縮した。制作チームによっては、1日で1作品を完成させるケースもあるという。

ただし、低コスト化は作品の質にも影響している。視聴者からは「登場人物の顔がどれも似ている」「AIらしさが強く感情移入しにくい」「物語がテンプレート化している」といった声が上がる。衣装が変わらない、動作が不自然といった問題も指摘されている。

業界関係者によると、高品質なAI実写風作品は1分あたり1500元(約3万5592円)以上の制作費が必要だが、市場には1分あたり数百元程度で制作された低品質作品が大量に流通している。コストを抑えるため、すでに審査を通過したAIモデルの顔を流用するケースも多く、「業界全体が同じ顔を使っている」と揶揄される状況も生まれている。

さらに、実写作品が俳優の人気や個性でファンを獲得するのに対し、AIキャラクターはまだ独自の魅力やブランド力を確立できていない。視聴者も物語そのものより、「AIで作られた作品かどうか」を意識して見る傾向が強いという。

こうした中、4月には国家広播電視総局がAIショートドラマを新たな審査体系に組み込み、大手プラットフォームも低品質作品の取り締まりを強化した。業界関係者は、規制強化によって淘汰が進み、質の高い作品が評価される健全な市場へ向かう可能性があるとみている。

AIショートドラマ業界は今、大量生産と淘汰が同時に進む転換期にある。短期間で市場は急拡大したが、真に視聴者に支持されるコンテンツを生み出すには、映画やアニメの人気IPと同じように、長い時間をかけた積み重ねが必要になりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News