【7月1日 東方新報】「どれほど難しくても、山一面に咲かせてみせる」

重慶市(Chongqing)秀山トゥチャ族ミャオ族自治県(Xiushan Tujia and Miao Autonomous County)で、金珠苗繍の重慶市級無形文化遺産代表性伝承者である楊秀燕(Yang Xiuyan)氏は、今日も刺繍枠に向かう。白い布の上に、一針一針「苗の花」を咲かせていく。

ミャオ族に代々受け継がれてきた苗繍は、精巧な針仕事と鮮やかな色彩を特徴とし、民族の歴史や文化を映し出すことから「身にまとう文字なき史書」とも呼ばれる。古くからミャオ族の女性にとって欠かせない存在だった。貴州省(Guizhou)の苗繍伝承者である田茂媛(Tian Maoyuan)氏も7歳で刺繍を始めた。かつては村ごとに刺繍職人がいて、技術は母から娘へと受け継がれていたが、時代の変化とともに後継者不足が深刻化した。

楊氏が故郷の村に戻った2012年、若者の多くは都市へ流出し、村は活気を失っていた。そこで楊氏は56人の刺繍職人を集め、「技術で生計を立てる」ことを目標に活動を再開した。しかし、職人の減少や後継者不足、手間に見合わない収入など、課題は少なくなかった。それでも苗繍の魅力は失われなかった。2018年には金珠苗繍を含む武陵山地の無形文化遺産が仏パリのルーブル美術館(Louvre Museum)で紹介され、国際的な注目を集めた。さらに楊氏のチームによる代表作「臥虎」は香港のオークションで158万元(約3732万9870円)で落札され、伝統工芸の市場価値を示した。

現在、苗繍は民族衣装だけでなく、チャイナドレスや壁掛け、屏風などの芸術作品にも展開されている。楊氏はさらに、ペンダントやブローチ、イヤリングといった苗繍モチーフの小物も開発。伝統の魅力を残しながら現代のライフスタイルに合う商品として人気を集めている。2025年には楊氏が設立した文化観光会社の年間売上高が約200万元(約4725万3000円)に達し、その多くをこうした文化クリーティブ商品が占めた。刺繍職人たちの月収も1800~5000元(約4万2527〜11万8132円)ほどになっている。

技術継承にも力を入れている。楊氏はこれまでに4期の苗繍講座を開き、200人以上を育成した。「学びたい人にはすべて教えたい」と語る。一方、田氏も学校で指導に当たりながら、若い世代への普及に取り組んでいる。教材の整備も進み、かつての口伝中心だった継承方法は、体系的な教育へと変わりつつある。

「これからは、より多くの苗繍の要素が現代のファッションに取り入れられていくだろう」と田氏は期待を寄せる。楊氏は近年、作品によくアヤメを刺繍する。痩せた土地に根を張り、風雨にも負けず咲くその花は、苗繍そのものの姿に重なるからだ。針先で磨かれた粘り強さがあれば、いつか山一面に花が咲く日が来る――。そんな願いを込めながら、今日も針を進めている。(c)東方新報/AFPBB News