【6月29日 東方新報】オリジナルアクセサリー作りから無形文化遺産の伝統技術体験まで、特別な体験や思い出を得られる手作りが若者の間で人気を集めている。新たな消費市場が生まれ、多くの起業家も参入し、「手作り経済」は市場の活性化を後押ししている。

北京市・三里屯のアクセサリー工房では、カップルが記念日や星座、ハートマークなどを指輪に刻んでいた。店主によると、繁忙期には1日20~30人が指輪やネックレス、ブレスレット作りを体験するという。

近年は陶芸教室や絞り染め体験なども人気を集めている。2025年には中国で手作り関連企業が6955社新たに設立され、前年比31.08%増となった。個人の体験や感情的な満足感を重視する消費傾向が、市場拡大を支えている。

若者が手作りに魅力を感じる理由の一つは、自分だけの特別な体験が得られることだ。恋人とペアリングを作っていた時昱さんは、「完成品を買うより、自分で作った方が意味がある」と話す。手作りの贈り物には気持ちが込められており、家族や友人と一緒に作った時間も特別な思い出になるという。

中国情報通信研究院の「中国体験経済発展報告(2025)」によると、2025年11月時点で中国の体験経済市場規模は18兆4000億元(約435兆6236億円)に達し、前年比22.6%増となった。手作り体験は、自分だけの作品を生み出せることから、独自の感情的価値を提供している。

また、手作りは忙しい日常の中で、ゆったりとした時間を楽しむ手段にもなっている。陶芸が趣味の王童(Wang Tong)さんは、「仕事では結果がすぐに見えないことも多いですが、陶芸は手を動かせばすぐに形が変わり、完成した作品を見ると達成感があります」と話す。

手作り体験は、伝統文化と触れ合う場にもなっている。七宝焼き、伝統香づくり、篆刻などの無形文化遺産の技術を体験できる工房には、週末になると多くの人が訪れる。近年は博物館でも無形文化遺産の手作り体験が行われ、来館者が伝統文化を身近に感じる機会となっている。

こうした体験は文化継承だけでなく、地域経済の活性化にもつながる。浙江省(Zhejiang)東陽市(Dongyang)では藍染め技術が地域振興を後押しし、江西省(Jiangxi)景徳鎮市(Jingdezhen)では陶芸体験が観光客を呼び込んでいる。

一方、手作りは低コストで始めやすく、新たな起業の機会にもなっている。中国版ティックトック(TikTok)の抖音(Douyin)では「手作りDIY」の再生回数が3500億回を超え、動画を見ながら技術を学ぶ人も増えている。

北京工商大学(Beijing Technology and Business University)商業経済研究所の洪涛(Hong Tao)所長は、「手作り経済は低コストで柔軟性の高い新たな起業・就業分野となっており、個人事業主や小規模企業の収入拡大に貢献している」と指摘する。

副業として手作り商品を販売する人も多い。リボン雑貨を制作する呉雨萱さんは、「材料費は高くなく、手作業が中心です。デザインが決まれば効率よく制作できます」と話す。手作りを本業にする人も増えており、オリジナル作品で顧客を広げ、実店舗の開業を目指すケースもある。

今年1月、中国国務院弁公庁はサービス消費の新たな成長分野を育成する方針を示し、感情的価値や体験価値を重視した消費シーンの創出を支援するとした。洪氏は、オーダーメード商品のアフターサービス充実や職人認証制度、業界基準の整備、著作権保護の強化を進めることで、「手作り経済」を持続可能な新産業へ育てるべきだと提言している。(c)東方新報/AFPBB News