【6月27日 東方新報】中国・浙江省(Zhejiang)義烏市(Yiwu)にある世界最大の日用雑貨卸売市場・義烏国際商貿城では今、AIを活用した新たなビジネスの形が広がっている。女性経営者の桂海琴(Gui Haiqin)さんはAIツールを使い、中国語の商品説明を瞬時に複数言語へ翻訳。玩具店を営む孫麗娟(Sun Lijuan%%)さんは、海外顧客の要望に合わせてAIでデザイン案を作成し、短時間で提案を行っている。

AIを取り入れることは、すでに義烏の経営者たちの日常になりつつある。「鶏の羽根を砂糖と交換する」行商から「世界のスーパーマーケット」へと発展してきた義烏は、今またデジタル化の波に乗り、新たな変革を迎えている。

アクセサリー企業を経営する桂さんは、ECやライブ配信が普及した際と同じように、AIについても積極的に学ぶことを選んだ。2025年、中国小商品城婦女連合会が始めた「数智巾幗」人材育成計画に参加し、その後は販売やデザイン、財務担当を含む全社員にAI研修を受けさせた。当初は懐疑的だった社員たちも、AIで生成した商品画像を顧客に送ったところ高い評価を受け、意識が変化した。社内ではAIを使ったデザインコンテストも行われ、社員の創造性や意欲の向上につながったという。

AIの導入は業務効率の向上にも大きく貢献している。桂さんの会社ではデザインチームの人数を減らしながらも、生産性は大幅に向上した。また、動画配信の台本作成や演出にもAIを活用しており、海外顧客との接点拡大にもつながっている。現在ではメキシコやベトナム、インドネシアなどで顧客から声を掛けられるほど認知度が高まっているという。

2025年以降、義烏市場婦女連合会は玩具やアクセサリー、日用品など20以上の業界を対象にAI研修を5回実施し、延べ800人以上が参加した。受講者の約8割が主要なAIツールを使いこなせるようになり、多くの企業でAI活用が実際の成果につながっている。玩具メーカーを経営する孫さんもその一人だ。2023年、中国小商品城グループが提供するAI多言語変換機能を活用し、中国語の動画をアラビア語などに変換して発信したところ、多数の海外顧客から問い合わせが寄せられた。

さらにAIは商品開発の現場も変えている。孫さんの工場ではオーダーメードのスマート人形を製造しているが、以前は新商品の開発に1か月ほどかかっていた。現在はAIに顧客の好みや対象市場の特徴を入力するだけで多数のデザイン案を作成できるため、開発期間は約80%短縮され、試作品のコストも約60%削減された。昨年には南米の顧客が店舗を訪れ、その場で色や柄の変更を希望したが、スタッフがAIを使って即座に修正案を提示し、そのまま受注につながった。現在も継続的な追加注文が続いているという。

AIの活用は個々の企業にとどまらない。孫さんは全社員にAI研修を受けさせ、社内に「AIデザイン画像ライブラリー」を構築した。桂さんも業界の女性経営者を集めた学習グループを立ち上げ、AI活用のノウハウ共有を進めている。こうした動きは義烏全体へ広がりつつある。女性起業家の成功事例を紹介する企画や若手経営者を発信する取り組みも進み、AIを活用した新たなビジネス文化が形成されている。

かつて行商人が農村を回り、鶏の羽根などを砂糖や日用品と交換していた時代から、「AIで受注する」時代へ。変わったのは商売の道具だが、変わらないのは新しいものに挑戦し続ける義烏の企業家精神だ。AIは今、その挑戦を後押しする新たな原動力となっている。(c)東方新報/AFPBB News