海南の酸味スープ「糟粕醋」、世界へ
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【6月25日 東方新報】中国・海南省(Hainan)文昌市(Wenchang)鋪前鎮では、糟粕醋(Zao Po cu)はかつて、漁師が海に出る際の携帯食の一つだった。酒を造った後に残る酒かすを再発酵させて作る酸味のあるスープで、酸味の中に辛味があり、辛味の奥にうま味がある。食欲を促し、体を温めるだけでなく、食材を少しでも長く保存する役割もあった。
長い間、この味は地元の街角や家庭の台所で受け継がれてきたが、今では手作業の小さな工房から近代的な工場へと発展しつつある。鋪前鎮から約60キロ離れた定安県雷鳴鎮では、老舗ブランド「鋪前三婆」が標準化された生産ラインを整え、商品はすでに海外の複数の国へ輸出されている。
「鋪前三婆」の歴史は1930年代にさかのぼる。創業者の李春花(Li Chunhua)氏がサツマイモで酒を造り、残った酒かすに代々伝わる麹を加えて糟粕醋を作ったのが始まりだ。2代目の黄花美(Huang Huamei)氏は1979年から鋪前小学校のそばで屋台を出し、近所の人びとから親しみを込めて「三婆」と呼ばれた。これがブランド名の由来となった。2008年には3代目の葉美娥氏が海口に業界初の糟粕醋専門店を開き、地方の味を省都へと広げた。
この伝統の味を工業化へ導いたのが、4代目の李肖雲(Li Xiaoyun)氏だ。大学卒業後、投資家の林冠(Lin Guan)氏とともにブランド化を進め、2021年に定安県の企業誘致と政策支援を受けて、雷鳴鎮山地村に工場を建設した。これにより、「鋪前三婆」の糟粕醋は手作り中心の生産から標準化生産へと歩み出した。
同社の曽維康(Ceng Weikang)董事長助理によると、糟粕醋は長年、家庭工房に頼ってきたため、味や品質が安定せず、賞味期限も短かった。気温が上がると袋が膨らみ、傷みやすいという課題もあった。定安工場の稼働後、研究開発チームは菌種の培養や製法の調整を重ね、糟粕醋の原湯を安定して大量生産できるようにした。現在は4つの商品群、30種類以上の味を展開している。
最初に市場に投入されたのは瓶詰めの糟粕醋だ。酒かすを発酵させた原湯に、ニンニクやラー油などを加え、昔ながらの味を残している。ただし常温での賞味期限は約1週間と短いため、同社は海南島全域をカバーする毎日配送の仕組みを整えた。工場でその日に作った商品をその日のうちに車に積み、海南各地の市場へ届けている。
配送体制も年々拡大している。2021年の生産開始当初は従業員の自家用車で配達していたが、2022年に初の配送車を導入し、現在は12台体制で海南島全域への毎日配送を実現している。年末までにさらに5~8台を追加し、すべての郷鎮に届けることを目指す。
一方で、同社は海南省外やオンライン販売向けに、賞味期限を延ばした商品も開発している。袋入りの固形タイプ糟粕醋や糟粕醋海鮮ビーフンは殺菌処理によって長期保存が可能で、海鮮ビーフンだけで累計販売数は100万袋を超えたという。
今年4月には、雷鳴鎮の第2期工場が正式に稼働し、生産能力がさらに拡大した。今後は第3期工場も計画しており、工場見学や文化観光、体験学習を組み合わせた生産拠点を整備し、年産10万トン規模を目指す。
「糟粕」という言葉には「かす」という印象があるが、曽氏は「この『かす』こそが本当のエッセンスなのです」と話す。曽氏は、一口飲むともう一口、1杯飲むともう1杯欲しくなるこの「漁師町の酸味スープ」は、地方の軽食から全国的な火鍋スープの素へと成長する可能性があるとみている。海南市場を深耕する一方、同社は外部市場の開拓にも乗り出している。ECを通じて「鋪前三婆」の糟粕醋は中国の大半の省に届いており、とくに東北三省で人気を集めている。さらに米国、カナダ、ニュージーランド、シンガポールなどにも小規模ながら輸出されている。今後は新工場の生産能力拡大に合わせ、北米と欧州連合(EU)市場を重点的に開拓していく方針だ。(c)東方新報/AFPBB News