【6月10日 AFP】パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の都市ヘブロンで先週起きた、イスラエル兵がパレスチナ人の乳児を死亡させた事件をめぐり、イスラエルの人権団体が9日、イスラエル軍の主張を覆す映像を公開した。

ヘブロンで5日に起きた事件では、イスラエル兵がパレスチナ人家族が乗る車両に発砲し、生後7か月の乳児、サーム・ファハド・アブ・ハイカルちゃんが死亡、両親が負傷した。

事件直後、イスラエル軍は「兵士らに向かって加速する車両を認識」し、車両向けて発砲したと発表していた。

しかし、人権団体「ベツェレム」がX(旧ツイッター)に投稿した映像では、2人のイスラエル兵に近づくにつれて減速し、停車する車両の様子が確認できる。

映像には兵士が発砲する瞬間は映っていない。しかし、銃撃を受けた家族が車両の外に出ている様子、乳児が父親の腕の中で血を流している様子が記録されていた。

事件をめぐり、軍は捜査を開始したと発表。初期調査の結果、パレスチナ人夫婦とその赤ちゃんは「(戦闘に)無関係な民間人」であったことが判明したと述べていた。

同団体はまた、兵士たちが負傷した家族に対して救護活動を行わなかったことも非難した。

ベツェレムはXに「銃撃後、発砲した兵士ともう1人の兵士は、車両を確認することも、致命傷を負った乳児や、負傷した母親に救護措置を施すこともなく、そのまま現場を立ち去った」と投稿した。

軍はAFPに対し、同団体が公開した映像について「確認中」であると伝えた。

6日に行われたサームちゃんの葬儀で、父親のファハドさんは、銃撃を過失とするイスラエル軍の説明に怒りをあらわにした。

ファハドさんは「何発もの弾丸が撃ち込まれた。警告射撃もなかった。警告は一切なかった。これが過失であるはずがない」と訴えた。

イスラエルは1967年以降、ヨルダン川西岸を占領しており、2023年にガザ戦争が始まって以降、パレスチナ自治区での暴力は急激にエスカレートしている。

パレスチナ保健省のデータに基づくAFPの集計によると、2023年10月7日以降、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍や入植者によって少なくとも1080人のパレスチナ人が殺害された。その多くは武装勢力のメンバーだが、多数の民間人も含まれている。

一方、イスラエル政府の公式統計によると、同期間にパレスチナ人による襲撃やイスラエル軍の作戦行動により、兵士や民間人を含む少なくとも44人のイスラエル人が死亡している。(c)AFP