畑の食材が生む創作コーヒー 成都の農村に新風
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【6月23日 東方新報】中国・四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)近郊の田園地帯で、一見すると意外性の強い、しかし独特の風味を持つコーヒーが注目を集めている。「ニンニクコーヒー」「ニラコーヒー」「豆板醤コーヒー」――地元の特産品とトレンド飲料を掛け合わせた発想から、数々の新しい商品が生まれている。若い起業家たちはコーヒーを媒介に、農産物を現代の消費と結びつけ、農村の物語を伝える新たなシンボルへと変えている。こうした取り組みは、成都の農村経済に新しい活力と可能性をもたらしている。
「2024年、『ニンニクコーヒー』は単品で7万杯を超え、2025年にはさらに伸びて9万杯を突破しました」。成都市温江区高山村の榜様青年CSAコミュニティで、責任者の戴超(Dai Chao)氏はそう語った。投資銀行で6年間働いた経験を持つ1990年代生まれの戴氏は、2020年にこの地に根を下ろし、村に広がる約3000ムー(約200ヘクタール)のニンニク畑に可能性を見いだした。
従来、ニンニクは主に調味料として使われ、産業としての付加価値は高くなかった。戴氏のチームはこの状況を変えようと、若者に人気のあるコーヒーに着目し、「飲める温江ニンニク」を開発した。最大の課題は、ニンニク特有の刺激臭をどう抑えるかだった。チームは四川農業大学(Sichuan Agricultural University)と連携し、脱硫技術によってアリシン抽出液を開発。さらにニンニクをスライスして急速冷凍し、表面を焦がすように焙煎したうえで粉末にし、コーヒーの上に振りかける製法を採用した。これにより、ニンニクの栄養成分と風味を残しながら、においの問題を解決した。
2023年、「ニンニクコーヒー」は正式に販売を開始した。単なる話題作りの商品ではなく、戴氏のチームは「IP、商品、体験」を組み合わせた運営モデルを構築した。人気が高まるにつれ、「ニンニクコーヒー」は国家地理的表示産品である「温江ニンニク」をPRする名刺代わりにもなった。戴氏によると、ブランド化によって地元のニンニク農家は、買い手に左右される立場から、価格交渉力を持つ売り手側へと変わった。ニンニクは収穫前に予約で売り切れることも多いという。
チームは「ニンニクコーヒー」のブランド力を生かし、産業チェーンも広げている。アリシン配合のシャンプーやフェイスマスクなどの関連商品を発売したほか、ニンニクの芽が出回る時期にはポップアップイベント、研学体験、農村音楽フェスなども開催している。戴氏は、農村の発展に大規模な開発は必ずしも必要なく、重要なのは地元の特色ある産業を土台に、テクノロジーと文化の力で主流の消費シーンにつなげることだと考えている。今年は「ニンニクコーヒー車旅居パートナー計画」も打ち出し、この農村発の個性派コーヒーを移動型ビジネスとして全国に広げる予定だ。
一方、成都市郫都区安徳街道広福村では、「三農紀・田咖」の運営責任者である尹航(Yin Hang)氏と1990年代生まれのチームが、コーヒーを通じて一味違う農村の魅力を発信している。彼らは、地元で長く栽培されてきたニラと、郫県豆板醤という地域を代表する特産品をコーヒーに取り入れた。
広福村のニラ産業に深く関わるため、チームは2025年に「ニラコーヒー」を発売した。村内の加工工場で作られたフリーズドライのニラを使い、コーヒーを抽出する際に香りづけとして加え、仕上げにも少量を添える。ほのかなニラの香りを感じるアメリカンコーヒーだ。その後、さらに個性的な「豆板醤コーヒー」も登場した。チームは豆板醤の発酵風味を感じられる専用コーヒー豆を調整し、豆板醤づくりの伝統工程である「天地返し」の動きをハンドドリップに取り入れた。さらに「一つのポットで四つの飲み方」を楽しむ体験を設計し、消費者が醤の香り、塩味、辛味などの重層的な味わいを体感できるようにした。
この2種類の特色あるドリンクはいずれも昨年、販売数が1万杯を超え、農村に人を呼び込む人気商品となった。「私たちのSNSアカウントは毎月100万を超えるアクセスがあり、昨年の国慶節連休には1日で5000人以上が来店しました」と尹氏は話す。オンラインでの注目が実際の来店消費につながり、農村の増収を確実に後押ししている。
広福村党総支部の高玲(Gao Ling)書記も、その効果を実感している。村が「田咖」のような若者向けの新業態を誘致したのは、人材を集め、産業を育てるためだったという。「村のニラ栽培面積は、昨年初めには300ムー(約20ヘクタール)足らずでしたが、年末には700ムー(約47ヘクタール)以上に広がりました」と高氏は話す。特色ある農産物を使ったコーヒーは、農村の消費シーンを豊かにするだけでなく、地元産業への集客や資源のマッチングにも役立っている。新しい農業人材や起業家をニラ産業に呼び込み、栽培、加工、観光体験を一体化した産業連携の流れを生み出している。
戴氏と尹氏の取り組みは、農村産業の新しい可能性も示している。現在、戴氏のチームは成熟したモデルを外部にも展開し、四川省三台県の生薬「麦冬」、同省金川県特産の果物「雪梨」、浙江省(Zhejiang)温州市(Wenzhou)の薬用植物「鉄皮石斛」など、特産農産物を使った創作ドリンクを開発している。尹氏のチームは、成都の川菜関連企業が集積する産業パーク「中国川菜産業城」と連携して「火鍋コーヒー」を開発している。異業種を組み合わせた農村産業の展開は、今後もさらに広がりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News