【6月10日 AFP】英領北アイルランドの中心都市ベルファストで9日夜、スーダン出身の難民の男が市民1人を刃物で刺して重傷を負わせた事件に抗議する反移民デモが行われたが、参加者の一部が暴徒化し、建物や車両に放火する事態となった。

AFP記者によると、反移民デモはベルファスト各地で行われ、参加者の多くは覆面で顔を隠していた。バス1台と乗用車数台が放火されたほか、市中心部の端にある建物も放火され、住民が避難を余儀なくされた。

北アイルランドのミシェル・オニール自治政府首相は、今回の反移民デモを痛烈に批判し、市民らに平静を呼び掛けた。

オニール氏はX(旧ツイッター)で、「覆面をした男たちの集団が、家族を自宅から焼き出す行為は卑劣極まりない。吐き気がする」と非難。

「人種差別、脅迫、暴力は、それがどこであろうと間違っている。今夜のこれらの襲撃に対していかなる言い訳も正当化も認められない。誰もわが国の路上でこのような光景を見たくはないはずだ。改めて平静を呼び掛ける」と付け加えた。

反移民デモは、ベルファストから西に約25キロに位置するアントリムでも行われた。

難民認定申請者を受け入れる政府借り上げのホテル前でも反移民デモが行われ、「人種差別ではない、ただの愛国心だ」「もううんざりだ」などと書かれたプラカードを掲げた。

スーダン出身の男は9日午後に殺人未遂、刃物の不法所持、および殺害脅迫の罪で起訴された。10日に出廷する予定だ。

英内務省によると、男は2023年に英国に入国し、同年に難民認定を受け、2028年までの滞在を許可されていた。

刺傷事件の動画には、スーダン出身の男が路上に横たわる被害男性に馬乗りになり、刃物で頭や首を何度も切りつける場面が映っている。極右の有力者らは男が「斬首」を試みていたと主張している。

複数の市民が介入し、うち1人がハーリング(ホッケーに似たアイルランドの球技)のスティックを振り回しながら男にタックルして男を取り押さえた。

警察によると、被害男性は40代で、「両目に重傷、背中と顔に深刻な切り傷を負って病院に搬送された」という。

警察は現場から包丁とみられる刃物を回収したという。

いわゆる「愛国者」に関連する多数のSNSアカウントがこの動画を共有し、「地元への移民の大量流入に抗議しよう」と人々に呼び掛けている。

これに先立ち米実業家イーロン・マスク氏は、反移民活動家のスティーブン・ヤクスリーレノン(別名:トミー・ロビンソン)氏による反移民デモの投稿をリポストし、「変化を起こすには、繰り返し、そして大きな声で抗議するしかない!!」とコメントしていた。

英国では、南部イングランドのサウサンプトンで先週、英国籍のシーク教徒(インドで始まった宗教)の男に若い白人学生が刺殺された事件への警察の対応をきっかけに小競り合いが発生し、すでに緊張が高まっていた。

移民問題は英国で争点となっており、強硬右派政党リフォームUKへの追い風となっている。(c)AFP