【6月6日 AFP】J・D・バンス米副大統領は5日、シーク教徒(インドで始まった宗教)の男による白人学生殺害事件への英国の対応について、自己嫌悪の政治と移民(外国人)による「侵略」によって引き起こされた「文明の崩壊」が原因だと非難した。

英国でシーク教徒の男に刺された被害者の白人学生が、警察に手錠をかけられた上、加害者に人種差別発言をしたというぬれぎぬを着せられて死んでいく映像が公開され、警察の対応に内外で激しい反発が広がっている。

警察のボディーカメラの映像には、致命傷を負って横たわる被害者のヘンリー・ノバクさん(18)が警察官に対して「息ができない」と何度も訴える姿が映っている。

ノバクさんは昨年12月、サッカーチームのメンバーと南部サウサンプトンの夜の街に繰り出した際、シーク教徒のビクラム・ディグワ被告(23)に刺された。

ディグワ被告は現場に到着した警察に対し、ノバクさんから人種差別的な侮辱を受けたとして、自分こそが被害者だとうそをついた。

公判中に上映された映像には、警察がディグワ被告の主張を受け入れ、ノバクさんを救護するどころか、「刺されて息ができない」という懇願を無視して手錠をかける場面が映っている。

警察官の一人はノバクさんに「刺されたって? どこをだ?」「お前は刺されてなんかいないだろ」と言い放つ音声も記録されている。

バンス氏はX(旧ツイッター)に、「ヘンリー・ノバクさんは文明が滅びるのと同じように亡くなった。見捨てられ、彼を信じず配慮さえしない警察によって手錠をかけられ、ヘイトクライム(憎悪犯罪)のぬれぎぬを着せられて亡くなった」と投稿。

「彼の殺害は激しい怒りを覚えざるを得ないほど悲劇的だ」と付け加えた。

欧州の移民政策を長年批判してきたバンス氏は、この事件に対して「義憤」を抱くよう呼びかけた。

バンス氏はさらに、「彼(ノバクさん)はきょうも生きているべきだった。もし過去数世代の欧州のエリートたちが、自己嫌悪の政治や、移民による『大規模な侵略』に対して毅然と立ち向かっていれば、彼は生きていただろう。移民の多くは、西側諸国およびそれを愛する人々を見下している」と主張。

「このようにいわれなく命を落としたのはノバクさんが初めてではない。多くの人々が犠牲になっており、彼が最後になるとも思えない」と付け加えた。

バンス氏は、移民の大量流入による西側文明の崩壊というトランプ政権の主張を最も声高に提唱する一人だ。

この事件は、世界中の右派(保守派)の怒りを買い、英国内では警察への抗議デモが暴動に発展している。

バンス氏の友人で米実業家のイーロン・マスク氏も、この事件への英警察の対応について、Xで何度も言及している。

その中の一つには、「警察が公式方針で、白人を人種差別するよう警察官に求めていること」を皆さんは知っているだろうかという事実に基づかない問いかけもある。

この論争には米国務省も加わり、ノバクさんの家族に哀悼の意を表した上で、「イデオロギー的条件付け(特定の思想を植え付け、無意識のうちにそのイデオロギーに沿った行動を取るように思考を誘導するプロセス)や2層構造の取り締まりは、文明崩壊の明白な兆候だ。西側諸国全体でこれらを拒絶しなければならない」と訴えた。

「2層構造の取り締まり」とは、警察が容疑者を扱う際、民族的少数派(エスニック・マイノリティー)を白人よりも寛大に扱うこと。

英政府は、この事件に対する米国の介入を拒絶した。

キア・スターマー首相の報道官は声明で、「わが国の民主主義への介入を試み、街頭で分断をあおろうとする人々がいる」として、ノバクさんの遺族が、彼の死が「これ以上の分断、憎悪、緊張を生み出すために利用されることを望まない」と述べていた点を強調した。

スターマー氏自身も4日、マスク氏が英国内の「分断をあおろうとしている」と非難した。(c)AFP