【6月12日 東方新報】「最後にATMを使ったのはいつか」。若い知人にそう尋ねると、多くは「何年も前」や「覚えていない」と答える。中国人民銀行がこのほど発表した2026年第1四半期の決済システム運行状況も、この傾向を裏付けている。第1四半期末時点で、中国全国のATM台数は72万5800台となり、2025年第4四半期末より1万9900台減少した。2018年第3四半期末のピーク時と比べると、40万2800台も減っている。

かつて、銀色のATMは都市の街角にある身近な金融サービスの象徴だった。24時間利用できるため、「銀行が閉まっている」ことは大きな問題ではなくなった。モバイル決済が普及する前、ATMは預金や引き出しのための機械であるだけでなく、外出先での安心感を支える存在でもあった。しかし今では、QRコード決済が日常となり、ATMに並んで現金を引き出す光景は少なくなった。多くのATMの前は閑散とし、置かれているだけの存在になりつつある。

ATMの「退場」は、技術の進歩と時代の変化の結果だ。今年第1四半期、中国全国のモバイル決済件数は561億5400万件、金額は167兆1500億元(約3924兆4647億円)に達した。モバイル決済は人びとの支払い習慣を大きく変えた。多くの若者にとって、衣食住や移動はスマートフォン一つで済み、現金は必需品ではなく予備の手段になっている。銀行のデジタル化も加速し、スマホ銀行やネット銀行の機能は日増しに充実している。送金、資産運用、公共料金の支払いなども、自宅にいながら手続きできる。銀行経営の面から見れば、ATMを減らすことは合理的な選択でもある。競争が激しくなり、コスト削減と効率向上が求められる中で、利用効率の低い設備を減らし、資源配置を見直すこと自体は理解できる。

しかし、技術の進歩を喜ぶ一方で、見落としてはならない問題もある。ATMの急速な減少は、一部の人びと、とりわけ現金での取引に慣れている高齢者に、現実的な不便をもたらしている。高齢者にとって、スマートフォンの操作は複雑で、QRコード決済には詐欺に遭う不安もある。現金こそが最も安全で安心できる支払い手段だと感じる人も多い。ATMが減れば、現金を引き出すために遠くまで行かなければならず、場合によっては十数分余計に歩く必要も出てくる。さらに懸念されるのは、設備がなくなることで、高齢者とデジタル社会との距離がいっそう広がることだ。

技術の進歩は本来、暮らしをより良くするためのものであり、一部の人を時代から取り残すためのものではない。金融サービスは人を中心に据えるべきだ。銀行は効率や利益を追求する一方で、自らが担う社会的責任を忘れてはならない。インクルーシブ金融の核心は、すべての人が平等に金融サービスを利用できるようにし、デジタル化の波の中でどの層も取り残さないことにある。そのためには、転換を進める中でも必要な現金サービス拠点を残し、「デジタル+実店舗」の金融サービス体制を築く必要がある。

幸い、ATMは単に姿を消しているわけではなく、大きな転換の途中にある。上海市では、現金対応の自動機の90%以上が高齢者向けに改良され、大きな文字の画面、音声案内、通帳取引への対応などにより、高齢者も落ち着いて利用できるようになっている。安徽省(Anhui)祁門県では、銀行店舗のスマート窓口端末に行政サービス機能が組み込まれ、社会保険の照会や年金支給証明の発行など、利用頻度の高いサービスに対応している。これにより、家の近くで行政手続きまで一括して行えるようになった。銀行の配置戦略も、広く一律に設置する形から、需要に応じた重点配置へと変わっている。空港、駅、高齢者の多い社区、郷鎮など、現金需要の高い地域がATM設置の重点になっている。

技術の更新はこれからも続くが、サービスの原点は変わってはならない。今後、ATMの台数はさらに減るかもしれない。しかし完全に歴史の舞台から退くのではなく、よりスマートで、多機能で、人びとのニーズに近い形で残っていくだろう。金融機関には、効率と公平のよりよいバランスを見つけ、デジタル化の恩恵をすべての人に届けることが求められる。技術が前へ走る時には、歩みの遅い人々を待つことも忘れてはならない。ATMが少しずつ「退場」しても、金融サービスの温度まで下げてはならない。(c)東方新報/AFPBB News