【6月1日 東方新報】2026年アジア太平洋経済協力(APEC)貿易担当相会合が5月23日、江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)で閉幕した。今回の会合では、アジア太平洋自由貿易圏やサービス業の発展などをめぐり、複数の成果と共通認識が得られた。

専門家は、複雑な世界貿易環境に直面する中でも、アジア太平洋の各エコノミーが開放と協力を通じて先行きの安定を図り、新たな成長空間を広げようとしていることを示していると見る。

APEC年の中盤に定例で開かれる重要な制度的会合として、貿易担当相会合はアジア太平洋地域や世界の重要な経済・貿易問題を議論する場であり、首脳会議に向けた成果づくりを担う。また、アジア太平洋、さらには世界の経済・貿易政策の「風向計」でもある。

会合後に発表された成果と共通認識を見ると、アジア太平洋自由貿易圏が再び注目を集めた。各方面は、アジア太平洋自由貿易圏という長期ビジョンへの揺るぎない支持を改めて確認し、その議題を通じて地域経済統合を引き続き進めると表明した。また、能力構築、経験共有、技術協力などへの投資を強化するよう呼びかけた。南開大学(Nankai University)APEC研究センターの劉晨陽(Liu Chenyang)主任は取材に対し、アジア太平洋自由貿易圏の構想は提起されてからすでに長い年月がたっており、短期間で簡単に実現できる目標ではないと指摘した。そのうえで、現在の環境では、この議題が持つ意味がさらに際立っていると述べた。

劉主任は、関税戦争や保護主義といったマイナス要因が地域経済統合や産業チェーン協力に影響を与える中、多くのメンバーは、アジア太平洋自由貿易圏の建設を通じて正常な経済秩序を守り、地域経済統合の流れが後退することを避ける必要があるとの認識を共有していると説明した。

デジタル貿易は、今回の会合でAPEC各エコノミーが特に重視した協力分野だった。各方面は、デジタル貿易協力の新たな可能性を広げることについて新たな共通認識に達した。これには、「APEC貿易デジタル化協力枠組み」で実質的な進展があったことや、「APECインターネット・デジタル経済ロードマップ」を引き続き高い質で実施することへの合意などが含まれる。

人工知能や越境ECなどの新業態が急速に発展する中、デジタル貿易はアジア太平洋の経済・貿易協力における新たな成長分野となっている。中国商務部の王文濤(Wang Wentao)部長は、アジア太平洋は世界経済で最も活力ある地域であり、良好なイノベーション環境、緊密につながったイノベーション供給網、巨大な応用市場を持っていると指摘した。各エコノミーは、イノベーションが自国・地域経済の発展に新たな原動力をもたらすことを広く期待しているという。

会合のもう一つの重要な成果は、今後10年間のサービス業発展に向けた青写真を描いたことだ。各方面は「APEC革新的で競争力があり強靱なサービス業ロードマップ」を承認し、八つの重点分野での協力に焦点を当てることで合意した。サービス業関連政策の継続的な革新と改革を進め、開放的で予測可能なサービス貿易・投資制度環境を共に構築していく。

劉主任は、APECは長年にわたり貿易・投資の自由化と円滑化を推進してきたが、物品貿易分野の協力が成熟しつつある中、今後の地域統合の潜在力はより多くサービス貿易へ移ると分析する。特に、長年の地域協力の積み重ねを経て、各方面はより高い水準の国内規制や制度面での協力を受け入れる意欲を高めており、サービス業のさらなる開放に向けた契機になっているという。

アジア太平洋自由貿易圏の推進であれ、デジタル貿易やサービス業協力の拡大であれ、今回の会合で形成された複数の共通認識はいずれも、地域の経済・貿易協力をさらに強める方向を示している。中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の沈銘輝副院長は、アジア太平洋地域の貿易・投資協力は、本質的に共通認識に基づく集団行動であり、協力はアジア太平洋地域の長期的な発展と繁栄にとって基礎的な意味を持つと述べた。

専門家は、世界の貿易秩序が圧力を受ける中でも、アジア太平洋のエコノミーがAPECの枠組みの下で協力目標を維持し、共通利益を探り続けていること自体が、アジア太平洋協力の強靱さを示しており、世界の経済・貿易協力に安定感をもたらすと指摘している。(c)東方新報/AFPBB News