パタゴニア中国で波紋 「地球使用料」に賛否
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【4月29日 東方新報】米アウトドアブランドのパタゴニア(Patagonia)が、中国市場の天猫(Tmall)旗艦店で4月から「地球使用料」制度を導入すると発表し、大きな議論を呼んだ。
この制度では、注文時に最初の1点で15元(約349円)、追加1点ごとに5元(約116円)の物流・梱包費を前払いする。商品を受け取って返品しなければ全額返金されるが、返品した場合はこの費用が差し引かれ、環境保護プロジェクトに寄付される。パタゴニア側は、配送や返品のたびに二酸化炭素排出が発生するため、注文前や返品前に一度立ち止まって考えてほしいという狙いだと説明している。
実際、同社によると、2023年から2025年までの配送による排出量は190.36トン、返品配送による追加分は40.9トンに上った。特に2025年の「双11(ダブル11、11月11日)」商戦では返品率が69.7%に達し、発送した1万6179個のうち1万1277個が返品されたという。ブランド側は、これは罰ではなく、過剰な返品を減らすための「呼びかけ」だとしている。
だが、中国の消費者の反応は厳しかった。環境保護の考え方には理解を示しつつも、「企業が地球の名目で料金を取るのはおかしい」「実際にはコストを消費者に転嫁しているだけではないか」といった批判が相次いだ。さらに、米国公式サイトでは99ドル(約1万5726円)以上で送料無料が維持され、返品条件も中国より緩いことが分かり、「なぜ中国市場だけ厳しいのか」と不満が広がった。
背景には、中国のEC市場ならではの事情もある。送料保険が一般化しているため、消費者は理由を問わず返品できる買い方に慣れている。加えて、パタゴニアは中国国内の実店舗が少なく、多くの人が試着できないままオンラインで購入している。そのため、返品率が高くなるのはある意味当然であり、試着機会を増やさずに料金徴収で返品を減らそうとするやり方は、消費者に「ブランドの都合」と映りやすい。
一方で、この制度には別の狙いもあるとみられている。返品しなければ費用は返ってくるため、本当に買う意思のある客にとって負担は大きくない。むしろ、試着だけしたい人や、通販を「試着室代わり」に使う人を減らし、本気の顧客を見極めるための仕組みだという見方だ。つまり環境保護だけでなく、返品コストの抑制や顧客の絞り込みという意味合いも強い。
もっとも、パタゴニアが環境保護を前面に出すのは今に始まったことではない。1985年から売上の1%を寄付し、2022年には創業者イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)氏が会社株式を信託と非営利団体に移し、「地球こそ唯一の株主だ」と宣言した。中国でも修理工房や中古衣料の活用を広め、長く使う価値観を打ち出してきた。特に修理サービスは評価が高く、他ブランドのアウトドア衣料の補修にも対応することから、愛好者の間で支持を集めている。
ただ、中国市場での存在感はまだ限られている。天猫旗艦店のフォロワー数は85.5万人で、アークテリクス(Arc'teryx)には大きく及ばない。人気商品の欠品も目立ち、偽物問題も深刻だ。本社は短期的な売上拡大より、長期的責任や製品品質、企業理念を優先すると説明しているが、その姿勢は中国では「分かりにくいブランド」と受け取られがちだ。
今回の騒動は、パタゴニアが中国市場で環境理念をどう伝えるか、そしてそれを消費者にどう納得してもらうかという難しさを改めて浮き彫りにした。(c)東方新報/AFPBB News