哺乳類のクローン、58世代目で限界 「変異」蓄積 研究
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【3月25日 AFP】1匹のマウスから1200匹以上のクローン個体を20年間にわたりつくり続けた研究の結果、哺乳類のクローンには限界があることが分かった。研究論文が24日、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表された。
クローンからクローンをつくる技術は、絶滅危惧種の保護や食用家畜の大量生産など、将来的に幅広い用途が期待されていた。
研究を主導した山梨大学の若山照彦教授は、無限にクローン化できると信じられていたため残念な結果だとAFPに語った。
若山氏らのチームは、世界的に有名なクローン羊「ドリー」が誕生した翌年の1997年に、世界で初めてマウスのクローン化に成功している。
研究では、2005年に最初の雌マウスのクローン個体をつくった。その後、3か月ごとに次世代のクローンをつくり、1年あたり3〜4世代の更新を続けた。
ドナー動物の細胞からDNAを含む核を取り出し、あらかじめ核を除去しておいた未受精卵に移植するプロセスを続け、20年間で1200匹以上のマウスが誕生した。
■「重大な転換点」
最初の数年間は、クローン個体作製の成功率は着実に上昇し、一時は15%を超えた。誕生したマウスはすべて同一であるように見え、クローン個体を無限につくり続けられる可能性も視野に入り始めていた。
しかし、研究論文によると、第25世代辺りで「重大な転換点」が訪れた。
その時点から、世代を追うごとに有害な遺伝子変異が蓄積し、新しく生まれるマウスの生存率が低下し始めた。第57世代では生存率はわずか0.6%にまで落ち込み、第58世代のマウスは生まれてすぐに全個体が死んだ。
ゲノム解析の結果、雌雄の自然交配で生まれたマウスに比べ、一部のクローン個体では突然変異の発生頻度が約3倍高かった。胎盤の肥大やX染色体の一部欠損が確認された。
一方、第57世代のような後半のクローン個体であっても、オスのマウスと交配(有性生殖)させることで、突然変異の少ない健康な子孫が誕生した。
これは「哺乳類の長期的な生存には、有性生殖が不可欠である」ことを示唆するものだ。
今回の研究は、無性生殖の系統では有害な突然変異が必然的に蓄積し、最終的に突然変異の破綻と絶滅を招くと予測する「ミュラーのラチェット(Muller's ratchet)」理論を裏付けるもので、この破綻が哺乳類でも起こることを世界で初めて実証した。(c)AFP/Daniel Lawler